★Memories
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Desire―願う―
【船上での誓いのキス】
7月の上旬、上司から高級ディナークルーズのチケットを2枚譲り受けた。何でも、その日はどうしても外せない用事が出来たからとか。
その夜、彼を誘ってみたところ、最初は面倒そうな顔をしてたけど、「お酒が飲めるよ」と話したら、目の色を変えて飛びついてきた。
翌日、早速メンズショップに赴き、スーツを何着か試着して散々迷った挙げ句、黒のストライプのスーツと靴を購入した。
「服装はこれでバッチリね」
「動き難いけどな。オレはもっとラフな格好が好きだ」
「何言ってんの。高級ディナークルーズデートなんだから、それ相応の格好をしてもらわなきゃね」
「やっぱ行かねえ」
「はい、却下。ちゃんと上司の顔を立てなきゃなの。後で絶対感想訊かれるんだから」
「チッ、これも酒の為だ」
何とか彼を丸め込み、迎えたデート当日の夜。
いつもよりうんとお洒落して、やって来た港。彼とは船の前で待ち合わせをしていた。
見上げた船は、大型で今まで乗船したこともないほど、豪華な造りだ。
船の入り口には黒服の男性が立っていて、カップルが次々と乗船していく。
それから数分後。
「待たせたな」
背後から声がして振り向くと、スーツ姿のバーダックがポケットに手を突っ込んで立っていた。
「バーダック!」
彼の姿を確認した私はすぐに駆け寄る。
「やっぱり様になってるね、スーツ姿」
「着慣れねえから肩が凝りそうだがな。お前こそ、その服似合ってるじゃねえか」
「そ、そう?」
「馬子にも衣装だ」
「それ全然褒めてないじゃないの!」
「ククッ、冗談だ。よく似合ってるぜ、お姫様」
「ありがと」
気恥ずかしく思いながらも、素直にお礼を言った。
「申し訳ございません。そちらのお二方、そろそろ出港時間ですので、速やかにご乗船下さいませ」
「あ、はい!」
黒服の男性に促され、急いで船に乗り込む。
「ようこそ、おいで下さいました」
船内に入ると、美しい装飾が施され、流石高級と銘打つだけあると思わされた。
椅子に座ると、早速バーダックがウェイターにお酒を注文していた。
相変わらず、気が早い人ね。
私は少し呆れながらも彼らしいと思った。
「おい」
「何?」
「左手出せよ」
「えっ……うん」
私が左手を出すと、彼が迷わず薬指に指輪を嵌める。
「これ……」
私の薬指にはシンプルなダイヤの指輪が光っていた。
「先月はプロポーズだけして、贈るの遅くなっちまったけどよ……婚約指輪だ」
「……嬉しい」
「また泣くなよ?」
「ひ、一言多いわよ!」
慌てて反論すると、彼はふっと笑った。
「そんなお前が好きなんだけどな」
突然の「好き」に思わず涙が込み上げて来たけど、何とか堪えた。
左手を広げて、婚約指輪を見つめる。それはバーダックからの、溢れんばかりの愛情が詰まっているように感じた。
程なくして、お酒と料理が運ばれてきて、その豪華さに圧倒されてしまう。食べるのがもったいないくらい、色鮮やかに盛り付けられた料理。
ナイフとフォークを使い、口にした料理は頬が落ちるかと思うくらい、美味だった。
「コイツは上物だ。何杯でもイケるぜ」
彼は機嫌良くワインをがぶ飲みしている。テーブルマナーも何もあったもんじゃない。
「ちょっと、あんまり飲み過ぎないでね?」
他のお客さんの手前、私は身を乗り出して小声で釘を刺す。
「良いじゃねえか、結婚の前祝いにパーッと飲まねえとな」
「さっきまでの良いムードを返してよ」
結局、彼はもう何杯目か分からない程のワインを飲み尽くした。
「ちょっと、デッキに出てみねえか?」
「良いよ、酔い醒ましね」
デッキに出れば、上弦の月が浮かぶ夜の海は少し肌寒く、潮風で私の髪が靡いた。
船外には肌寒いからか他に人がいない。
「ちょい寒いが、夜の海も悪くねえな」
「見て、街の夜景が綺麗」
船の手摺りまで歩いて行き、2人並んで、遠目に見える無数の光が輝く都会の夜景に見惚れる。
「なあ」
「んっ……」
呼ばれて返事をする前にキスされていた。それもバーダックにしては珍しい、触れるだけの優しいキス。
やがて唇を離され、そっと包み込むように抱き締められる。
「お前のお蔭でオレは今ここにいる」
きっとランプの精だった頃を思い出してるんだろう。
「今度はオレがお前を幸せにする番だ。オレの人生の総てをかけてな」
「“私を”じゃなくて、2人で幸せになろうよ」
「……そうだな」
私達は寄り添いながら港に着くまで夜景を眺めていた。
後日。彼のワインがぶ飲み事件はしっかり上司の耳に入ってたけど、特にお咎めはなかった。
途中良い雰囲気が台なしになったものの、彼からの婚約指輪を見る度、幸せな気持ちに浸れる。また一歩、結婚までの道のりが近づいたのだった。
【船上での誓いのキス】
7月の上旬、上司から高級ディナークルーズのチケットを2枚譲り受けた。何でも、その日はどうしても外せない用事が出来たからとか。
その夜、彼を誘ってみたところ、最初は面倒そうな顔をしてたけど、「お酒が飲めるよ」と話したら、目の色を変えて飛びついてきた。
翌日、早速メンズショップに赴き、スーツを何着か試着して散々迷った挙げ句、黒のストライプのスーツと靴を購入した。
「服装はこれでバッチリね」
「動き難いけどな。オレはもっとラフな格好が好きだ」
「何言ってんの。高級ディナークルーズデートなんだから、それ相応の格好をしてもらわなきゃね」
「やっぱ行かねえ」
「はい、却下。ちゃんと上司の顔を立てなきゃなの。後で絶対感想訊かれるんだから」
「チッ、これも酒の為だ」
何とか彼を丸め込み、迎えたデート当日の夜。
いつもよりうんとお洒落して、やって来た港。彼とは船の前で待ち合わせをしていた。
見上げた船は、大型で今まで乗船したこともないほど、豪華な造りだ。
船の入り口には黒服の男性が立っていて、カップルが次々と乗船していく。
それから数分後。
「待たせたな」
背後から声がして振り向くと、スーツ姿のバーダックがポケットに手を突っ込んで立っていた。
「バーダック!」
彼の姿を確認した私はすぐに駆け寄る。
「やっぱり様になってるね、スーツ姿」
「着慣れねえから肩が凝りそうだがな。お前こそ、その服似合ってるじゃねえか」
「そ、そう?」
「馬子にも衣装だ」
「それ全然褒めてないじゃないの!」
「ククッ、冗談だ。よく似合ってるぜ、お姫様」
「ありがと」
気恥ずかしく思いながらも、素直にお礼を言った。
「申し訳ございません。そちらのお二方、そろそろ出港時間ですので、速やかにご乗船下さいませ」
「あ、はい!」
黒服の男性に促され、急いで船に乗り込む。
「ようこそ、おいで下さいました」
船内に入ると、美しい装飾が施され、流石高級と銘打つだけあると思わされた。
椅子に座ると、早速バーダックがウェイターにお酒を注文していた。
相変わらず、気が早い人ね。
私は少し呆れながらも彼らしいと思った。
「おい」
「何?」
「左手出せよ」
「えっ……うん」
私が左手を出すと、彼が迷わず薬指に指輪を嵌める。
「これ……」
私の薬指にはシンプルなダイヤの指輪が光っていた。
「先月はプロポーズだけして、贈るの遅くなっちまったけどよ……婚約指輪だ」
「……嬉しい」
「また泣くなよ?」
「ひ、一言多いわよ!」
慌てて反論すると、彼はふっと笑った。
「そんなお前が好きなんだけどな」
突然の「好き」に思わず涙が込み上げて来たけど、何とか堪えた。
左手を広げて、婚約指輪を見つめる。それはバーダックからの、溢れんばかりの愛情が詰まっているように感じた。
程なくして、お酒と料理が運ばれてきて、その豪華さに圧倒されてしまう。食べるのがもったいないくらい、色鮮やかに盛り付けられた料理。
ナイフとフォークを使い、口にした料理は頬が落ちるかと思うくらい、美味だった。
「コイツは上物だ。何杯でもイケるぜ」
彼は機嫌良くワインをがぶ飲みしている。テーブルマナーも何もあったもんじゃない。
「ちょっと、あんまり飲み過ぎないでね?」
他のお客さんの手前、私は身を乗り出して小声で釘を刺す。
「良いじゃねえか、結婚の前祝いにパーッと飲まねえとな」
「さっきまでの良いムードを返してよ」
結局、彼はもう何杯目か分からない程のワインを飲み尽くした。
「ちょっと、デッキに出てみねえか?」
「良いよ、酔い醒ましね」
デッキに出れば、上弦の月が浮かぶ夜の海は少し肌寒く、潮風で私の髪が靡いた。
船外には肌寒いからか他に人がいない。
「ちょい寒いが、夜の海も悪くねえな」
「見て、街の夜景が綺麗」
船の手摺りまで歩いて行き、2人並んで、遠目に見える無数の光が輝く都会の夜景に見惚れる。
「なあ」
「んっ……」
呼ばれて返事をする前にキスされていた。それもバーダックにしては珍しい、触れるだけの優しいキス。
やがて唇を離され、そっと包み込むように抱き締められる。
「お前のお蔭でオレは今ここにいる」
きっとランプの精だった頃を思い出してるんだろう。
「今度はオレがお前を幸せにする番だ。オレの人生の総てをかけてな」
「“私を”じゃなくて、2人で幸せになろうよ」
「……そうだな」
私達は寄り添いながら港に着くまで夜景を眺めていた。
後日。彼のワインがぶ飲み事件はしっかり上司の耳に入ってたけど、特にお咎めはなかった。
途中良い雰囲気が台なしになったものの、彼からの婚約指輪を見る度、幸せな気持ちに浸れる。また一歩、結婚までの道のりが近づいたのだった。