★Memories
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Desire―願う―
【未来へ向けて】
梅雨の中休みに入り、梅雨明けも間近というある日曜の昼。
私達は昼食を済ませた後、私が海沿いを散歩したいとリクエストしたため、彼がひとっ飛びで海まで連れて来てくれた。
この時期の海は梅雨の季節を感じさせないくらい、穏やかだった。
「何か漠然としてるかもだけど海は良いね。私、好きだな」
「そうか」
ずっと梅雨の日が続いていたため、デートも満足に出来なかった。だから久々に2人でのお出かけ日和に、自然とテンションが上がる。
「ねえ、歩こ!」
私が手を差し出すと、バーダックは当然のように指と指を絡めて来る。
絡めた指からバーダックの温もりが伝わってくるから、私は彼と手を繋ぐのが大好きだ。
「何ニヤニヤしてんだよ」
「せめて、ニコニコって言ってくれないかな」
「ククッ、顔が緩んでマヌケ面のくせに何吐かしてやがる」
「うっ……」
「手を繋いだだけで、有頂天になるとは単純なヤツだな」
「そんなにマヌケな顔してる?」
心配になって、隣を歩く彼を覗き込むと、彼はふっと笑う。
「冗談だ。お前はにやけ面でも可愛いから心配すんな」
「……それはそれで複雑かも」
「どっちにしろ、微妙な反応じゃねえか」
「アハハ、そうかも」
海沿いの道をゆっくり歩いて行くと、前方に丘があり、その上に教会がそびえ立っていた。
そこへ、ちょうど結婚式を挙げたばかりらしい花嫁と花婿が姿を見せ、たくさんの参列者に囲まれて、フラワーシャワーの祝福を受けていた。
「わあ、素敵!」
6月は結婚ラッシュだもんなぁ。
「皆に祝福されて、これから幸せになるんだね、あの人達」
「……」
その様子を遠目から眺めていたら、バーダックが無言で歩き始めた。
「ちょっと待ってよ!」
教会から離れた所で、漸くバーダックが足を止める。
「急にどうしたの?」
「何でもねえよ」
難しい顔をして、何でもないわけがないのに……。
「そろそろ帰るぞ」
「えっ、もう?」
有無を言わさず、バーダックは私を抱き上げると、空に浮き上がり、自宅マンションに向かって飛んでいく。
結婚式を見た途端、彼の態度が急に変わった。
でも、何で?
それはいくら考えても分からなかった。
その日の夜、お風呂から出て部屋に戻ると、いつものように彼がソファーに座って、煙草を吹かしていた。
あれから一言も喋らず、近寄り難いオーラが漂っている。
けれど、意外にもバーダックは私に気づくと、「こっちに来い」と手招きした。
私は躊躇いながらも、彼の隣に腰を下ろす。
重苦しい沈黙に耐えられず、適当に話を振ることにした。
「そ、それにしてもキレイだったね、花嫁さん」
「……ああ」
「結婚式憧れちゃうなぁ!」
一生に一度の晴れ姿、私にもそんな時が来るのかな。
だけど、今の彼を見ていたら悲しい気分になるだけ。
「なあ」
「ん?」
「オレと結婚するか」
「うん」
「よし、決まりだな」
えっ、バーダック、今何て言った?
『オレと結婚するか』
「って、ちょっと待って!」
突然の出来事に混乱する。
「何だ、お前もOKしたじゃねえか。今更嫌だとは言わせねえぜ?」
「そうじゃなくて、今のってプロポーズ……だよね?」
「そう聞こえなかったか?」
私は信じられない気持ちでいっぱいだ。
だって今までそんな素振りも見せなかったし。何より、さっきの結婚式見て不機嫌になったし。
「ホントに私で良いの?」
「オレが傍に置きたいのはお前だけだ。オレはお前以外何もいらねえ。だから、一生オレの隣で笑ってろ」
相変わらずのオレ様っぷりだけど、嬉しさがふつふつと胸に込み上げてくる。
「うん……」
その時、涙が溢れ出して零れ落ち、それはとめどなく頬を伝っていく。
「泣くなよ」
「だ、だって嬉しくて」
彼が指先で涙を拭ってくれるけど、それでも私の涙は止まらない。
私が泣き止むまで、彼は黙って抱き締めていてくれた。
気分が落ち着いて、彼から離れた私は、ふと疑問に思っていたことを口に出す。
「そういえば……」
「何だ?」
「何で、結婚式を見て不機嫌になったの?」
「ああ、それはな……今日、お前にプロポーズしようと思ってたんだよ。けど、出端挫かれたっつーか、気がそがれた。ただ、それだけだ」
「でも、結局はプロポーズしてくれたじゃないの」
「そりゃ、どうしてもお前の全てが欲しかったからな。恋人より夫婦の方が絆が強いだろ」
彼がそっぽを向きながら、ぽつりと呟いた横顔は赤みを帯びている。
「ふふ、そっか」
「何笑ってやがる」
「別に~?」
彼なりのぶっきらぼうだけど愛のこもったプロポーズに、梅雨の季節が嘘みたいに、私の心は晴れ晴れとしていた。
【未来へ向けて】
梅雨の中休みに入り、梅雨明けも間近というある日曜の昼。
私達は昼食を済ませた後、私が海沿いを散歩したいとリクエストしたため、彼がひとっ飛びで海まで連れて来てくれた。
この時期の海は梅雨の季節を感じさせないくらい、穏やかだった。
「何か漠然としてるかもだけど海は良いね。私、好きだな」
「そうか」
ずっと梅雨の日が続いていたため、デートも満足に出来なかった。だから久々に2人でのお出かけ日和に、自然とテンションが上がる。
「ねえ、歩こ!」
私が手を差し出すと、バーダックは当然のように指と指を絡めて来る。
絡めた指からバーダックの温もりが伝わってくるから、私は彼と手を繋ぐのが大好きだ。
「何ニヤニヤしてんだよ」
「せめて、ニコニコって言ってくれないかな」
「ククッ、顔が緩んでマヌケ面のくせに何吐かしてやがる」
「うっ……」
「手を繋いだだけで、有頂天になるとは単純なヤツだな」
「そんなにマヌケな顔してる?」
心配になって、隣を歩く彼を覗き込むと、彼はふっと笑う。
「冗談だ。お前はにやけ面でも可愛いから心配すんな」
「……それはそれで複雑かも」
「どっちにしろ、微妙な反応じゃねえか」
「アハハ、そうかも」
海沿いの道をゆっくり歩いて行くと、前方に丘があり、その上に教会がそびえ立っていた。
そこへ、ちょうど結婚式を挙げたばかりらしい花嫁と花婿が姿を見せ、たくさんの参列者に囲まれて、フラワーシャワーの祝福を受けていた。
「わあ、素敵!」
6月は結婚ラッシュだもんなぁ。
「皆に祝福されて、これから幸せになるんだね、あの人達」
「……」
その様子を遠目から眺めていたら、バーダックが無言で歩き始めた。
「ちょっと待ってよ!」
教会から離れた所で、漸くバーダックが足を止める。
「急にどうしたの?」
「何でもねえよ」
難しい顔をして、何でもないわけがないのに……。
「そろそろ帰るぞ」
「えっ、もう?」
有無を言わさず、バーダックは私を抱き上げると、空に浮き上がり、自宅マンションに向かって飛んでいく。
結婚式を見た途端、彼の態度が急に変わった。
でも、何で?
それはいくら考えても分からなかった。
その日の夜、お風呂から出て部屋に戻ると、いつものように彼がソファーに座って、煙草を吹かしていた。
あれから一言も喋らず、近寄り難いオーラが漂っている。
けれど、意外にもバーダックは私に気づくと、「こっちに来い」と手招きした。
私は躊躇いながらも、彼の隣に腰を下ろす。
重苦しい沈黙に耐えられず、適当に話を振ることにした。
「そ、それにしてもキレイだったね、花嫁さん」
「……ああ」
「結婚式憧れちゃうなぁ!」
一生に一度の晴れ姿、私にもそんな時が来るのかな。
だけど、今の彼を見ていたら悲しい気分になるだけ。
「なあ」
「ん?」
「オレと結婚するか」
「うん」
「よし、決まりだな」
えっ、バーダック、今何て言った?
『オレと結婚するか』
「って、ちょっと待って!」
突然の出来事に混乱する。
「何だ、お前もOKしたじゃねえか。今更嫌だとは言わせねえぜ?」
「そうじゃなくて、今のってプロポーズ……だよね?」
「そう聞こえなかったか?」
私は信じられない気持ちでいっぱいだ。
だって今までそんな素振りも見せなかったし。何より、さっきの結婚式見て不機嫌になったし。
「ホントに私で良いの?」
「オレが傍に置きたいのはお前だけだ。オレはお前以外何もいらねえ。だから、一生オレの隣で笑ってろ」
相変わらずのオレ様っぷりだけど、嬉しさがふつふつと胸に込み上げてくる。
「うん……」
その時、涙が溢れ出して零れ落ち、それはとめどなく頬を伝っていく。
「泣くなよ」
「だ、だって嬉しくて」
彼が指先で涙を拭ってくれるけど、それでも私の涙は止まらない。
私が泣き止むまで、彼は黙って抱き締めていてくれた。
気分が落ち着いて、彼から離れた私は、ふと疑問に思っていたことを口に出す。
「そういえば……」
「何だ?」
「何で、結婚式を見て不機嫌になったの?」
「ああ、それはな……今日、お前にプロポーズしようと思ってたんだよ。けど、出端挫かれたっつーか、気がそがれた。ただ、それだけだ」
「でも、結局はプロポーズしてくれたじゃないの」
「そりゃ、どうしてもお前の全てが欲しかったからな。恋人より夫婦の方が絆が強いだろ」
彼がそっぽを向きながら、ぽつりと呟いた横顔は赤みを帯びている。
「ふふ、そっか」
「何笑ってやがる」
「別に~?」
彼なりのぶっきらぼうだけど愛のこもったプロポーズに、梅雨の季節が嘘みたいに、私の心は晴れ晴れとしていた。