★Memories
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Desire―願う―
【彼なりの優しさ】
一段と寒さが増した1月のある朝。目が覚めた私は頭痛と喉の痛みを感じながら、ベッドから起き上がる。
風邪でもひいたかな。
そう思いながら洗面所に向かった私は軽くうがいをして顔を洗い、タオルで拭いていると「ゴホッ、ゴホッ」と咳が出た。
やばい、やっぱり風邪かな。
最近残業で帰りが遅くて、夜遅いからってちゃんとご飯を食べてなかったからなぁ。
部屋に戻って服に着替えていると「ゴホッ!」とまた咳が出る。
「何だ、風邪か?」
私の異変に気づいたらしい彼が、ベッドから身体を起こして尋ねる。
「少し喉がい辛っぽいだけよ」
「その割に顔が赤いな」
「平気だって。それより朝ご飯作らなくちゃ」
症状を我慢して、朝食を作り始める。
「今日は大事を取って仕事休めよ」
「そんなの無理だよ」
今日は午後一で会議がある。少しの風邪ぐらいで欠勤出来るはずがない。
「はい、出来たよ」
簡単な朝食を作り終えて、あんまり食欲がないけど少しだけ口にした。
その後、支度を終えた私は玄関に向かう。
「どうしても行くなら帰りは迎えに行ってやる」
「良いよ。バーダックだって仕事あるじゃない」
遡ること半年前「オレも何か仕事しねえとな」と言って、職安で見つけて来たのが身辺警護会社、所謂ボディーガード。
彼は実は腕に自信があるらしく、ある理由でランプの精になるまでは、戦闘員をしていた経歴があるらしい。
そんな彼だからこそ、特殊な訓練を受けて、その厳しい競争を最後まで勝ち抜いた優秀な者のみがなれる、ボディーガードに任命されたのだ。
民間ではあるものの、見事職を手に入れたことに関しては嬉しいけど、常に危険が伴う仕事だから彼女としては彼の身を思うと、毎日心配で堪らない。
「お前が具合悪いってのに放っておけるか。それに仕事は交代制で17時までだから、フルスピードで飛ばせば、充分迎えに行ってやれる」
「でも……」
「それと、くれぐれも残業するなよ?」
「わ、分かったわよ」
彼に念を押されて、玄関を後にした。
ふらふらになりながらも満員電車に乗って出社した私は、喉の痛みと頭痛を堪えながら一日の業務をこなし、何とか無事に就業時間を終えた。
彼と約束した通りすぐ退社すると、赤いダウンジャケットを着た見覚えのある顔が、外で待ち構えていた。
「オレとの約束守ったんだな」
「バーダック……!」
彼に歩み寄ろうとした瞬間、急に目眩に襲われる。意識が途切れる瞬間、名前を呼ばれた気がしたけど、私の耳には届かなかった。
次に意識が戻った時、私はベッドに寝かされていた。
上体を起こすと、濡れタオルが額から落ちる。
身体は鉛のように重い。
その時。
「気づいたか」
バーダックが何やら茶碗とスプーンを片手に、部屋に入って来た。
「お前、ぶっ倒れたんだよ。覚えてるか?」
「……覚えてない」
「ったく、これだから仕事に行かせたくなかったんだよ」
「……ごめんなさい」
「気分はどうだ?」
「怠くて、頭痛い」
「熱測ってみろ」
彼はサイドテーブルに茶碗を置いて、体温計を渡してくる。
数分後、ピピッと電子音が鳴り、脇の下に挟んでいた体温計を取り出す。
「何度だ?」
「38度5分」
「結構あるな。ハァ、お前は頑張りすぎなんだよ。それでなくても、冬は冷えるんだから体調管理はしっかりしとけ」
「重ね重ねごめんなさい」
彼のお小言に、私は小さくなって謝るしかない。
「粥作ったんだが、食えそうか?」
「え、バーダックが?」
「ああ、味の保証はしねえけどな」
「嬉しい。あんまり食欲ないけど、お粥だったら食べられる」
「そうか。折角だから、食べさせてやるよ」
彼は茶碗を手に取るとスプーンでお粥を掬い、フーフーと息を吹き掛けて私の口元に運ぶ。
期待を込めてパクッと食べると、卵と葱の味がして塩加減がちょうど良い。
「おいちい」
「ぷっ、ガキみてえだな」
「ふふ、もっとちょうだい」
「まるで餌付けしてるみてえだな」
何度も食べさせてくれて、彼がよそってくれた卵粥は美味しくて、ペろりと平らげた。
「ちゃんと薬も飲めよ」
事前に用意していたらしい風邪薬とコップを渡してくれ、私はそれを飲み干す。
「ありがと。お陰で助かったよ」
「んなこと気にすんな。お前らしくねえ。もっとオレに甘えて良いんだぜ」
「でも……」
「分かったな?」
「う、うん」
「よし、良い子だ」
彼は私を優しく抱き締めて、甘い甘いキスをくれた。
数日後。彼の看病のお蔭で、私の体調はすっかり回復した。
その間欠勤していたため、仕事は山積みになってしまい、それに追われる羽目になってしまった。
どうにか仕事を終えた後、彼と待ち合わせをして、看病のお礼を兼ねたデートをするのだった。
【彼なりの優しさ】
一段と寒さが増した1月のある朝。目が覚めた私は頭痛と喉の痛みを感じながら、ベッドから起き上がる。
風邪でもひいたかな。
そう思いながら洗面所に向かった私は軽くうがいをして顔を洗い、タオルで拭いていると「ゴホッ、ゴホッ」と咳が出た。
やばい、やっぱり風邪かな。
最近残業で帰りが遅くて、夜遅いからってちゃんとご飯を食べてなかったからなぁ。
部屋に戻って服に着替えていると「ゴホッ!」とまた咳が出る。
「何だ、風邪か?」
私の異変に気づいたらしい彼が、ベッドから身体を起こして尋ねる。
「少し喉がい辛っぽいだけよ」
「その割に顔が赤いな」
「平気だって。それより朝ご飯作らなくちゃ」
症状を我慢して、朝食を作り始める。
「今日は大事を取って仕事休めよ」
「そんなの無理だよ」
今日は午後一で会議がある。少しの風邪ぐらいで欠勤出来るはずがない。
「はい、出来たよ」
簡単な朝食を作り終えて、あんまり食欲がないけど少しだけ口にした。
その後、支度を終えた私は玄関に向かう。
「どうしても行くなら帰りは迎えに行ってやる」
「良いよ。バーダックだって仕事あるじゃない」
遡ること半年前「オレも何か仕事しねえとな」と言って、職安で見つけて来たのが身辺警護会社、所謂ボディーガード。
彼は実は腕に自信があるらしく、ある理由でランプの精になるまでは、戦闘員をしていた経歴があるらしい。
そんな彼だからこそ、特殊な訓練を受けて、その厳しい競争を最後まで勝ち抜いた優秀な者のみがなれる、ボディーガードに任命されたのだ。
民間ではあるものの、見事職を手に入れたことに関しては嬉しいけど、常に危険が伴う仕事だから彼女としては彼の身を思うと、毎日心配で堪らない。
「お前が具合悪いってのに放っておけるか。それに仕事は交代制で17時までだから、フルスピードで飛ばせば、充分迎えに行ってやれる」
「でも……」
「それと、くれぐれも残業するなよ?」
「わ、分かったわよ」
彼に念を押されて、玄関を後にした。
ふらふらになりながらも満員電車に乗って出社した私は、喉の痛みと頭痛を堪えながら一日の業務をこなし、何とか無事に就業時間を終えた。
彼と約束した通りすぐ退社すると、赤いダウンジャケットを着た見覚えのある顔が、外で待ち構えていた。
「オレとの約束守ったんだな」
「バーダック……!」
彼に歩み寄ろうとした瞬間、急に目眩に襲われる。意識が途切れる瞬間、名前を呼ばれた気がしたけど、私の耳には届かなかった。
次に意識が戻った時、私はベッドに寝かされていた。
上体を起こすと、濡れタオルが額から落ちる。
身体は鉛のように重い。
その時。
「気づいたか」
バーダックが何やら茶碗とスプーンを片手に、部屋に入って来た。
「お前、ぶっ倒れたんだよ。覚えてるか?」
「……覚えてない」
「ったく、これだから仕事に行かせたくなかったんだよ」
「……ごめんなさい」
「気分はどうだ?」
「怠くて、頭痛い」
「熱測ってみろ」
彼はサイドテーブルに茶碗を置いて、体温計を渡してくる。
数分後、ピピッと電子音が鳴り、脇の下に挟んでいた体温計を取り出す。
「何度だ?」
「38度5分」
「結構あるな。ハァ、お前は頑張りすぎなんだよ。それでなくても、冬は冷えるんだから体調管理はしっかりしとけ」
「重ね重ねごめんなさい」
彼のお小言に、私は小さくなって謝るしかない。
「粥作ったんだが、食えそうか?」
「え、バーダックが?」
「ああ、味の保証はしねえけどな」
「嬉しい。あんまり食欲ないけど、お粥だったら食べられる」
「そうか。折角だから、食べさせてやるよ」
彼は茶碗を手に取るとスプーンでお粥を掬い、フーフーと息を吹き掛けて私の口元に運ぶ。
期待を込めてパクッと食べると、卵と葱の味がして塩加減がちょうど良い。
「おいちい」
「ぷっ、ガキみてえだな」
「ふふ、もっとちょうだい」
「まるで餌付けしてるみてえだな」
何度も食べさせてくれて、彼がよそってくれた卵粥は美味しくて、ペろりと平らげた。
「ちゃんと薬も飲めよ」
事前に用意していたらしい風邪薬とコップを渡してくれ、私はそれを飲み干す。
「ありがと。お陰で助かったよ」
「んなこと気にすんな。お前らしくねえ。もっとオレに甘えて良いんだぜ」
「でも……」
「分かったな?」
「う、うん」
「よし、良い子だ」
彼は私を優しく抱き締めて、甘い甘いキスをくれた。
数日後。彼の看病のお蔭で、私の体調はすっかり回復した。
その間欠勤していたため、仕事は山積みになってしまい、それに追われる羽目になってしまった。
どうにか仕事を終えた後、彼と待ち合わせをして、看病のお礼を兼ねたデートをするのだった。