【第三章】秘めたる想いと、芽生える想いー。
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合同稽古は、まず隊士同士の模擬戦から始まった。
十番隊と六番隊の隊士が二人一組になり、互いの得意な間合いや戦闘の癖を確認する。
勝敗よりも、相手の動きに対応することを重視した訓練だ。
冬獅郎と白哉は、訓練場の端から全体を見守っていた。
「十番隊の隊士は、動きを封じる戦術に偏りやすい傾向がある」
白哉が静かに言った。
「分かってる。だからこそ、他隊との稽古が必要なんだ」
「六番隊も、剣術に頼りすぎる傾向がある。互いに補うべき点はあるだろう」
冬獅郎は短く頷いた。
その時、訓練場の中央で凛香が相手と向き合った。
相手は六番隊の席官。
剣術を主体とした攻めを得意としている。
「始めッ!」
開始の合図と共に、相手が一気に間合いを詰めた。
凛香は正面から受け止めず、半歩だけ横へ流れる。
斬撃の軌道を見切り、相手の腕が伸びきる瞬間に刀を合わせた。
カキィィィンッ....
金属の擦れる音が響く。
次の一撃をかわしながら、凛香は相手の足元へ視線を落とした。
踏み込みが浅い。
そう判断した瞬間、凛香の刀が相手の刀を弾き、喉元へ寸止めされる。
「そこまでッ!」
恋次の声が響いた。
凛香は刀を引き、一歩下がる。
「ありがとうございました」
相手の六番隊隊士が息を整えながら頭を下げた。
『こちらこそ。最後の踏み込み、少しだけ重心が前に出すぎていました』
「……なるほど。そこを狙われたんですね」
『はい。次はもう少し変化をつけると、対応しづらくなると思います』
凛香は穏やかに笑った。
「月影、なかなかやるじゃねぇか。相変わらず相手の癖を見抜くのが早いな」
『ありがとう。恋次の判定も分かりやすかったよ』
「おいおい、判定だけかよ!」
『褒めてるんだって〜』
恋次は笑いながら、斬魄刀の柄に手をかけた。
「次は俺が相手をしてみるか?」
『恋次が?』
凛香は一瞬だけ驚いた。
恋次は肩を回す。
「隊長格みたいな稽古じゃなくて、席官の動きの確認だ。遠慮はいらねぇよ」
『……それ、私が遠慮したら怒るやつ?』
「当たり前だろ」
『はぁ、分かった。じゃあ、遠慮しない』
凛香は冬獅郎の方を見た。
『隊長』
「……好きにやれ。無理はするな」
『はい!』
凛香は恋次と向き合い、開始の合図と共にお互い距離を積める。
恋次の斬撃は、先ほどの隊士よりも速く、重い。
凛香は正面から受けることを避け、間合いを保ちながら対応する。
だが、恋次の動きは一撃ごとに変化し、凛香の刀が弾かれる。
次の瞬間、恋次の刀が彼女の肩口へ迫った。
凛香は身体を捻り、寸前でかわす。
「おっ、今の避けるか!」
「……っはは、危なかった!」
凛香の口元に笑みが浮かぶ。
戦闘の緊張が、彼女の表情を引き締めていた。
冬獅郎はその動きを見つめる。
復帰後の凛香は、以前よりも慎重になった部分がある。
だが、戦いの中で見せる判断力は決して衰えていない。
むしろ、戦場を経験した者としての落ち着きが増している様にも思える。
恋次の斬撃を受け流し、凛香が反撃に転じる。
刀と刀が交差した。
「そこまで」
白夜の声で2人はピタリ止まる。
恋次は刀を下ろし、凛香へ向けて笑った。
「復帰して間もないとは思えねぇな」
『それはどうも!恋次の方こそ流石だね。最後の一撃、危うくもらうところだった』
「お前が避けると思ったから、少し踏み込んだんだよ」
『それ、褒めてる?』
「褒めてんだよ」
凛香は刀を納めた。
その時、恋次がふと冬獅郎へ視線を向けた。
「日番谷隊長。月影三席、かなり動けますね」
「……ああ」
冬獅郎は短く答えた。
「元々、あいつはそういう奴だ」
その言葉に、凛香が振り返る。
『隊長?』
「何でもねぇ、次の組に移れ」
『はーいっ』
凛香は何事もなかったように返事をし、次の訓練へ向かった。
恋次は冬獅郎の横顔を見た。
―元々、あいつはそういう奴だ。
ただの部下を評価する言葉としても、不自然ではない。
だが、冬獅郎の目は、凛香が離れていく間もほんのわずかに彼女を追っていた。
まだ確信はない。
それでも、何となく分かる。
冬獅郎が凛香を見る時の視線は、他の隊士を見るそれとは少し違う。
そして、凛香本人は恐らく何も気付いていないだろうと察し、少しだけ冬獅郎に同情し始める恋次だった。