【第三章】秘めたる想いと、芽生える想いー。
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合同稽古当日。
六番隊の訓練場には、十番隊の隊士たちが集まっていた。
整然とした隊舎、無駄のない動線。
訓練場に立つ隊士たちにも、六番隊らしい規律が感じられる。
その中央に、朽木白哉が立っていた。
隊長羽織を纏い、静かに十番隊の面々を見渡す。
「本日の稽古は、各隊の戦力を誇示する場ではない」
落ち着いた声が、訓練場に響いた。
「戦場において、己の隊だけで事を成せるとは限らぬ。互いの動きを知り、必要な時に補い合う。それを確認するためのものだ」
「「「「はい!!」」」」
その場に居る隊士たちが揃って返事をする。
白哉は小さく頷いた。
その隣には、阿散井恋次が立っている。
腕を組んで訓練場を見渡していた恋次は、冬獅郎の姿を認めると、少しばかり目を細めた。
「日番谷隊長!お久しぶりです」
「阿散井か。相変わらず元気そうだな」
「まあ、何とか。隊長の方は……」
恋次の視線が、冬獅郎の身体を上から下へと一度辿った。
何度か隊長・副隊長が集まる場で顔を合わせていた為知ってはいたが、以前よりもまた身長が伸びていた。
その変化は、元の少年の姿を知っている者から見ても驚くほどだった。
「……また伸びたんスね」
「何だ。文句でもあるのか」
「いや、そういうわけじゃねぇですけど!前に会った時より、随分と印象が変わったもんで」
「身体が変わっただけだ。仕事に支障はねぇ」
相変わらずだなと思いながら、恋次は少しだけ笑った。
「ま、動きが変わってねぇかどうかは、稽古で見せてもらいますよ」
「言ってろ」
二人のやり取りを、白哉が静かに見ていた。
「日番谷隊長。十番隊の隊士たちの調整は済んでいるか」
「問題ねぇ、こちらも準備は整っている」
「ならば始めよう」
白哉の言葉を合図に、隊士たちが訓練場へと散っていく。
『れーんじっ!』
声をかけられ、恋次が振り向く。
そこには久方ぶりの友人の姿があった。
「おう、月影!久しぶりだな」
『久しぶり!六番隊との合同稽古、楽しみにしてたよ〜』
「そりゃよかった。復帰したとは聞いてたが、身体の方はもう大丈夫なのか?」
『うん。おかげさまで!心配してくれてありがとう』
「そうか。なら、今日は遠慮なくいかせてもらうぜ」
『ふふ。私だって、手加減するつもりはないよ?』
「ハッ、言うじゃねぇか」
二人は顔を見合わせて笑った。
隊が違っても、席官としての立場が違っても、そこに気負いはない。
長く付き合ってきた友人同士の、自然なやり取りだった。
その様子を、冬獅郎は少し離れた場所から見ていた。
恋次と話す凛香。
六番隊の隊士たちに混じり、自然に稽古の準備をする凛香。
彼女はどこにいても、変わらない。
冬獅郎は視線を逸らし、訓練場の中央へ向かった。
その横顔を、恋次がちらりと見送る。
凛香に向けられた視線。
ほんの一瞬、彼女の姿を目で追っていたこと。
恋次はそれを、見逃してはいなかった。
――ああ、やっぱりな
確信とまではいかない。
だが、以前から感じていた違和感が、少しずつ形になり始めていた。