【第三章】秘めたる想いと、芽生える想いー。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
霊王護神大戦から早半年。
瀞霊廷に、少しずつ、少しずつ戦後の日常が戻り始めていた。
崩れた建物の修復はまだまだ続いている。
傷を負った隊士たちの復帰にもばらつきがあり、以前と同じようにすべてが動いているわけではない。
先の大戦で失われたものは、あまりにも多かった。
これまでの戦いの中でも、最も多くの犠牲を伴った戦い。
長年守り続けてきた街並みも、隊舎も、日常も。
そして、共に戦い、隣に立っていた仲間たちも。
無事にユーハバッハを倒した。
その事実は、確かに瀞霊廷を救った。
だが、それだけで平和が訪れるわけではない。
戦いが終わったからといって、次の脅威がなくなる保証などどこにもなかった。
これ以上、失わないために。
これ以上、誰かを失わせないために。
護廷十三隊は、改めて自分たちの在り方を見直す必要があった。
各隊の連携、戦力の把握、隊士一人ひとりの能力と、互いに補い合うための動き。
その一環として、他隊との合同稽古が段階的に再開されることになった。
十番隊隊舎の執務室。
冬獅郎は机に広げた書類へ目を落とし、眉間にわずかな皺を寄せていた。
「……六番隊との合同稽古、か」
『隊同士の連携確認も兼ねて、明後日から実施するんですよね?』
向かいに立つ凛香が、手元の資料を一枚めくる。
「あぁ、京楽総隊長からのお達だ」
『参加するのは各隊の席官を中心に、希望者も一部。模擬戦と実戦形式の連携訓練が予定されてますね』
「...だが、随分と早く再開するな」
『必要なことだと思います。あの大戦で、私たちは多くのものを失いましたから』
凛香は資料から目を上げた。
『ユーハバッハを倒したからといって、これから先も安全だとは限りません。だからこそ、今のうちに各隊の連携や戦力を改めて確認しておくことは、とても有意義なことだと思います』
真面目な彼女らしい言葉を聞き、冬獅郎静かに頷いた。
「……ああ。これ以上、失わねぇためにもな」
短い言葉だった。
だが、その声には隊長としての重みがあった。
「いつまでも個別訓練だけというわけにもいかねぇ。互いの動きを知り、必要な時に補えるようにする」
『はい!』
六番隊隊長 朽木白哉
六番隊副隊長 阿散井恋次
どちらも、戦後の護廷十三隊を支える重要な戦力だ。
「合同稽古の前に、こちらの参加者をまとめておけ。人選は松本と月影に任せる。無理に人数を揃える必要はねぇが、今の状態で動ける奴を選べ」
『承知しました』
凛香は一礼し、書類を整える。
そのまま踵を返そうとしたところで、冬獅郎の声が止めた。
「月影」
『はい?』
「お前も参加しろ」
凛香は目を瞬かせた。
『私も、ですか?』
「三席だろうが。隊の連携を見るだけじゃなく、お前自身の動きも確認する」
『!……確かに、復帰してから本格的な合同稽古は初めてですね』
「そういうことだ」
『分かりました。よろしくお願いします、隊長』
凛香はいつものように微笑み、執務室を出ていった。
閉じた扉を見つめながら、冬獅郎は机の上の資料を指先で軽く叩いた。
合同稽古
失われたものを取り戻すことは、簡単ではない。
だからこそ、これから先に失うものを少しでも減らさなければならない。
それは、隊長として当然の責務だった。
――それだけだ。
脳裏に浮かぶのは、あの大戦で倒れた彼女の姿。
そう自分に言い聞かせながら、浮かんだ姿を掻き消す冬獅郎だった。