【第二章】戻る日常、変わる日常ー。
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朝、十番隊隊長室。
窓から差し込む光が、机の上に置かれた一冊の記録帳を照らしていた。
冬獅郎は、いつものようにその帳面を開く。
戦後から続く、身体の変化を記録するためのものだ。
身長だけでなく、袖や裾の長さ、手足の感覚、以前の死覇装が合わなくなった時期など、必要なことだけを簡潔に書き留めてある。
最近は、記録する間隔が短くなっていた。
伸びる速度が、以前よりも明らかに速い。
記録帳を開き、今日の日付と今朝自室で軽く測定した際のおおよその身長を書き加える。
「……百六十」
一度、目を細めた。
百五十センチを超えた時には、まだ凛香との身長差は残っていた。
そこからも淡々と伸び続けていたが、今朝の数値はついに彼女の身長と同じだった。
別に、身長が同じになったからといって何かが変わるわけではない。
身体の変化は自分の意思で起こせるものでもなく、おおかた予想はついているものの今後どこまで伸びるのかも分からない。
それでも、何となく。
今日、彼女と並んだ時のことを想像してしまった。
「隊長ー?」
執務室の入口から声がかかる。
「何してるんですか? 朝から随分真剣な顔して」
「……記録だ」
冬獅郎は答えず、記録帳を閉じた。
「もしかして、また伸びたんですか?」
「百六十だと」
「えっ」
乱菊の目が丸くなる。
「やだ!ついに凛香と同じじゃないですか!」
「声がでけぇ!!」
「だって、すごいじゃないですか。前はあんなに差があったのに」
「身体の変化を記録してるだけだ。騒ぐことじゃねぇ」
乱菊は、冬獅郎の顔をじっと見て口元を緩める。
「今日、凛香と並ぶのが楽しみだったりするんです?」
「……何でそうなる」
「別にぃ?」
「松本」
「さぁ、仕事仕事〜」
乱菊はわざとらしく視線を逸らし、書類を広げた。
冬獅郎は眉間に皺を寄せる。
図星だったわけではない。
ただ、今日の変化を凛香がどう受け止めるのか。それが少し気になっていた。
彼女なら、きっと驚くだろう。
少なくとも、今までとは違う目線で自分を見るはずだ。
……そう思っていた。