【第二章】戻る日常、変わる日常ー。
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昼過ぎ。
復興現場の作業がひと段落し、各隊士たちが次の工程へ移る準備をしていた。
凛香は手元の報告書を確認しながら、冬獅郎のもとへ向かう。
『隊長、こちらの資材の搬入状況ですが――』
「……ああ。見せろ」
冬獅郎が書類を受け取る。
凛香は、彼の隣に立ったまま説明を続けた。
『北側の通路は、予定より早く確保できました。これなら午後の作業も問題ないと思います』
「そうか。なら、東側の修繕に人員を回せるな」
『はい。あと、こちらの確認も――』
言葉を続けようとした凛香は、ふと冬獅郎の顔を見て言葉が止まる。
「...?何だ」
『あ、いえ…』
いつも通り、隣に立っているだけ。
それなのに、以前と比べて冬獅郎の顔が近く感じられた。
もちろん、凛香の方がまだ高い。
だが、以前のように大きく見下ろす必要はなくなっていた。
冬獅郎の顔立ちも少しずつ変わってきている事にふと気づく。
凛香は手元の報告書へ視線を落とし、もう一度、冬獅郎を見る。
――……やっぱり、近い
これまで曖昧に感じていた変化が、今になってはっきりとした形を持ち始めていた。
『...隊長』
「だから、何だ」
『また、身長伸びました?』
冬獅郎は、少しだけ目を細めた。
「……ああ」
短い返事。凛香は、思わず目を丸くする。
『やっぱり』
「そんなに驚くことか、いいから仕事に戻れ」
凛香は、冬獅郎の姿を改めて見た。
自分よりもずっと小柄で、隣に立つと自然と目線が下がっていた。
それが、今は...
『もう、かなり近いですね』
冬獅郎は、凛香の言葉に一瞬だけ視線を向けた。
「そうか?」
『そうですよ!あと少しで私と同じくらいになりそう』
凛香は、何気なく笑った。
その言葉に、冬獅郎は少しだけ黙る。
凛香の目線に近づいている。
その事実を、彼女自身がこうして口にしたのは初めてだった。
冬獅郎は、フッと静かに笑うと書類へ視線を戻した。
それ以上、話を続けるつもりはないらしい。
けれど、凛香はもう一度だけ、彼の横顔を見た。
――本当に、変わってるんだなぁ
今までは、少しずつ変わっていることを、何となく感じていただけだった。
いや、どこかで無意識にはっきりと認識しない様にしていたのかもしれない。
しかし、こうして目線の差が縮まってくるともう曖昧にする事はできない。
冬獅郎の身体は、確実に成長している。
その実感が、桜の中に静かに残った。