【第二章】戻る日常、変わる日常ー。
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『そちらの荷は、先に奥へ運んでください。あ、それはこっちにーー』
「はい!」
隊士たちが返事をし、荷を運び始める。
凛香は報告書を確認しながら、通路の端へ移動した。
「危ない!」
報告書の確認に夢中になり、足元が疎かになっていた為、無造作に置かれた資材に気づかず躓いてしまう。
『おわっ』
どこかで警告を鳴らす隊士の声に反応し、凛香は咄嗟に手を伸ばしたものの、足がもつれ身体が大きく傾く。
その瞬間、誰かが凛香の腕を掴んだ。
ぐっと引き寄せられ、凛香の身体はバランスを崩し、引き寄せられた方に倒れる。
「足元見ろ」
『……っ、ありがとうございます、隊長』
冬獅郎は凛香の腕を掴み支えたまま、周囲の状況を確認する。
その手に、凛香はふと意識を向けた。
以前よりも大きい、指も、手のひらも。
百五十センチを超えた身長から伸びた腕、少しずつ変わっていく顔立ち、目つき。
少年だった姿から、少しずつ青年へと近づいている。
そのことを、凛香は否応なく認識し始めていた。
―― 成長、してるんだ
当たり前のように隣にいた彼の身体が、変わっていく。
「ったく...」
『は、はい』
冬獅郎はそう呟くと、何事もなかったかの様に凛香の腕から手を離した。
凛香は軽く腕をさすりながら現場へ意識を戻す。
昔から身長を気にしていた事は知っている為、嬉しいよう、もやっとするような、言い表せない感情が一瞬だけ湧くが、今その感情に名前は付かない。
彼の変化に気付いている。
少年から青年へと成長している。
けれど凛香にとって冬獅郎は、まだそれ以上でもそれ以下でもない。
日番谷冬獅郎
昔から知っている大切な同期であり、今は自分の隊長。
彼を一人の男性として意識するには、まだ遠い。