【第二章】戻る日常、変わる日常ー。
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復興作業が続く現場では、十番隊をはじめとする各隊の隊士たちが忙しく動き回っていた。
崩れた建物の撤去、資材の運搬、修繕の指示。
冬獅郎は現場の状況を確認しながら、隊士たちへ的確に指示を飛ばしていく。
「そっちの資材は先に運べ。通路を塞ぐな」
「はい!」
「修繕箇所の確認が終わったら報告しろよ」
「了解しました!」
その傍らで、凛香もまた隊士たちの動きを確認していた。
復帰後、以前よりも気を引き締めて職務に臨むようになった彼女は、必要な報告を済ませると冬獅郎の隣へ立つ。
その姿を、ふと見上げた。
新しい死覇装に身を包んだ冬獅郎。
白い羽織の肩から覗く腕は、以前よりも長くなっている。
顔立ちも、ほんの少しずつ変わってきていた。
凛香は、以前からその変化を感じていた。
けれど、こうして隣に並んで立っていると、改めて思う。
――やっぱり、そうなのかな……。
身体が成長している。
そう考えれば、これまでの小さな変化にも説明がつく。
以前は、隣に立つと自然と視線が下がっていた。
今はまだ凛香の方が明らかに高いものの、冬獅郎の頭の位置は確実に上がっている。
「月影、そっちの確認は終わったか」
『はい。東側の修繕は、予定通り進んでいます』
「分かった。次は西側を確認する」
『了解です』
返事をしながら、凛香はもう一度だけ冬獅郎の横顔を見る。
本人に直接尋ねるべきだろうか。
けれど、今は隊長として指揮を執っている最中だ。
こんな話を持ち出すのも、少し違う気がする。
凛香はその疑問を胸の内にしまい、再び現場へ視線を戻した。
東側の復興現場の指揮を終え、次の確認場所へ向かう。
冬獅郎が先を歩き、凛香がその隣へ並んだ。
以前、凛香は冬獅郎の歩幅に合わせて、意識的に歩く速度を落としていた。
彼の歩幅は小さかった。
だから、隣を歩く時には少しゆっくりと。
急かさないように、置いていかないように。
それは、長い付き合いの中で自然と身についた習慣だった。
けれど。
『……あれ?』
凛香は、歩きながら小さく声を漏らした。
冬獅郎の歩く速度に合わせようと、いつものように足取りを緩める。
しかし、ふと気付く。
足取りを緩めると、冬獅郎との距離が僅かに開く。
普通の自分の足取りで歩みをとると、冬獅郎に追い付き並んで歩けている。
ということは彼の歩幅が、以前よりも大きくなっているという事なのだろう。
凛香が敢えてゆっくり歩かなくても、自然と隣を保てる。
「どうした、夏目」
足元に意識をやりすぎて、不意にかけられた言葉に少し驚きながら返事をする。
『いえ、何でもありません!』
そう答えながら、凛香は冬獅郎の足元へ視線を落とした。
長くなった脚、歩く姿勢もほんの少し変わったように見える。
『……ふぅん』
思わず漏れた声に、冬獅郎が眉を寄せた。
「何だ」
『えっと、その、歩くのが少し楽になったなぁ、と思って』
「……は?」
『前は、私がちょっとゆっくり歩かないとすぐ追い越しちゃいそうだったから』
「お前が勝手に速度を落としてただけだろ」
凛香は小さく笑った。
『今は、そこまでしなくても自然に並べるんですね。なんでですかねー?』
わざとらしく言えば、冬獅郎は一瞬だけ黙った。
それから、視線を前へ戻す。
「……さぁな」
その声は、いつもと変わらない。
明確な否定も肯定も、何も言わない。
けれど、凛香はその横顔を見ながら、やはり思う。
――やっぱり、少しずつ大きくなってるんだろうな
その実感は、歩幅という何気ない変化の中にも、確かに現れていた。