【第二章】戻る日常、変わる日常ー。
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隊舎の稽古場では、隊士たちが二人一組になって大戦後久しくの剣術の稽古を行っていた。
「そこまでだ」
冬獅郎の声が響く。
木刀を構えていた隊士たちが、一斉に動きを止めた。
「今の打ち込み、踏み込みが甘い。相手の動きを見てから動いてんじゃねぇ。先を読め」
「はい!」
「もう一度だ」
冬獅郎は腕を組み、稽古を見守る。
普段通りの指導。 普段通りの声。
しかし、次の瞬間。
「隊長!」
背後から声を掛けられ、冬獅郎が静かに振り返った。
隊士の一人が、木刀を手に立っている。
「一度、隊長に稽古をつけていただきたいのですが!」
「……俺に?」
「はい!俺、あの戦いで何もできなくて...少しでも、力をつけたいんです...!」
冬獅郎は少しだけ眉を上げた。
隊士の揺れる瞳を見つめ、その心意気を買ってやることにした。
「いいぜ、来い」
隊士が木刀を構える。
冬獅郎も手近な木刀を取った。
互いに間合いを測る。
――来る
隊士が踏み込んだ瞬間、冬獅郎はその動きを受け流した。
木刀が交差し、乾いた音が稽古場に響いた。
二度、三度。
隊士の攻撃を受け止め、隙を見て打ち返す。
その動きに迷いはない。
だが。
四度目の打ち込みを受けた瞬間、冬獅郎の身体の奥に、また鈍い軋みが走った。
「……っ」
ほんの一瞬。
握った木刀の柄が、手の中で僅かにずれる。
隊士の攻撃を受け止めたまま、冬獅郎は動きを止めた。
「隊長?」
「……いや」
冬獅郎は木刀を引き、隊士から距離を取る。
「終わりだ。今の動きは悪くねえ」
「ありがとうございました!」
隊士が頭を下げる。
冬獅郎は木刀を返しながら、自分の手を見た。
――今のは...
冬獅郎は表情を変えないまま、稽古場を後にした。
廊下を歩きながら、少しだけ袖口を軽く引く。
いつも着ている隊長羽織。 その下の死覇装。
肩から腕にかけて、以前より僅かに窮屈に感じる箇所があった。
「……気のせいで済ませるには、少し多いな」
小さく呟いた声は、誰にも聞かれなかった。