【第一章】大戦、そして終戦へー。
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「ところで凛香」
乱菊が思い出したように口を開いた。
『退院したら、まず何がしたい?』
「そうですねぇ……」
凛香は少し考え込む。
真っ先に浮かんだのは、やはり十番隊舎だった。
『十番隊に帰って、皆んなに会いたいですね』
「ふふ、そうよね」
『ずっと寝てたから、隊舎の様子も気になります』
「それなら、心配しなくていい」
冬獅郎が口を挟んだ。
「隊舎は問題ない。お前がいなくても回ってる」
『……それはそれで、ちょっと寂しいんですけど?』
「何だ。仕事がなくて寂しいのか?」
『違いますよ!私の居場所がなくなってないかなって』
「そんなわけねえだろ」
冬獅郎は即座に答えた。
「お前の席はそのままだ。勝手に心配するな」
『……はい』
思いがけず真面目な返答が返ってきたことに、凛香は少しだけ目を丸くした。
それから、ふわりと笑う。
『ありがとうございます』
「礼を言うようなことじゃねえ」
『そうですか?』
「ああ」
乱菊はそんな二人を眺めながら、楽しそうに目を細めていた。
「隊長、凛香が起きてからずいぶん顔を出しに来ますもんねぇ」
「必要な確認だ」
「へぇ?確認、ねぇ...?」
「何だ、その顔は」
「別にぃ?」
「……松本」
「はいはい。おー怖い怖い」
乱菊はわざとらしく肩をすくめた。
凛香は2人のやりとりに思わず笑ってしまう。
『本当に、お二人は変わらないですね』
「そうか?」
『はい、なんだか安心します』
その言葉に、冬獅郎は一度だけ凛香を見た。
何かを言いかけたように口を開き、しかし結局、何も言わずに視線を逸らす。
「……退院はまだ先だ。焦るなよ」
『もう、分かってますってー』
「本当かよ」
『本当ですぅ!もうシロちゃんの意地悪』
「シロちゃん言うなつってんだろ。それだけ口が回るなら問題ねぇな」
いつものやり取り、いつもの声。
しかし冬獅郎は凛香の知らないところで、ほんの少しだけ変わり始めていた。