【第一章】大戦、そして終戦へー。
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「……凛香」
不意に、自分を呼ぶ声がした。
その瞬間、夢の景色がゆっくりと霞み始めた。
風の音が遠ざかり、木々の緑も、隊舎の景色も、少しずつ白く溶けていく。
「……凛香」
低くて、少しぶっきらぼうで。
けれど、どこか懐かしい。
『……誰?』
夢の中で、凛香は振り返った。
十番隊の庭が遠ざかっていく。
乱菊や一心の笑い声も、隊士たちの足音も、少しずつ薄れていく。
代わりに聞こえてきたのは、ひどく静かな声。
「……起きろ」
もう一度。
今度は、少し近くでその声が聞こえる。
それは凄く聞き慣れた声で、懐かしくて、どこか安心する声。
「凛香」
――ああ。この声、私はよく知っている。起きなきゃ...
その声に導かれるように、意識がゆっくりと浮上していく。
重たい瞼の向こうに、淡い光が差し込んだ
『……ん』
瞼が酷く重い。
身体の感覚もひどく曖昧で、どこか遠くに置き去りにされていたような気分だった。
ゆっくりと目を開くと、ぼんやりと白い天井が視界に入った。
それは、知らない天井だった。
薬品の匂いと静かな足音。
遠くから聞こえる隊士たちの声。
『……ここ、は』
不意に漏れた声は酷く掠れていた。
起き上がろうとしたものの、身体に力が入らず全身に鈍い痛みが走った。
『ぃ゛っ……』
わずかに眉を寄せたところで、すぐ隣から声がした。
「動くな」
聞き慣れた声。
凛香はゆっくりと首を横へ向けた。
そこにいた人物を見て、目を見開く。
「……日番谷、隊長?」
驚いたように見開かれた瞳。
いつものように眉間には皺が寄っているのに、その表情はどこか違っていた。
まるで、目の前の光景が信じられないとでもいうように。
「……起きたか」
『あ……はい』
「…………」
「……?」
何も言わない冬獅郎を、凛香はぼんやりとした頭と目で見つめる。
少し伸びた白銀色の髪、以前よりも大人びた顔つき。
気のせいか?と思い、少し首を捻る。
ただそれよりも気になったのは、彼はひどく疲れた顔をしていた。
『……どうしたんですか?』
その問いに、冬獅郎は一瞬だけ目を伏せた。
「……三週間だ」
『え?』