【第一章】大戦、そして終戦へー。
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『あれ、松本副隊長!また隊長を探してるんですか?』
眉間に皺を寄せながら、辺りをキョロキョロと探す乱菊の姿が目に入った。
「そうなのよぉ。どこ行っちゃったのかしらねぇ」
『あー、さっき庭の方にいましたよ』
ーって言わない方が良かったかな...いやでも、多分あれはサボりだよなぁ...
思わず隊長と居場所を吐いてしまったが、時既に遅し。
まぁ自業自得だろうと思いながら、やれやれと苦笑いする。
「ほんと!? ありがと、凛香!」
ぎゅっと抱きついてくる乱菊に、おっとと...と少しふらつきながら受け止める。
そのふくよかな物が顔に当たりやや苦しいながらも、嫌ではないため無理な離すこともしない。
『いえいえ』
「……あ、そうだ!せっかくだし、凛香も一緒に探してくれる?」
『えっ、私もですか?』
「お願いっ!」
そう言って両手を合わせる乱菊に、凛香は苦笑した。
『仕方ないですね』
「やったぁ!」
結局、二人で探しに行くことになった。
もっとも、隊長を見つけるのはそう難しいことではない。
「隊長ーーーーっ!!」
『たいちょ〜っ』
「どこですか隊長ー!たぁーいーちょーー!!」
「松本副隊長と月影さん、またやってる...」
「毎日大変だなぁ...」
先ほど姿を見かけた庭先で叫ぶ2人。
その姿は既に日常化しており、ほか隊士もやれやれと首を横に振りながら通り過ぎていく。
「むっ!ちょっとお盆貸して」
「えっ!あ....はい!」
きらーんっと目を輝かせた乱菊。
「隊長見ーーーっけ!!!」
庭の中央にある木に向かって借りたお盆を容赦なく投げる。
「ギャーーーーッ!!!」
木に当たったかと思えば、ドタバタガッシャーンと大きな音を立てて何かが木から落ちてくる。
「よーし、命中!」
「ざーーんねん!ギリギリ受け止めたので命中しませんでしたー!」
其処にはお盆を顔面の前でキャッチし、鼻高々に声を上げる隊長の姿。
『そいっ』
「ぱう」
凛香は容赦なく追撃でそのお盆越しに蹴りを炸裂。
隊長からは情けない声が出て、それを聞いた乱菊がとても良い顔で親指を立てている。
「ひーーー!!折れたァーーー!!俺のイカス鼻が折れちゃったーーーーー!!」
その叫び声も凛香には届かず、してやったりという顔で、乱菊にグッと親指を立てかえす。
「さ!帰りますよ!ちゃんとお仕事してもらいますからね!」
『そうですよー、さっさと行きますよ』
「『志波隊長!』」
この頃は五月蝿いくらいに毎日が賑やかだった。
「乱菊!」
「は、はいッ!」
「今日のお前...、走り回って俺を探したおかげでおっぱいがテカってていいな...!」
何を真顔でいうのかと思えば、相変わらずだった。
ギロリと乱菊は一心を睨みつけると、ボコスカと容赦なく殴り蹴りまくる。
凛香は、はぁ...と一段と大きくため息をつき2人を置いていく。
先に十番隊隊舎へ戻ると、1人真面目に仕事をする少年の姿がそこにあった。
『あ、シロちゃん』
「シロちゃん言うなつってんだろ!」
ギロリと眉間に皺を寄せこちらに睨みを効かせる冬獅郎。
だがしかしそんな姿は凛香は効かず、可愛い子猫が威嚇しているようなものにしか見えない。
「偉いねぇ、1人でお仕事頑張ってて♪」
頭ひとつ分は下にある彼の頭を、容赦なくわしゃわしゃと撫で回す。
「だぁーッ!やめろ!」
ぺちっと手を払いのけられ、その手は静止されてしまう。
ちぇっ、と思いながらもその可愛らしい姿を微笑ましく思う。
そんなやりとりをしていると、入口の方から足音が聞こえる。
『あ、やっと来た!』
後ろを振り返れば、不機嫌そうな乱菊と、乱菊にボコボコにされたであろう一心が其処にいた。
「遅かったっすね」
その2人の姿を見て、冬獅郎は凛香の横を通り過ぎスタスタと2人に歩みを寄せる。
ばさっと重い紙の音を立てながら、隊長に物凄い量の書類を突きつける。
「書類、終わりました」
「うおおおお!!やるじゃねぇか冬獅郎!!さすが次期隊長!!」
興奮した一心に高い高いをされる冬獅郎。
なお、その顔は虚無である。
それを見て笑いを堪える凛香。
「ちょっとちょっと!次期隊長はあたしでしょーが!階級的に!」
「何言ってんだ、オマエみたいなのが隊長になったら隊が崩壊するわ」
「そうっスね、卍解の練習も進んでるし、俺で問題ないと思います」
と高い高いをされながら、ジト目でいう冬獅郎。
「コラ冬獅郎!!アンタまで何言い出してんのよ!!凛香も何とか言って!!」
『えぇ!?そこで私に振ります!?』
――ああ、懐かしいなぁ
誰かが書類を忘れたとか。
誰かが仕事を押しつけたとか。
誰かが隊舎のどこかに隠れて昼寝をしていたとか。
今思えば、どうということのない出来事ばかり。
それでも、そんな日常が大好きだった。
あの頃の十番隊には、いつも誰かの声があった。
怒鳴り声も、笑い声も、呆れた声も。
当たり前のように隣にあって、当たり前のように明日も続くと思っていた。