小話・はじまりの裏側で
** 殴られた男 **
あのコの額にちゅーしたのは、慰めてあげたかったから。
そんな傷なんでもないよって、そう言う意味を込めて。
だけど、それをアイツに言ったのは、揶揄いが半分。あとの半分は知りたかったから。
初めてボクがあのコと言葉を交わした日にボクの手首を捻り上げ、あのコの名前を呼ぶ度に睨んでくるのは、何故か。
あのコはただの『ご近所さん』って言ったけど。それだけじゃないよね?
その結果がどうなったって?
無言で腹にグーパンチだよ。
くそっ。
まるで彼女にちょっかいだした男を牽制する彼氏みたいじゃないか?


** 殴った男 **
こいつどういうつもりなんだ。
俺にそんなことを言うなんて。
だいたい前から気に入らなかったんだ。
彼奴を名前で呼ぶなんて。
いくら『ちゃん』づけだって、そう呼んでいいのは、俺だけだ。
『傷を見た』?
『ちゅーした』だと?
お前にそんな資格あるか。
その傷の原因を作ったのはお前たちじゃないか。
どういう意図で俺にそんなことを言ったのかなんて、この際どうでもいい。
だけど、彼奴に触れたことだけは許せない。
ただの嫉妬だ。
ボコッ。
これだけで許してやるんだ。
有り難く思え。


