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結論から言おう、サンドイッチは滅茶苦茶美味しかった。私が空腹だったと言うのもあるんだろうが、普通に作り手の腕も良かったのだろう。そういえばひでおは料理とか裁縫とか結構女々しい趣味を持っていた事を思い出した。
・・・ということで、サンドイッチは全て私の腹に収まった。非常に美味でした。
満腹には程遠いがさっきより幾分か満たされたお腹を撫でていると、ふといつの間にか視線を感じなくなった事に気がついた。さっきまであんな恐ろしいレベルの視線を送ってきたのに、一体どうしたんだ?
不思議に思いお腹から視線を上げると、そこにはーー。
誰も、居なかった。
・・・ん?ちょっと意味が分かりませんね?
思わず目を擦る。しかし、何回見てもそこには誰も居ないのだった。え、マジで?あいつ私がサンドイッチ食べてる間に救命(反義語)しに言っちゃった?私食べ終わるのに3分もかけてないよ?幾ら何でも早すぎじゃね?そりゃヒーロー(笑)なんだから忙しいんだろうけどさすがに、ちょっと…ねぇ……?
微妙な気持ちになって空を見上げる。私の気持ちとは裏腹に、空は憎らしいほど真っ青だった。まるでひでおの体毛の様だなんて思っていたがハッと我に帰る。此処で突っ立ってても仕方がないし、早く拠点とかも探しに行かなければならない。寧ろひでおと早々に別れられた&食べ物GETは幸運な事だったかもしれない。いや、間違いなく幸運だった!此処では何が起こるのか分からないんだから気を引き締めてかないと。
私は頰を叩いて気合を入れ直すと、寝る場所を探す為にその場にくるりと背を向けた。
その刹那だった。
横を、何かが通り過ぎていった。
風が巻き起こり私の横髪を揺らす。私の見間違いでなければ青い残像と思わしきものが残っているのだがきっと幻覚だろう。チイちゃんの影送り的な原理で空の青が目に移っちゃったんだなきっと。
私は目頭を押さえ、幻覚を掻き消そうとした。が、肩に置かれた手がそれを止めた。ビクッと思わず肩を跳ね上がらせると、相手も驚いた様な声を出して手を離した。一瞬私達の間に沈黙が流れる。それは酷く長い時間に思えたが、実際はもっと短かったのかもしれない。
ゴホン、と一度咳払いをしたヒーローは尊大な笑みを浮かべながら私に何かを見せつけて来た。しかし、ブンブン揺れる尻尾からは何処か落ち着きのない印象を受ける。その様子がまるで母親に自分が作ったものを自慢しに来る子供の様に見えてちょっと萌えかけたが、相手はひでおだと思い出し頭を振って幻想を追い払った。あの声で子供はねえな…。
私がまた現実逃避気味にそんなことを考えていると、ひでおは急かすように自分の手を突き出して来た。流石に私もそれをガン無視するわけにもいかず渋々ひでおが持っているーー否、ひでおが抱えている『それら』を見た。
其れは、大量の料理だった。
気の遠くなる様な量の料理の山が、ひでおの腕の中で奇跡的なバランスを保って私の前にその姿を現していた。・・・今更だがこれ、私に見せに来たんじゃなくて食べさせる為に持って来たんじゃないよな?
ふとそんな考えが浮かんだがまさかと思いすぐ振り払った。というか信じたくなかった。ま、まあ流石にひでおもこの量の料理を私が食べられるなんて思っていないだろうし、それに私に食べ物を分け与える意味が分からない。ヒーローとしての責任感?そんなものひでおの中には存在しません。しかも私は先程ひでおからサンドイッチを貰っている。もうこれ以上ひでおが私に何かを分け与える必要は無いはずだ。
私がそこまで考えた時、ひでおがとうとう動きを見せた。持っている料理を地面に降ろすと
一番上に乗っていたグラタンを手に取った。
まさか私の前で全部食べるのか…?(困惑)
私がヒーローとしても人間としても最低な奴の答えに辿り着きそうになった時。
ひでおは何処からかスプーンを取り出すとまだ湯気の立つそれを掬い、おもむろに口を開けた。ただし、スプーンの先は自分の口ではなく私の方に向けられている。まあ、その、俗に言う……あーんって奴だよ言わせんな恥ずかしい。
脳内ではそんな一人芝居ができていたが、現実にはそんな余裕かけらもなかった。
「…は?」
余裕がなさすぎて思わずこんな声が出てしまったが怒ってるわけではないのだ。てか今の絶対悪印象持たれたよな、どうしよう…。
もう一度ひでおの方を見る。彼は今もあーん顔でスプーンをこちらに向けていた。どうやらさっきの私の声は聞こえていなかったらしい。ひとまずその事に安堵するが、根本的な問題は何も解決していない。
まずはこの状況をどう切り抜けるかだ。
正直20歳にもなってあーんはキツイ。しかも相手は恋人でも友人でも無いさっき会ったばかりの人外。さらに言えばコイツは怪力持ち。あーんしようとした途端うっかり手が滑って私の口を貫通して後頭部からスプーンが突き出る未来が容易に想像できる。絶対にこれだけは回避したい、回避したいのだ。
が、
私は手を振って自分で食べれる、というジェスチャーをした。・・・え、結局食べるのって?当たり前じゃ無いですかーやだー。こっちはいつ食べ物が手に入るのかも分からない状況なんだよ?貰えるものは貰っとかないと餓死エンドまっしぐらじゃないか!と、まあ茶番はここまでにしてだ。
ひでおが、スプーンを、渡さない。
コイツは何故か私がスプーンを要求するとイヤイヤという風に首を振るのだ。イヤイヤじゃねえよ私の命が惜しかったらさっさとそのブツを渡しやがれ!そう言いたいところをグッと抑えて笑顔を浮かべる。
「(なんで?)」
ジェスチャーでそう聞くがひでおは首を振り続けるばかりで理由を言おうとしない。マジなんなんだお前!なんなんだお前!大事な事なので2回言いました。
くっ、こうなったらもう食べ物を諦めるか…?この状況でひでおにスプーンを預けると言うことは即ち命を預けることと同義である。正直毎回の様に周りで死亡フラグが乱立するコイツには絶対に私の命(スプーン)は任せられない。タダ飯は惜しいが命には変えられまい。
この世界はよく考えて行動しないとすぐにdedend直行するんだか…………ん?
ちょっと待てよ?
一つある考えに思い至り、瞬間自分が何をしようとしていたのか理解し背筋がゾッとする。
そうだ、この世界は、基本
逃 走 す る と 死 亡 フ ラ グ が 立 つ ん だ
説明しよう!この世界は生きようと足掻けば足掻く程酷い死に方をする傾向がある。
例を挙げるとすれば
ある軍人の家に双子が忍び込む→色々あって覚醒する→双子逃げようとする→待ち伏せされてる→色々すっ飛ばして双子死亡
や
飛行機乗ってたらヘラジカの所為でトラブル→乗ってたキャラ逃げる→悉く死亡→ヤマアラシさんが海に不時着させる→が、鮫に襲われその後死亡
と、逃走が成功したことが全くない。こんな世界でもしこのままこの場から逃げ出したりしたらどうなるだろうか?目の前の状況からはおさらば出来るだろう、がその時には現世からもおさらばすることになる。
つまり私が選べる選択肢は一つしかない。
「(できるだけ早く食べてこの場から去ろう…!)」
ゴクリと唾を飲む。
私は意を決してスプーンにかぶりついた。
グラタンは私が思考している間に程よく冷めた様で、口の中で程よくとろけたチーズと濃厚なホワイトソースが複雑に絡み合い云々。
つまりは普通に美味しかった。というか滅茶苦茶美味しかった。ほっぺた落ちるかと思った。
私はもう我を忘れてただひたすら口を開けた。側から見れば親から餌を貰う雛鳥の様に見えたことだろう。正直私の心情も完全にそれだった。おかあさんはやくごはんちょうだいピィー(裏声)
漸く私が我に帰った頃には、ひでおの持っていた幾枚もの皿が全てカラになっていた。
「うっぷ……」
対して私は、口を手で押さえ今にも逆流して来そうな料理等を必死で押しとどめていた。
ヤバイ、食べ過ぎた…。きも゛じわるい……。
必死で吐き気を抑える私とは対照的に、ヒーローは満足そうなーーやりきった様な笑みを浮かべている。お前マジふざけんな。
幸いにも口からスプーンが生えることは無かったが、死亡フラグはまだ消えていない。だから早々にこの場を離れたいのだがーー。
私は自分のお腹を見る。
パンパンに膨れていて歩くのもキツそうだった。
私は気持ち悪さに立っているのも億劫になり地面にゴロンと寝転んだ。ひでおが近くに居るがもうそんなの知るか。私はただ休みたいんだ….。
ヤケクソになった私はひでおに向けて背中を見せるという無防備極まりない格好で薄目を開けて地面を歩くアリを見ていた。……このアリ確かいつもスニッフルズを殺してるアリだよな………。目が合ったので取り敢えずお辞儀をすると相手はポカンとしながらもお辞儀を仕返してくれた。なんだ、結構礼儀正しいじゃないか…。
そんなことを思いながらアリを暫く見ていたが、後ろから腰を揺さぶられたので渋々起き上がり、ひでおに向き直った。もはや私の顔から笑顔は消え失せ、気だるげなものになっていると思うがもう直す気力もないのでそのまま顔を合わせる。ひでおはーー先程とは打って変わりーーどこかモジモジとした様子でこちらを見ていた。尻尾が落ち着きなく揺れている。それを見た時、私は強烈な既視感を感じた。何だろう、さっきもこんなことがあった様な………?
〜〜〜〜〜
回想中
ゴホン、と一度咳払いをしたヒーローは尊大な笑みを浮かべながら私に何かを見せつけて来た。しかし、ブンブン揺れる尻尾からは何処か落ち着きのない印象を受ける。その様子がまるで母親に自分が作ったものを自慢しに来る子供の様に見えてちょっと萌えかけたが、相手はひでおだと思い出し頭を振って幻想を追い払った。あの声で子供はねえな…。
回想終了
〜〜〜〜〜
あ れ か !
漸く思い出しポンと手を打つ。ああ、私がヒーローが子供に見えて可愛いとか思ったトチ狂ったときか。成る程確かに尻尾の振れ具合といいモジモジ感といいさっきと全く同じである。
チラリとひでおの方を見る。
ヒーローは未だに何かモジモジとしてこちらを見ていた。それは、まるで、なにかを待っている様なーー。
「……あ」
一つの可能性に思い至り、私は思わず声を漏らす。そうか、これならこんなトコでいつまでもモジモジしてる事にも納得がいく。いや、しかしいい歳?してこんなモン欲しいのだろうか?いやでも相手は大きな子供みたいな奴だし…。
私は少しの間そう悶々と考えていたがこうしてても埒があかないので思いきって言うことにした。これで相手の反応が変わらなかったら私が勘違い野郎の称号を手に入れるだけである。
そう思い、改めてひでおに向き直った。今から言うのは私の心からの気持ちである。
目を閉じて、すうっと息を吸い込み、そして
『ありがとう。あなたの料理はとても美味しかった』
中学生くらいの時に習った簡単な英語でそう伝える。相手は少し目を見開き、そして
「んーんっんっんー♪」
本当に嬉しそうに、口元を綻ばせて笑った。
その顔は、まるでーー初めて褒めて貰えて、喜ぶ子供みたいな顔だった。
・・・ということで、サンドイッチは全て私の腹に収まった。非常に美味でした。
満腹には程遠いがさっきより幾分か満たされたお腹を撫でていると、ふといつの間にか視線を感じなくなった事に気がついた。さっきまであんな恐ろしいレベルの視線を送ってきたのに、一体どうしたんだ?
不思議に思いお腹から視線を上げると、そこにはーー。
誰も、居なかった。
・・・ん?ちょっと意味が分かりませんね?
思わず目を擦る。しかし、何回見てもそこには誰も居ないのだった。え、マジで?あいつ私がサンドイッチ食べてる間に救命(反義語)しに言っちゃった?私食べ終わるのに3分もかけてないよ?幾ら何でも早すぎじゃね?そりゃヒーロー(笑)なんだから忙しいんだろうけどさすがに、ちょっと…ねぇ……?
微妙な気持ちになって空を見上げる。私の気持ちとは裏腹に、空は憎らしいほど真っ青だった。まるでひでおの体毛の様だなんて思っていたがハッと我に帰る。此処で突っ立ってても仕方がないし、早く拠点とかも探しに行かなければならない。寧ろひでおと早々に別れられた&食べ物GETは幸運な事だったかもしれない。いや、間違いなく幸運だった!此処では何が起こるのか分からないんだから気を引き締めてかないと。
私は頰を叩いて気合を入れ直すと、寝る場所を探す為にその場にくるりと背を向けた。
その刹那だった。
横を、何かが通り過ぎていった。
風が巻き起こり私の横髪を揺らす。私の見間違いでなければ青い残像と思わしきものが残っているのだがきっと幻覚だろう。チイちゃんの影送り的な原理で空の青が目に移っちゃったんだなきっと。
私は目頭を押さえ、幻覚を掻き消そうとした。が、肩に置かれた手がそれを止めた。ビクッと思わず肩を跳ね上がらせると、相手も驚いた様な声を出して手を離した。一瞬私達の間に沈黙が流れる。それは酷く長い時間に思えたが、実際はもっと短かったのかもしれない。
ゴホン、と一度咳払いをしたヒーローは尊大な笑みを浮かべながら私に何かを見せつけて来た。しかし、ブンブン揺れる尻尾からは何処か落ち着きのない印象を受ける。その様子がまるで母親に自分が作ったものを自慢しに来る子供の様に見えてちょっと萌えかけたが、相手はひでおだと思い出し頭を振って幻想を追い払った。あの声で子供はねえな…。
私がまた現実逃避気味にそんなことを考えていると、ひでおは急かすように自分の手を突き出して来た。流石に私もそれをガン無視するわけにもいかず渋々ひでおが持っているーー否、ひでおが抱えている『それら』を見た。
其れは、大量の料理だった。
気の遠くなる様な量の料理の山が、ひでおの腕の中で奇跡的なバランスを保って私の前にその姿を現していた。・・・今更だがこれ、私に見せに来たんじゃなくて食べさせる為に持って来たんじゃないよな?
ふとそんな考えが浮かんだがまさかと思いすぐ振り払った。というか信じたくなかった。ま、まあ流石にひでおもこの量の料理を私が食べられるなんて思っていないだろうし、それに私に食べ物を分け与える意味が分からない。ヒーローとしての責任感?そんなものひでおの中には存在しません。しかも私は先程ひでおからサンドイッチを貰っている。もうこれ以上ひでおが私に何かを分け与える必要は無いはずだ。
私がそこまで考えた時、ひでおがとうとう動きを見せた。持っている料理を地面に降ろすと
一番上に乗っていたグラタンを手に取った。
まさか私の前で全部食べるのか…?(困惑)
私がヒーローとしても人間としても最低な奴の答えに辿り着きそうになった時。
ひでおは何処からかスプーンを取り出すとまだ湯気の立つそれを掬い、おもむろに口を開けた。ただし、スプーンの先は自分の口ではなく私の方に向けられている。まあ、その、俗に言う……あーんって奴だよ言わせんな恥ずかしい。
脳内ではそんな一人芝居ができていたが、現実にはそんな余裕かけらもなかった。
「…は?」
余裕がなさすぎて思わずこんな声が出てしまったが怒ってるわけではないのだ。てか今の絶対悪印象持たれたよな、どうしよう…。
もう一度ひでおの方を見る。彼は今もあーん顔でスプーンをこちらに向けていた。どうやらさっきの私の声は聞こえていなかったらしい。ひとまずその事に安堵するが、根本的な問題は何も解決していない。
まずはこの状況をどう切り抜けるかだ。
正直20歳にもなってあーんはキツイ。しかも相手は恋人でも友人でも無いさっき会ったばかりの人外。さらに言えばコイツは怪力持ち。あーんしようとした途端うっかり手が滑って私の口を貫通して後頭部からスプーンが突き出る未来が容易に想像できる。絶対にこれだけは回避したい、回避したいのだ。
が、
私は手を振って自分で食べれる、というジェスチャーをした。・・・え、結局食べるのって?当たり前じゃ無いですかーやだー。こっちはいつ食べ物が手に入るのかも分からない状況なんだよ?貰えるものは貰っとかないと餓死エンドまっしぐらじゃないか!と、まあ茶番はここまでにしてだ。
ひでおが、スプーンを、渡さない。
コイツは何故か私がスプーンを要求するとイヤイヤという風に首を振るのだ。イヤイヤじゃねえよ私の命が惜しかったらさっさとそのブツを渡しやがれ!そう言いたいところをグッと抑えて笑顔を浮かべる。
「(なんで?)」
ジェスチャーでそう聞くがひでおは首を振り続けるばかりで理由を言おうとしない。マジなんなんだお前!なんなんだお前!大事な事なので2回言いました。
くっ、こうなったらもう食べ物を諦めるか…?この状況でひでおにスプーンを預けると言うことは即ち命を預けることと同義である。正直毎回の様に周りで死亡フラグが乱立するコイツには絶対に私の命(スプーン)は任せられない。タダ飯は惜しいが命には変えられまい。
この世界はよく考えて行動しないとすぐにdedend直行するんだか…………ん?
ちょっと待てよ?
一つある考えに思い至り、瞬間自分が何をしようとしていたのか理解し背筋がゾッとする。
そうだ、この世界は、基本
逃 走 す る と 死 亡 フ ラ グ が 立 つ ん だ
説明しよう!この世界は生きようと足掻けば足掻く程酷い死に方をする傾向がある。
例を挙げるとすれば
ある軍人の家に双子が忍び込む→色々あって覚醒する→双子逃げようとする→待ち伏せされてる→色々すっ飛ばして双子死亡
や
飛行機乗ってたらヘラジカの所為でトラブル→乗ってたキャラ逃げる→悉く死亡→ヤマアラシさんが海に不時着させる→が、鮫に襲われその後死亡
と、逃走が成功したことが全くない。こんな世界でもしこのままこの場から逃げ出したりしたらどうなるだろうか?目の前の状況からはおさらば出来るだろう、がその時には現世からもおさらばすることになる。
つまり私が選べる選択肢は一つしかない。
「(できるだけ早く食べてこの場から去ろう…!)」
ゴクリと唾を飲む。
私は意を決してスプーンにかぶりついた。
グラタンは私が思考している間に程よく冷めた様で、口の中で程よくとろけたチーズと濃厚なホワイトソースが複雑に絡み合い云々。
つまりは普通に美味しかった。というか滅茶苦茶美味しかった。ほっぺた落ちるかと思った。
私はもう我を忘れてただひたすら口を開けた。側から見れば親から餌を貰う雛鳥の様に見えたことだろう。正直私の心情も完全にそれだった。おかあさんはやくごはんちょうだいピィー(裏声)
漸く私が我に帰った頃には、ひでおの持っていた幾枚もの皿が全てカラになっていた。
「うっぷ……」
対して私は、口を手で押さえ今にも逆流して来そうな料理等を必死で押しとどめていた。
ヤバイ、食べ過ぎた…。きも゛じわるい……。
必死で吐き気を抑える私とは対照的に、ヒーローは満足そうなーーやりきった様な笑みを浮かべている。お前マジふざけんな。
幸いにも口からスプーンが生えることは無かったが、死亡フラグはまだ消えていない。だから早々にこの場を離れたいのだがーー。
私は自分のお腹を見る。
パンパンに膨れていて歩くのもキツそうだった。
私は気持ち悪さに立っているのも億劫になり地面にゴロンと寝転んだ。ひでおが近くに居るがもうそんなの知るか。私はただ休みたいんだ….。
ヤケクソになった私はひでおに向けて背中を見せるという無防備極まりない格好で薄目を開けて地面を歩くアリを見ていた。……このアリ確かいつもスニッフルズを殺してるアリだよな………。目が合ったので取り敢えずお辞儀をすると相手はポカンとしながらもお辞儀を仕返してくれた。なんだ、結構礼儀正しいじゃないか…。
そんなことを思いながらアリを暫く見ていたが、後ろから腰を揺さぶられたので渋々起き上がり、ひでおに向き直った。もはや私の顔から笑顔は消え失せ、気だるげなものになっていると思うがもう直す気力もないのでそのまま顔を合わせる。ひでおはーー先程とは打って変わりーーどこかモジモジとした様子でこちらを見ていた。尻尾が落ち着きなく揺れている。それを見た時、私は強烈な既視感を感じた。何だろう、さっきもこんなことがあった様な………?
〜〜〜〜〜
回想中
ゴホン、と一度咳払いをしたヒーローは尊大な笑みを浮かべながら私に何かを見せつけて来た。しかし、ブンブン揺れる尻尾からは何処か落ち着きのない印象を受ける。その様子がまるで母親に自分が作ったものを自慢しに来る子供の様に見えてちょっと萌えかけたが、相手はひでおだと思い出し頭を振って幻想を追い払った。あの声で子供はねえな…。
回想終了
〜〜〜〜〜
あ れ か !
漸く思い出しポンと手を打つ。ああ、私がヒーローが子供に見えて可愛いとか思ったトチ狂ったときか。成る程確かに尻尾の振れ具合といいモジモジ感といいさっきと全く同じである。
チラリとひでおの方を見る。
ヒーローは未だに何かモジモジとしてこちらを見ていた。それは、まるで、なにかを待っている様なーー。
「……あ」
一つの可能性に思い至り、私は思わず声を漏らす。そうか、これならこんなトコでいつまでもモジモジしてる事にも納得がいく。いや、しかしいい歳?してこんなモン欲しいのだろうか?いやでも相手は大きな子供みたいな奴だし…。
私は少しの間そう悶々と考えていたがこうしてても埒があかないので思いきって言うことにした。これで相手の反応が変わらなかったら私が勘違い野郎の称号を手に入れるだけである。
そう思い、改めてひでおに向き直った。今から言うのは私の心からの気持ちである。
目を閉じて、すうっと息を吸い込み、そして
『ありがとう。あなたの料理はとても美味しかった』
中学生くらいの時に習った簡単な英語でそう伝える。相手は少し目を見開き、そして
「んーんっんっんー♪」
本当に嬉しそうに、口元を綻ばせて笑った。
その顔は、まるでーー初めて褒めて貰えて、喜ぶ子供みたいな顔だった。