検査結果は異状がなかったらしい。
本当にただちっさくなっただけ、だそう。
「理由まではわからなかったけど、多分そのうち戻ると思うわ。」
「ありがとう、志保！」
　ニコニコと志保さんを見上げる彼女に志保さんは少し口元を緩ませながら頭を撫でていた。
「宮野さん、博士、本当にありがとうございます。」
「いやいや、いいんじゃよ。のぉ、志保君。」
「えぇ、花音のためですもの。…降谷さん、花音のこと頼んだわよ。」
　宮野さんはそういって研究室へと戻っていた。
…少しは俺の事認めてくれているんだろうか。
「零さん、せっかくだからどこか連れてってよ！」
　クイクイッとジャケットの裾をちっさくなった彼女が引っ張る。
「それがいい、儂も今から用事があっての。降谷君、花音君を頼んだぞ。」
「は、はい！」
　一気に二人に彼女を任せられ、少しテンパる俺だったが、博士にお礼をもう一度した後、彼女を抱き上げて車に乗った。
「…前に一度約束してたけど行けなくなった動物園でも行くか。」
　助手席に乗せた彼女が俺をキラキラとした目で見てくる。
可愛い。
「うん！　行きたい！」
　彼女は先ほど買った靴を履いた足をバタバタさせながらウキウキしている。
…本当に子どもみたいだな。
俺は愛車を動物園まで走らせた。
勿論、仕事は休みになった。
こんな形で埋め合わせが出来ると思ってなかったけど、これはこれでいいな。
彼女も同じ考えなのかすごくうれしそうにしている。
　動物園に着くと、平日ということもあるのか空いていた。
「…子ども料金かぁ…。」
　入場を済ませてゲートをくぐるなり、手をつないでいる彼女がしょぼんとしていた。
「まぁ、今の花音はどこから見ても小学生くらいだからな。しょうがないよ。」
「いいもん、今日は親子気分を味わうもん。」
　そう言いながらも彼女の頬は膨れている。
指を刺して空気を抜きたい気持ちになったが、今以上に彼女の気分を損ねるのは良くないと考え直してグッと堪えた。
「花音、カチューシャ何買う？」
「…レッサーパンダ！」
　チョイスが王道ではないことに彼女らしさを感じる。
「零さんもお揃いで！」
「えっ！？　…アラサーが動物の耳は痛くないか…？」
「大丈夫、童顔だから。」
　…そういう問題かなぁ…。
目の前にいるちっさくなったお姫様のお願いに断れるわけもなく、しょうがなく自分の分まで購入した。