『本日午後四時頃、米花町五丁目にある毛利探偵事務所のトイレの中で、男性が拳銃自殺するというショッキングな事件がおこりました。なお、男性の身元は未だわかっておらず…』
　すでに先ほどの事件はテレビで報道されていた。
花音は蘭の存在を思い出し、急いでスマホを確認する。
「あ、おじさん、蘭が園子の家に泊まることになったって結構前に連絡あったみたい。っと、やば、蘭かな、着信だ。もしもし？」
　花音が電話に出ると、電話相手は怒鳴りながら応答した。
「何で電源切ってんだよォ！？　心配したじゃないか！」
「ま、真澄？」
「蘭君から、今日は花音が事務所で蘭君の代わりにいるって聞いてたんだよ。蘭君は園子君の家に行ったみたいだけど。」
　花音は電話越しで怒鳴り散らす世良の声のボリュームから、スマホから少し耳を離した。
「ごめん、事件でごたついてた。」
「それで、コ…君や、…五郎さ…は無事…のか」
　花音は途切れる世良の声を訝しんだ。
「ごめん、真澄、声途切れてて聞き取りづらい。一回切るね。」
　安室はそれを聞くなり、ソファから立ちあがった。
「圭さん！　もしかしたら、この部屋、盗聴されているかもしれません。」
　驚く樫塚を尻目に花音は自身のスマホの音楽フォルダを開いた。
「さっきの花音の通話か。盗聴器が仕掛けられていると、携帯が繋がりにくくなることがあるんです。」
「さすが毛利先生！」
　安室は小五郎を褒めると、樫塚を振り返った。
「圭さん、今から全室を回って、盗聴器の設置場所を突き止めますけど、構いませんよね。」
　安室に聞かれた樫塚は下着などを片付けると言って、リビングから去った。
花音は自身の音楽フォルダからそこそこ音量のある曲を選択した。