しばらく車を走らせると樫塚の部屋があるマンションに到着し、四人はマンション内まで樫塚を送り届けることになった。
エレベーターは六階で止まり、エレベーターを出た四人はあたりを見回した。
「こりゃあいいマンションですなぁ。家賃、結構するでしょ？」
「えぇ、まぁ。あっ、でも、親のスネをかじって、兄と二人で住んでいたので。」
　部屋の前まで来ると、樫塚は四人に振り返った。
「…あの、もう、この辺で結構ですよ。誰も待ち伏せしていない事はわかりましたし。」
「そ、そうですな。じゃあ、俺達はこの辺でお暇することにします。」
　小五郎がマンションから引き揚げようとするなり、コナンが声をあげた。
「あ～～～～っ！　トイレ行くの忘れてた～～～っ！　漏れちゃうよ～！　お、お姉さん、トイレ貸して～！　お、お願い、もう我慢できない～っ！」
　そう声をあげるコナンに一瞬白い目を向ける花音だったが、コナンの意図に気が付いたのか、苦笑いをする。
「え、ええ。ちょっと待ってね。」
　樫塚が部屋の鍵を開けると何やら異臭がし、コナンと花音と安室の三人は視線を鋭くした。
「トイレは玄関入ってすぐ右横だから。」
「う、うん！　ありがとー！」
　コナンが部屋の中へ駆け込むと安室と小五郎もトイレに行きたいと言い出し、四人は樫塚の部屋に上がることになった。
「お茶ぐらいしか出せませんけど。」
「すみません、圭さん。おじさんたちが。」
　そう樫塚に言う花音だったが、視線だけは鋭く部屋を観察していた。
「ありゃりゃー？　こりゃまたずいぶん…昨夜は宴会か何かだったんスか？」
　リビングに入ると、菓子や酒などがテーブルの上に散乱していた。
「あ、はい。大学時代の友人が数人集まって。すいません、散らかってて。」
「お構いなく。あ、圭さん、その大学時代のお友達って女性ですか？」
　花音が樫塚に尋ねると、樫塚は怪訝そうに頷いた。
「そうですか。あ、お茶とか入れるなら私、何かお手伝いしますよ。」
　キッチンへ花音が樫塚と共に入ると樫塚はキッチンの戸棚を開けながら少し考える。
「えっと、じゃあ、机の上のゴミをお願いします。」
　樫塚に頼まれた花音は人の好さそうな笑顔で頷いた。