「しかし、わからんな。」
　鑑識や目暮警部と共に小五郎が現場を観察している。
「何でこの男は、ここに樫塚さんを連れ込んだりしたんだね？　彼女が持っていた鍵が、どこのコインロッカーの鍵かを聞き出したかっただけなんだろ？」
「そうですね、拳銃で彼女を脅して場所を移動させて尋問することも出来たのに。スタンガンで彼女を気絶させ、ガムテープで拘束していたという事は、しばらくここに立て籠もる気だったようですし…」
「ウム。挙句の果てに拳銃自殺だからな…。」
　目暮と小五郎の死角になるところでコナンと花音が二人の話を聞きながら、現場を鋭い瞳で観察する。
「まぁ、この毛利小五郎が予想以上に早く戻ってきたから、逃げ切れないと観念したってところでしょう。」
　小五郎の自慢げな話し方に花音とコナンは苦笑いした。
なんせ小五郎が事務所に戻ったのは花音たちが事務所に戻らなければいけないことに気が付いたからだ。
　現場の観察を終え、ソファで座っている樫塚の元へ目暮、小五郎、花音、コナンが戻り、質問を投げかける。
「す、すごく焦っていたみたいです。早くそのコインロッカーを見つけないと、ヤバいとか言ってましたから。」
「しかしねぇ、樫塚さん、あなたは本当にあの男に見覚えは無いのかね？」
　目暮の疑問は最もで、この場にいる全員が考えていたが、樫塚は、見覚えは無いという。
「あの男の目的が遺品である鍵だったのなら、お兄さんの知り合いの可能性が高いんだが。」
　目暮と視線を合わせていた樫塚は申し訳なさそうに肩をすくめた。
「…兄の友人にはあまり会った事がないので…。」
「ちなみにお兄さんは、何で亡くなったんですか？」
　涙ぐむ樫塚に安室が近寄り、質問を投げかけたが、樫塚は無反応だ。
「？」
　樫塚の無反応に安室と、それを見ていた花音は首を傾げた。
「お兄さんの死因は？」
「えっ！？」
　ようやく安室に質問されていることに気が付いた樫塚だったが、何を聞かれたのかまでは聞き取れなかったようで、聞き返す。
「亡くなったお兄さんの死因は？」
「あ、はい、四日前に事故で…。」
　樫塚はそういうなりケータイを出して、安室に待ち受け画面を見せた。
「へぇ、待ち受けにするくらい仲が良いんですね。」
　花音とコナンは樫塚の隣に写っている“兄”にどこか既視感を感じるのだった。