その頃花音と祐一は昼食食べるために東都タワーから五分程のカフェに来ていた。
「時間の割に混んでないんだな。」
「この間、オヒルナンデス！で特集組まれてたから混んでると思ってました。でも良かったですね。」
「そうだな。ところで何食べたい？俺が呼び出したんだから、ここは俺が払うから好きなもん食べろよ。」
祐一がそう言うと花音は目を輝かせた。
「本当ですか！じゃあ、トマぽてパスタと、レタスサラダと、デザートにキャラメルチョコレートケーキで！」
「飲み物は？」
「キャラメル・マキアートで！」
花音の注文に笑いながら祐一は自分も注文を決めた。
「じゃあ、俺はエビとレモンのクリームのパスタとポテトサラダと、カヌレ。あと、アイスコーヒーもお願いします。」
注文を受けた店員が厨房へ去るなり、祐一が爆笑した。
「アハハッ相変わらず花音は高カロリーなもんばっかり食べるなぁ。さっきも水族館でパンケーキ食べたばっかりなのに！遠慮なんて要らないから良いんだけどさ。でもよくそんなに食べて太らないよなあ。・・・まさかとは思うけど、自炊、してないのか？」
祐一の言葉に花音は苦笑いした。
「幾ら何でも普段はここまでじゃないですよ。
だってこんなに常に食べてたら周りの人に引かれちゃうし、それに今は部活の助っ人とかしてるから高カロリーなものいっぱい食べても太らないんですぅ～！それに、ちゃんと自炊もしてます。お弁当だって作ってるし、そりゃ、疲れてたり面倒な日は外食とかインスタントとかですけど。」
花音が少しむくれながら言うと今度は祐一が苦笑いした。
「悪い悪い、自炊とか、部活頑張ってるんだな。・・・で？なに、まだ“真壁さん”やってんのか。」
祐一に言われ、花音はギクッとした。
「その様子じゃまだやってるんだ。」
祐一の言った“真壁さん”とは所謂外面完璧な花音の事である。
才色兼備で、眉目秀麗で、誰にでも優しい人を“演じている”花音を祐一が“真壁さん”と呼んでいる。
「たまにですよ。初対面の人とか、先生とか。第一に、これ見破ったの祐一先生くらいなんですよ。」
「まあ、花音は花音なんだし、そんな演じる必要ないと思うけどな。わざわざ演じなくても花音はそのままで十分良い子だし、凄く素敵な女の子だと俺は思ってるよ。」
祐一の言葉に花音は目を一瞬見開き、顔を赤くした。
花音が言葉を紡ごうとすると、丁度料理が来た。
「お待たせいたしました、トマぽてパスタと、エビとレモンのクリームパスタと、レタスサラダと、ポテトサラダと、キャラメルチョコレートケーキとカヌレとキャラメル・マキアートと、アイスコーヒーです！」
持ってこられた後すぐに二人はパスタを食べ始めた。
「わぁ、美味しいですね！ポアロとコロンボと同じくらい！」
「コロンボはよく聞くけど、ポアロって、確か毛利のとこの下の店だったか？あの店パスタ有名だったのか。」
「そうなんです、前も普通に美味しかったんですけど、さっき言った安室さんがお店に入ってからはもっと美味しくなって。あ、中でも美味しいのはハムサンドなんですよ。市販なんて目じゃないくらい美味しくて。作り方も教えてもらったんです！」
花音がとても嬉しそうに話すので祐一も微笑みながら話を聴いた。