片目が義眼、沢山あるRUMの情報の中でもこれはほぼ確かだと言われている。
「えぇ、ですがどうして急に真壁さんについて調べろと仰ったんですか？」
言うべきかどうか悩んだが、調べてもらった以上黙っているわけにはいかないか、と思い俺は風見に“彼女”の事を話す事にした。
「ここにある、娘の真壁　花音と思われる女子高生が、今安室として潜っているポアロに現れた。」
「それは・・・本当に真壁さんの娘さんなのでしょうか？」
「まぁまず本物だろうな。写真の真壁警視正にそっくりな顔立ちだった。それに真壁警視正が亡くなった後大阪の祖父母の家にいたそうだし、変装という事は無いと思う。誰の得にもならないからな。」
そして、俺は風見に彼女の将来の夢の事を話した。
「キャリアでゼロ狙いですか、凄いですね。」
「まあ、ゼロは常に人員不足だからな。」
それに彼女がゼロに入ったら面白そうだなと思いながら頷いた。
「その真壁さんは頭良いんですか？」
「あぁ、凄いぞ。いつも誰かしらに勉強教えているらしいし、運動能力もなかなからしい。本人自身部活には所属していないんだが、色々な部活に助っ人として参加しているよ。今はバドミントンだし、前は空手だったんだと。それに・・・。」
俺が言葉を切ったことに風見は首を傾げた。
「それに・・・？」
「昨日、ストーカーを倒す時の身のこなしもなかなかだった。」
まさかあんな涼しい顔で意識を奪うとは思わなかった。
鳩尾を殴って意識を奪うという技は素人には勿論、長年訓練した者にも難しいと言われている。
鳩尾を殴る、と言っても微妙な力加減と、的確な場所を狙う為の力が必要だ。
「ストーカー、ですか。というか身のこなしって、何をしたんですか。」
「ストーカーの男の鳩尾を殴って一瞬で意識を奪ったんだよ。普通じゃできないな。」
「ストーカーという事にも驚きですが、意識を奪うほどに的確とは・・・。」
風見は少し顔を歪ませた。
「美人だし、愛想もそこそこ良いからな。勿論それイコールストーキングされる、と言う訳ではないがな。・・・この真壁警視正も綺麗な顔立ちだな。彼女の母親は知らないが、顔は少なくとも父親似だよ。真壁警視正の顔をもう少し女性的にした感じ、というかな。」
すると俺の“美人”という言葉に反応していたであろう周りにいた奴らが食いついてきた。
「美人！？美人JKと会ってるんですか、降谷さん！」
「くっそ、俺もお近づきになりたい！」
「写真とか無いですか！」
「ミニスカですか！」
「黒髪ロング希望！」
「スタイルは！スタイル！」
そう言いながら“ゼロ”の仲間がにじり寄ってきた。
男所帯だし、仕事も忙しくて出会いが無いのも分かるが・・・。
「暑苦しい！さっさと仕事に戻れ！」
俺が怒号を飛ばすと皆ぶつくさ言いながら仕事に戻った。
「そんなに美人なんですか？」
今度は声を抑えて風見が聞いてきた。
「見た目はな。ストーカー慣れ、と言って良いのかは分からないが、対処も手慣れていた。
見た目は確かに目を瞠る程だが、性格はなかなかだったな。」
俺がそう言うと、風見は顔を引き攣らせた。
「ストーカー慣れとは・・・。それに、性格、悪いんですか？」
風見に聞かれ俺は言葉に詰まった。
確かに性格は少し捻くれていると思うし、普段の演じている彼女からは殆ど感じないが、別に悪くはないか。むしろ・・・。
「悪くはない。というか、誰かに似ていると思ってたんだが、あれは僕だな。多分、僕に似ているんだ。」
“安室　透”を演じている俺。
“良い人”を演じている彼女。
冷静に物事を分析し、行動する。
「ふ、降谷さんにですか！？」
風見が驚愕した顔を俺に向けてきた。
公安として顔に出やすいのはどうかと思うが敢えて今は指摘しないでおいた。
「あぁ、何だ、やっぱり性格悪いじゃないかとでも思ったか。」
笑いながら聞くと風見は全力で首を横に振った。
「ち、違います！ただ、自分も会ってみたいな、と。」
「機会があれば会うんじゃないか？風見は警視庁の公安部の人間でゼロのように一切の顔出しが出来ないわけではないんだからな。」