根っこ広場
アライグマくんがどんぐり池のすぐそばまでやってきたときです。こちらへ向かってくる灰色の大きなけものをみつけました。あれがきっと、オオカミにちがいありません。
アライグマくんは大あわてで近くにあった木の後ろにかくれると、ようすをうかがいました。どうやらオオカミは、どんぐり池から帰かえっていくようです。
アライグマくんがどんぐり池の方をふり返かえると、ちょこちょこと動うごき回っているリスくんの姿が小さく見えました。大きなけがはしていないようです。
そこでアライグマくんは、木のかげにかくれながら、オオカミのあとを追うことにしてみました。
オオカミはアライグマくんに気づかないまま、森のはしっこのオンボロ橋までやってきました。
ガタゴトと音をひびかせながらゆっくりと橋の向こうへ渡っていきます。
らんぼうもののオオカミがこの森に入ってこないようにというねがいごとは、どうしてきかなくなってしまったのでしょう。
オオカミが橋の向こうへすっかり渡ってしまうのをみとどけると、アライグマくんは木のかげからすがたをあらわし大きな声で|よびかけました。
「やいっ! オオカミ!」
オオカミはたちどまり、それからゆっくりと振り返ります。
暗くなりはじめた森のなかで、オオカミの目がギラリと光りました。アライグマくんはゴクリとつばをのみこみます。けれどもありったけのゆうきをふりしぼり、しっかりと大地をふみしめました。
「らんぼうもののオオカミは、この森へ入れないはずだぞ! オマエ、どうやったんだ!」
それから、オオカミにまけないように目をつり上げてにらみ返します。
オオカミは答えません。わずかに鼻にシワがより、口元からキバがのぞきました。
アライグマくんは体中からどっと汗がふき出しましたが、なんとか平気なふりをしました。
「もう、この森へ入ってくるんじゃないぞ! いいか! こんど来やがったら、オレサマがただじゃおかないからな!」
それだけ言うと、アライグマくんはくるりとオオカミに背を向けて、ものすごいいきおいで走リ出しました。ぜんりょくで、根っこ広場までいちもくさんです。
暗くなった根っこ広場には、まだ森の仲間たちがアライグマくんの帰りを待っていてくれました。
「アライグマくん! どうだった?」
ヘビが広場の入り口で待ちかまえていました。
キツネさんは、まだないているクマさんの背中をなでています。コマドリさんもクマさんの肩にとまってなぐさめていたみたいです。
アライグマくんはゼイゼイというあらい息の中から「お、おう!」と、なんとかへんじをしました。
「オレサマが、もう、この森に、来るんじゃねえぞって……ゼイゼイ……言っておいて、やったぜ!……ゼイゼイ……それに、リス公もぶじだったぜ……ゼイゼイ」
「ほ、ほんとう?」
クマさんはアライグマくんのことばをきいて、ようやく泣きやみました。
「まあ、よかったですわね、クマさん」
キツネさんがクマさんの背中をさすります。
「でもちょっとまって!」
クマさんのかたの上で、コマドリさんがさえずりました。
「そう言われたからって、アイツがもうこの森に来ないとはかぎらないんじゃないの?」
「まあ、たしかにそうだな」
「じゃあ、どうしたらいいのかしら?」
「どうして? どうして? らんぼうもののオオカミは入ってこられないはずじゃないの?」
「それだぜ!」
なみだ目でうったえたクマさんをアライグマくんがビシッと指さしました。
「きっと、ねがいごとの力が弱まったんだ!」
「そんな……」
森の仲間たちは、それからたくさんたくさんそうだんしました。
強力で、大きなねがいをかけるには、みんなの気もちと、たくさんのどんぐりがひつようなのです。
夏は終わりましたが、まだどんぐりは青いままで、森の中に落ちていません。たくさんのどんぐりを手に入れるためには、リスくんがきょねんの秋にあつめたどんぐりを、わけてもらわなくてはいけません。それに、そのどんぐりをぜんぶ使ってしまったら、しばらくはねがいごとができなくなってしまいます。
どうしたらいいのでしょう。
みんないろいろないけんを言いました。
夜がふけたころ、ようやくみんなの気持ちがまとまりました。
「じいさんたちができたんだ、オレサマたちに、できないわけがないさ!」
アライグマくんが立ち上がります。
「そうですわね」
「しばらくねがいごとはできなくなっちまうのか……」
「ちょっと! いまさらなに言ってるのよ! 逆さ虹の森のピンチなのよ。アンタのちっぽけなねがいごとなんて、どうでもいいわよ!」
「ほ、ほんとうに、うまくいくかなあ?」
「いくともさ!」
アライグマくんは大きく手をふって、根っこ広場を出ていきました。
少し行った先でふり返ると「早くついてこいよ!」と、みんなによびかけます。
コマドリさんとヘビくんは大きなクマさんのかたにのりました。
コマドリさんはとぶことができますが、夜になると、よく目が見えなくなってしまうのです。
そうしてみんなはいちれつにならぶと、リスくんのおうちを目指してあるきはじめました。
アライグマくんは大あわてで近くにあった木の後ろにかくれると、ようすをうかがいました。どうやらオオカミは、どんぐり池から帰かえっていくようです。
アライグマくんがどんぐり池の方をふり返かえると、ちょこちょこと動うごき回っているリスくんの姿が小さく見えました。大きなけがはしていないようです。
そこでアライグマくんは、木のかげにかくれながら、オオカミのあとを追うことにしてみました。
オオカミはアライグマくんに気づかないまま、森のはしっこのオンボロ橋までやってきました。
ガタゴトと音をひびかせながらゆっくりと橋の向こうへ渡っていきます。
らんぼうもののオオカミがこの森に入ってこないようにというねがいごとは、どうしてきかなくなってしまったのでしょう。
オオカミが橋の向こうへすっかり渡ってしまうのをみとどけると、アライグマくんは木のかげからすがたをあらわし大きな声で|よびかけました。
「やいっ! オオカミ!」
オオカミはたちどまり、それからゆっくりと振り返ります。
暗くなりはじめた森のなかで、オオカミの目がギラリと光りました。アライグマくんはゴクリとつばをのみこみます。けれどもありったけのゆうきをふりしぼり、しっかりと大地をふみしめました。
「らんぼうもののオオカミは、この森へ入れないはずだぞ! オマエ、どうやったんだ!」
それから、オオカミにまけないように目をつり上げてにらみ返します。
オオカミは答えません。わずかに鼻にシワがより、口元からキバがのぞきました。
アライグマくんは体中からどっと汗がふき出しましたが、なんとか平気なふりをしました。
「もう、この森へ入ってくるんじゃないぞ! いいか! こんど来やがったら、オレサマがただじゃおかないからな!」
それだけ言うと、アライグマくんはくるりとオオカミに背を向けて、ものすごいいきおいで走リ出しました。ぜんりょくで、根っこ広場までいちもくさんです。
暗くなった根っこ広場には、まだ森の仲間たちがアライグマくんの帰りを待っていてくれました。
「アライグマくん! どうだった?」
ヘビが広場の入り口で待ちかまえていました。
キツネさんは、まだないているクマさんの背中をなでています。コマドリさんもクマさんの肩にとまってなぐさめていたみたいです。
アライグマくんはゼイゼイというあらい息の中から「お、おう!」と、なんとかへんじをしました。
「オレサマが、もう、この森に、来るんじゃねえぞって……ゼイゼイ……言っておいて、やったぜ!……ゼイゼイ……それに、リス公もぶじだったぜ……ゼイゼイ」
「ほ、ほんとう?」
クマさんはアライグマくんのことばをきいて、ようやく泣きやみました。
「まあ、よかったですわね、クマさん」
キツネさんがクマさんの背中をさすります。
「でもちょっとまって!」
クマさんのかたの上で、コマドリさんがさえずりました。
「そう言われたからって、アイツがもうこの森に来ないとはかぎらないんじゃないの?」
「まあ、たしかにそうだな」
「じゃあ、どうしたらいいのかしら?」
「どうして? どうして? らんぼうもののオオカミは入ってこられないはずじゃないの?」
「それだぜ!」
なみだ目でうったえたクマさんをアライグマくんがビシッと指さしました。
「きっと、ねがいごとの力が弱まったんだ!」
「そんな……」
森の仲間たちは、それからたくさんたくさんそうだんしました。
強力で、大きなねがいをかけるには、みんなの気もちと、たくさんのどんぐりがひつようなのです。
夏は終わりましたが、まだどんぐりは青いままで、森の中に落ちていません。たくさんのどんぐりを手に入れるためには、リスくんがきょねんの秋にあつめたどんぐりを、わけてもらわなくてはいけません。それに、そのどんぐりをぜんぶ使ってしまったら、しばらくはねがいごとができなくなってしまいます。
どうしたらいいのでしょう。
みんないろいろないけんを言いました。
夜がふけたころ、ようやくみんなの気持ちがまとまりました。
「じいさんたちができたんだ、オレサマたちに、できないわけがないさ!」
アライグマくんが立ち上がります。
「そうですわね」
「しばらくねがいごとはできなくなっちまうのか……」
「ちょっと! いまさらなに言ってるのよ! 逆さ虹の森のピンチなのよ。アンタのちっぽけなねがいごとなんて、どうでもいいわよ!」
「ほ、ほんとうに、うまくいくかなあ?」
「いくともさ!」
アライグマくんは大きく手をふって、根っこ広場を出ていきました。
少し行った先でふり返ると「早くついてこいよ!」と、みんなによびかけます。
コマドリさんとヘビくんは大きなクマさんのかたにのりました。
コマドリさんはとぶことができますが、夜になると、よく目が見えなくなってしまうのです。
そうしてみんなはいちれつにならぶと、リスくんのおうちを目指してあるきはじめました。