根っこ広場
グレイとさようならをしたリスくんが、そろそろお家にかえろうと池にせなかを向けたときです。
ピュルリリリリリリリ!
するどく高いなき声があたりにひびきわたりました。
「あ! やっぱりコマドリさんだ!」
コマドリさんは空の上からまっすぐにおりてくると、リスくんのそばの枝にとまりました。
「ちょっとリスくん、キミ今、オオカミに追いかけられてなかった!?」
リスくんはコマドリさんのあまりのけんまくにびっくりして、はじめはなにを言われたのか、よくわかりませんでした。でも、じわじわとコマドリさんの言ったことばのいみが、頭の中に広がっていきます。
「え? オオカミ?」
「そうよ! 灰色の、大きなオオカミだったじゃない? だいじょうぶなの!?」
「ち、ちがうよ。オオカミじゃないよ。グレイだよ。それに、あそんでただけだから……」
「あ、あそんでたですって? グレイって……」
コマドリさんはいっしゅんふらりと枝からおちそうになりました。
「あいつがそういったの? 自分はグレイだって??」
「そ、そうだよ」
「ばかね。アンタといっしょにいた、アイツがオオカミなのよ。グレイなんてなまえの動物はいないわよ」
「そんなバカな……だって、この森にオオカミは入れないんじゃなかった?」
「そ、それはそうだけど……」
かみつきそうないきおいだったコマドリさんのことばがとぎれました。
「ね? きっとまちがいだよ。オオカミににた動物なんだよ」
「チィーチリリリリリリ! まちがうわけないわ。アタシ、まえに空からオンボロ橋の向こうのオオカミ山をのぞきに行ったことがあるのよ! アイツはまちがいなくオオカミよ!」
「だってだって! オオカミっていったららんぼうものの、ワルモノのなんだろう? グレイはやさしいよ。おそうじも手伝ってくれたし、道をふさいでいた木もかたづけてくれたし、明日だって……」
「明日ですって?」
コマドリさんのひとみがきらりんと光りました。
「明日もアイツ、この森に来るの?」
「だって、ボクたち友だちになったんだ。明日だってあさってだって、いっしょにあそぶんだよ!」
「なんてことッ!」
コマドリさんはつばさをはためかせて、空高くとびさっていってしまいました。
コマドリさんは空の上をとび回りながら「なんてこと! なんてこと!」と、つぶやいていました。
この森に住む動物なら、オオカミのうわさを知らないものはいないのです。
コマドリさんは空中をあっちに行ったりこっちに行ったりしながら、逆さ虹の森のなかまたちに声をかけました。
「たいへん! たいへんよ! みんな、根っこ広場にあつまってちょうだい! ピュルリリリリリリリ!」
コマドリさんの声に、なかまたちはみんな、根っこ広場にあつまってきました。
逆さ虹の森では、話し合いは根っこ広場と決まっています。
この根っこ広場は、逆さ虹の森のふしぎな場所のひとつです。なにしろ、ウソをつくと根っこがむくむくと動き出し、ウソをついたものを地面の下に引きずり込んでしまうのです。
こわいのですが、話し合いにはもってこいの場所です。なにしろ、ウソがつけないのですから。
「いったいぜんたい、何だって言うんだよ。オレサマ、そろそろ家に帰ろうとしてたんだぞ!」
ブツブツ文句を言いながらやってきたのは、アライグマくんです。
「ホントだぜ。もう腹ぺこなんだよ」
キュルキュルとおなかをならしながらやってきたのはヘビくんです。
「まあまあみなさん? 大変なことが起きたのですもの、しかたありませんわ」
キツネさんはソワソワとしながらやってきました。
その後ろから大きな体のクマさんが「た、たいへんって、どういうこと? ねえ、こわくない?」と、ビクビクしながら顔を出します。
クマさんはからだをちぢこまらせて、キツネさんの後ろにかくれようとしているみたいでしたが、キツネさんよりずうっと大きいので、どうがんばってもかくれることができません。
みんなが地面からとび出した根っこの上にこしをかけました。
「みなさんセイシュクに!」と、コマドリさんが木の上から声をはりあげました。
「オオカミよ、オオカミが来たの。どんぐり池で、リスくんといっしょにいたのよ」
「オオカミだって?」
「う……ウソだよ。オオカミはこの森に入れないって……きいてるよ」
「ああ、オレたちのじいさんがげんきだったころ、オオカミがこの森で好きほうだいしたから、じいさんたちがありったけのどんぐりをどんぐり池に投げ入れて、らんぼうもののオオカミがこの森に入れないようにお願いしたんじゃなかったっけ?」
「そうね、もっと昔はオオカミたちもこの森で仲良く暮らしてたらしいけれど……」
「いまじゃ、みんなの願いの力で、オンボロ橋を渡れないってきいてるぜ?」
「みまちがいじゃないんですか?」
「そ、そうだよ、オオカミなんて見たことないんだし……」
コマドリさんはみんなの声にキーーーーッッと、耳のいたくなるようなするどい声をあげました。
「なんですって? アタシは空を飛べるのよ。オオカミ山をのぞいたことだってあるわ。あれはオオカミよ!」
コマドリさんはそういいましたが、森のなかまたちは顔を見合わせるばかり。誰も本気にしてくれません。
「わかったわ。オオカミは明日もどんぐり池に来るんですって。だれか見に行けばいいんだわ。見てきたら根っこ広場にほうこくに来てちょうだい!」
「なるほど、わかりましたわ。では明日、私が行ってみましょう」
キツネさんが言いました。
「うーん。じゃあ、オレも一緒に行くぜ!」
ヘビくんも言いました。
「じゃあ、明日も根っこ広場に集合よ! キツネさんとヘビくんは、どんぐり池にオオカミが来てるのを、ちゃんとかくにんしてきてちょうだい!」
コマドリさんはプンプンと怒りながらとびさっていきました。
ピュルリリリリリリリ!
するどく高いなき声があたりにひびきわたりました。
「あ! やっぱりコマドリさんだ!」
コマドリさんは空の上からまっすぐにおりてくると、リスくんのそばの枝にとまりました。
「ちょっとリスくん、キミ今、オオカミに追いかけられてなかった!?」
リスくんはコマドリさんのあまりのけんまくにびっくりして、はじめはなにを言われたのか、よくわかりませんでした。でも、じわじわとコマドリさんの言ったことばのいみが、頭の中に広がっていきます。
「え? オオカミ?」
「そうよ! 灰色の、大きなオオカミだったじゃない? だいじょうぶなの!?」
「ち、ちがうよ。オオカミじゃないよ。グレイだよ。それに、あそんでただけだから……」
「あ、あそんでたですって? グレイって……」
コマドリさんはいっしゅんふらりと枝からおちそうになりました。
「あいつがそういったの? 自分はグレイだって??」
「そ、そうだよ」
「ばかね。アンタといっしょにいた、アイツがオオカミなのよ。グレイなんてなまえの動物はいないわよ」
「そんなバカな……だって、この森にオオカミは入れないんじゃなかった?」
「そ、それはそうだけど……」
かみつきそうないきおいだったコマドリさんのことばがとぎれました。
「ね? きっとまちがいだよ。オオカミににた動物なんだよ」
「チィーチリリリリリリ! まちがうわけないわ。アタシ、まえに空からオンボロ橋の向こうのオオカミ山をのぞきに行ったことがあるのよ! アイツはまちがいなくオオカミよ!」
「だってだって! オオカミっていったららんぼうものの、ワルモノのなんだろう? グレイはやさしいよ。おそうじも手伝ってくれたし、道をふさいでいた木もかたづけてくれたし、明日だって……」
「明日ですって?」
コマドリさんのひとみがきらりんと光りました。
「明日もアイツ、この森に来るの?」
「だって、ボクたち友だちになったんだ。明日だってあさってだって、いっしょにあそぶんだよ!」
「なんてことッ!」
コマドリさんはつばさをはためかせて、空高くとびさっていってしまいました。
コマドリさんは空の上をとび回りながら「なんてこと! なんてこと!」と、つぶやいていました。
この森に住む動物なら、オオカミのうわさを知らないものはいないのです。
コマドリさんは空中をあっちに行ったりこっちに行ったりしながら、逆さ虹の森のなかまたちに声をかけました。
「たいへん! たいへんよ! みんな、根っこ広場にあつまってちょうだい! ピュルリリリリリリリ!」
コマドリさんの声に、なかまたちはみんな、根っこ広場にあつまってきました。
逆さ虹の森では、話し合いは根っこ広場と決まっています。
この根っこ広場は、逆さ虹の森のふしぎな場所のひとつです。なにしろ、ウソをつくと根っこがむくむくと動き出し、ウソをついたものを地面の下に引きずり込んでしまうのです。
こわいのですが、話し合いにはもってこいの場所です。なにしろ、ウソがつけないのですから。
「いったいぜんたい、何だって言うんだよ。オレサマ、そろそろ家に帰ろうとしてたんだぞ!」
ブツブツ文句を言いながらやってきたのは、アライグマくんです。
「ホントだぜ。もう腹ぺこなんだよ」
キュルキュルとおなかをならしながらやってきたのはヘビくんです。
「まあまあみなさん? 大変なことが起きたのですもの、しかたありませんわ」
キツネさんはソワソワとしながらやってきました。
その後ろから大きな体のクマさんが「た、たいへんって、どういうこと? ねえ、こわくない?」と、ビクビクしながら顔を出します。
クマさんはからだをちぢこまらせて、キツネさんの後ろにかくれようとしているみたいでしたが、キツネさんよりずうっと大きいので、どうがんばってもかくれることができません。
みんなが地面からとび出した根っこの上にこしをかけました。
「みなさんセイシュクに!」と、コマドリさんが木の上から声をはりあげました。
「オオカミよ、オオカミが来たの。どんぐり池で、リスくんといっしょにいたのよ」
「オオカミだって?」
「う……ウソだよ。オオカミはこの森に入れないって……きいてるよ」
「ああ、オレたちのじいさんがげんきだったころ、オオカミがこの森で好きほうだいしたから、じいさんたちがありったけのどんぐりをどんぐり池に投げ入れて、らんぼうもののオオカミがこの森に入れないようにお願いしたんじゃなかったっけ?」
「そうね、もっと昔はオオカミたちもこの森で仲良く暮らしてたらしいけれど……」
「いまじゃ、みんなの願いの力で、オンボロ橋を渡れないってきいてるぜ?」
「みまちがいじゃないんですか?」
「そ、そうだよ、オオカミなんて見たことないんだし……」
コマドリさんはみんなの声にキーーーーッッと、耳のいたくなるようなするどい声をあげました。
「なんですって? アタシは空を飛べるのよ。オオカミ山をのぞいたことだってあるわ。あれはオオカミよ!」
コマドリさんはそういいましたが、森のなかまたちは顔を見合わせるばかり。誰も本気にしてくれません。
「わかったわ。オオカミは明日もどんぐり池に来るんですって。だれか見に行けばいいんだわ。見てきたら根っこ広場にほうこくに来てちょうだい!」
「なるほど、わかりましたわ。では明日、私が行ってみましょう」
キツネさんが言いました。
「うーん。じゃあ、オレも一緒に行くぜ!」
ヘビくんも言いました。
「じゃあ、明日も根っこ広場に集合よ! キツネさんとヘビくんは、どんぐり池にオオカミが来てるのを、ちゃんとかくにんしてきてちょうだい!」
コマドリさんはプンプンと怒りながらとびさっていきました。