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どんぐり池

 グレイがむくりとおき上がりました。

「なあ、リスくん。なにかてつだうことはないかい? 落ち葉のふとんのおれいをさせてほしいんだが……」

「え? おれいなんていいよ」

「いやいや! こんなによくねむれたのは久しぶりなんだ。さいきんねむれなくてこまってたのさ。なにがなんでてつだいをさせてもらわなくちゃな」

「仕事っていっても、まい朝池のまわりのおそうじをするくらいなんだ。あ! そうだ。じゃあさ、もう少しして、森が赤や黄色になったら、落ち葉やどんぐりを集めなくちゃならないから、とっても忙しくなるんだ。だからそのときにおてつだいを頼んでもいい?」

 リスくんのていあんに、グレイは「よしきた! まかせておけ!」と、ガッツポーズをすると「またな!」と手をふってかえっていきました。

 リスくんのきょうのおしごともおしまいです。

 日がくれる前に、お家にかえらなくてはいけません。

 けっきょくその日「どんぐり池」にやってきたおきゃくさまは、グレイだけでした。

 しかたありません、こんな日もあります。というより、おきゃくさまの来ない日のほうが多いくらいなのです。

 でも、おきゃくさまはいつ来るかわかりませんから、おしごとを休むわけにはいきません。

 次の日もリスくんはおひさまがのぼると、元気に「どんぐり池」にむかいました。


 えっさっさ ほいさっさ
 きょうもおしごと えっさっさ
 おいけのそうじだ ほいさっさ
 みんなのおねがい かなうといいな!


 きょうも調子はずれの歌をうたっていますよ。きのうの歌とよくにていますが、ちょっとちがいますね。リスくんの歌は、リスくんの気分で少しずつかわるのです。

 池のそばまでやってきたリスくんは「あれ?」と首をかしげました。

 池のまわりを忙しそうに行き来するだれかのすがたが見えたからです。
 
「もうおきゃくさまがいらしてるのかな?」

 ちかづくと、そのだれかさんは、大きな灰色のすがたをしています。

「グレイ!!」

 リスくんは大きな声でよびかけると、かけよりました。

「よう! おはようリスくん」

「どうしたの!? グレイ! やっぱりおねがいごとができたの?」

「いや、ちがうよリスくん。おれいのてつだいをするっていったじゃないか」

「え……」

「なんだ、めいわくだったかい?」
 
 グレイのふさふさのしっぽが、しゅんとたれさがっています。

「そんなことないよ!」

「よっし! じゃあ、あっちにたおれた木があったから、かたづけてくるよ」

 グレイはスタスタと、森の中へと入っていきました。

 池へとつづく道の一つに、木がたおれていたのですが、とおれないほどではないし、リスくんにはどうしようもないので、そのままにしてあったのです。

 たしかにあの木をどかしてくれれば、とってもたすかります。
 
(グレイって、大きくて力持ちで、気がきいて、ステキなひとだなあ)

 とリスくんは思いました。

 木を片づけて小屋に戻ってきたグレイは、横になると、すぐに寝てしまいました。

 きのう出会ったときのように「ぐがおぅ、ぐがおぅ」と、いびきをかいています。

「よくねむるなあ」

 リスくんはきのうのように、落ち葉のふとんをかけてあげます。するとやっぱりいびきは少し小さくなるみたいです。

 リスくんはグレイがぐっすりと眠っているのをかくにんすると、森の中へと入っていきました。

 ◇ 

 グレイはずいぶんと長い間ねていました。

 なにしろこのところ夜になってもよくねむれなかったのです。

 どんなにガンバってもねむれないものですから、あきらめていたグレイですが、きのうリスくんにあたたかいふとんをかけてもらった後は、ぐっすりとねむることができたのでした。

 きょうはふとんのおれいに、道をふさいでいた木のかたづけをして、小屋でひと休みしようと横になったとたんに、ぐうぐうねてしまいました。ふしぎなことです。

 ユメの中で、リスくんがふとんをかけてくれたような気がします。

 いったいどれだけねむったのでしょうか。

 はっとして、目をさますと、リスくんの顔がめのまえにありました。

「おはようグレイ!」

「おう、おはよう……」

 起きたグレイは、リスくんの手が赤いことに気がつきました。
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