逆さ虹の森
せんとうは、ヘビくんを体に巻きつけたアライグマくんです。左手には先の尖った石を持って、かべにひっかききずをつけながら歩きます。
「ちっくしょう、根っこがボコボコ出てやがる。印がうまくつかねえな。みんなも印を見落とさないようにしろよ!」
アライグマくんの後ろにはくまさんが、くまさんの後ろからはキツネさんが歩いています。
一番うしろは、りすくんを肩にのせたグレイです。
しばらく歩いたときでした。
「ねえねえ、そこの根っこの形、さっきも見たみたいだよ」
と、くまさんが言いました。
「な、なんだと!?」
アライグマくんがかべを確かめます。
みんなもあわてて壁をさわりながら、石のひっかききずがないか探します。
「あ! ありますよ。ひっかききずみたいのが、ありますわ」
キツネさんの声を聞いたくまさんが「ぐすっ!」と鼻をすすりはじめました。
「お、同じところを回ってるんだ! きっと、迷路から出れないんだよう」
そんなくまさんにイライラとしていたアライグマくんは手をふり上げながら「ぐずぐずなくんじゃねえ!」と、どなりました。
パシッという音がして、りすくんは思わず顔を手でおおいましたが、くまさんの泣き声は聞こえてきません。
おそるおそる顔をあげると、アライグマくんが振り上げた手の中から、グレイがとがった石をもぎ取っていました。
「よし。じゃあこんどは右側のかべづたいに行ってみよう。ぐるぐる回ってるところなんて、そうそうないはずだ。きっと出られるさ」
もぎ取った石を手に、グレイは右のかべに傷をつけながら歩き始めました。
「ちっ、じゃあオレがしんがりをつとめてやるよ。ほら、クマ子、ぴーぴーないてたらおいてくぞ。早く立てよ」
おいていかれては大変です。くまさんは立ち上がり、また歩き始めました。
「くまさん、よく見つけてくれましたわね。おてがらですわ」
「まああれだ、くまさんはきおくりょくがいいんだぜ、な?」
キツネさんとヘビくんが言うと、アライグマくんは「フン。まあ、助かったよ」と、ちょっと小さい声でくまさんの背中に言いました。
「あの……あの……」
足を早めたくまさんが、グレイに追いつきました。
「なんだい?」
くまさんから声をかけたというのに、グレイがふり向くとくまさんはピキンとかたまってしまってしまいます。まだグレイのことがこわいのでしょうか。
「また、なにか見つけたのかい?」
しんぼうづよく、グレイはくまさんのことばを待っていました。
「う……ううん」
けれどもくまさんはプルプルと首をふると、うつむいてしまいました。
「そうか、ならいいが。さっきは助かった。また何か見つけたら教えてくれ」
グレイはくまさんに背中を向けて、また歩き始めることにしました。
みんな、それからは話もしないで、ただただ歩きました。そして。
「ねえ、なにか音が聞こえない?」
グレイの肩で、あちこちの気配をさぐっていたりすくんが言いました。
立ち止まったグレイが耳をあっちに向けたりこっちに向けたりします。
「ああ、ほんとうだ、聞こえる。こっちだ!」
グレイが早足になります。
森の仲間たちも、グレイにならびます。
「水の音みたいだ!」
「こっちだぜ!」
「あ! 根っこの間から明かりが!」
走っていった先の、壁からもれるまぶしい光に、みんな目を細めました。
アライグマくんがバリバリと根っこと土をほりはじめます。
「ぼやぼやしてんなよ。掘るぞ!」
「うん!」
くまさんもがぜん元気が出てきたみたいです。
みんなで土だらけになって、必死で掘りました。
掘って、掘って、掘って、掘って……。
迷路に差し込む陽の光が強くなっていきます。
聞こえていた水音が、大きくなります。
そして、からだの小さなりすくんが一番さいしょに外に出ました。
「オンボロ橋の下だあ!」
迷路の中の動物たちにも、りすくんのうれしげな声が聞こえてきました。
ヘビくんがりすさんの後に続きました。キツネさん、そしてついにくまさんも出てきます。
最後に、アライグマくんとグレイがしっかり川原の石をふみしめながらいっしょに出てきました。
「やった! やったよ!」
りすくんは笑いながらおどっています。
「やったあ やったよ 橋の下。みんな一緒に外にでた!」
りすくんはおとくいのそっきょうの歌を歌います。
えっさっさ ほいさっさ
みんなで力をあわせれば
めいろなんて ちょちょいのちょいさ
えっさっさ ほいさっさ
まあ、たしょうちょうしは外れていますが。
くまさんは河原にへなへなとすわりこむと、わあわあと泣きはじめました。アライグマくんは、こんどはおこりませんでした。
ヘビくんは川の水を飲んでいました。キツネさんは涙ぐんでいました。
「やったな」
アライグマくんは、ちらりとグレイを横目に見ながら言いました。
「ああ、やったな」
グレイが答えると、二匹は同時ににやりと笑いました。
「ちっくしょう、根っこがボコボコ出てやがる。印がうまくつかねえな。みんなも印を見落とさないようにしろよ!」
アライグマくんの後ろにはくまさんが、くまさんの後ろからはキツネさんが歩いています。
一番うしろは、りすくんを肩にのせたグレイです。
しばらく歩いたときでした。
「ねえねえ、そこの根っこの形、さっきも見たみたいだよ」
と、くまさんが言いました。
「な、なんだと!?」
アライグマくんがかべを確かめます。
みんなもあわてて壁をさわりながら、石のひっかききずがないか探します。
「あ! ありますよ。ひっかききずみたいのが、ありますわ」
キツネさんの声を聞いたくまさんが「ぐすっ!」と鼻をすすりはじめました。
「お、同じところを回ってるんだ! きっと、迷路から出れないんだよう」
そんなくまさんにイライラとしていたアライグマくんは手をふり上げながら「ぐずぐずなくんじゃねえ!」と、どなりました。
パシッという音がして、りすくんは思わず顔を手でおおいましたが、くまさんの泣き声は聞こえてきません。
おそるおそる顔をあげると、アライグマくんが振り上げた手の中から、グレイがとがった石をもぎ取っていました。
「よし。じゃあこんどは右側のかべづたいに行ってみよう。ぐるぐる回ってるところなんて、そうそうないはずだ。きっと出られるさ」
もぎ取った石を手に、グレイは右のかべに傷をつけながら歩き始めました。
「ちっ、じゃあオレがしんがりをつとめてやるよ。ほら、クマ子、ぴーぴーないてたらおいてくぞ。早く立てよ」
おいていかれては大変です。くまさんは立ち上がり、また歩き始めました。
「くまさん、よく見つけてくれましたわね。おてがらですわ」
「まああれだ、くまさんはきおくりょくがいいんだぜ、な?」
キツネさんとヘビくんが言うと、アライグマくんは「フン。まあ、助かったよ」と、ちょっと小さい声でくまさんの背中に言いました。
「あの……あの……」
足を早めたくまさんが、グレイに追いつきました。
「なんだい?」
くまさんから声をかけたというのに、グレイがふり向くとくまさんはピキンとかたまってしまってしまいます。まだグレイのことがこわいのでしょうか。
「また、なにか見つけたのかい?」
しんぼうづよく、グレイはくまさんのことばを待っていました。
「う……ううん」
けれどもくまさんはプルプルと首をふると、うつむいてしまいました。
「そうか、ならいいが。さっきは助かった。また何か見つけたら教えてくれ」
グレイはくまさんに背中を向けて、また歩き始めることにしました。
みんな、それからは話もしないで、ただただ歩きました。そして。
「ねえ、なにか音が聞こえない?」
グレイの肩で、あちこちの気配をさぐっていたりすくんが言いました。
立ち止まったグレイが耳をあっちに向けたりこっちに向けたりします。
「ああ、ほんとうだ、聞こえる。こっちだ!」
グレイが早足になります。
森の仲間たちも、グレイにならびます。
「水の音みたいだ!」
「こっちだぜ!」
「あ! 根っこの間から明かりが!」
走っていった先の、壁からもれるまぶしい光に、みんな目を細めました。
アライグマくんがバリバリと根っこと土をほりはじめます。
「ぼやぼやしてんなよ。掘るぞ!」
「うん!」
くまさんもがぜん元気が出てきたみたいです。
みんなで土だらけになって、必死で掘りました。
掘って、掘って、掘って、掘って……。
迷路に差し込む陽の光が強くなっていきます。
聞こえていた水音が、大きくなります。
そして、からだの小さなりすくんが一番さいしょに外に出ました。
「オンボロ橋の下だあ!」
迷路の中の動物たちにも、りすくんのうれしげな声が聞こえてきました。
ヘビくんがりすさんの後に続きました。キツネさん、そしてついにくまさんも出てきます。
最後に、アライグマくんとグレイがしっかり川原の石をふみしめながらいっしょに出てきました。
「やった! やったよ!」
りすくんは笑いながらおどっています。
「やったあ やったよ 橋の下。みんな一緒に外にでた!」
りすくんはおとくいのそっきょうの歌を歌います。
えっさっさ ほいさっさ
みんなで力をあわせれば
めいろなんて ちょちょいのちょいさ
えっさっさ ほいさっさ
まあ、たしょうちょうしは外れていますが。
くまさんは河原にへなへなとすわりこむと、わあわあと泣きはじめました。アライグマくんは、こんどはおこりませんでした。
ヘビくんは川の水を飲んでいました。キツネさんは涙ぐんでいました。
「やったな」
アライグマくんは、ちらりとグレイを横目に見ながら言いました。
「ああ、やったな」
グレイが答えると、二匹は同時ににやりと笑いました。