オンボロ橋
走るグレイの背にしがみつきながら、りすくんはコマドリさんを見上げると、思い切って声をかけてみました。
「ねえ、いったいぜんたい何がおきたの?」
コマドリさんはすぐには答えませんでしたが、りすくんがもう一度「ねえ?」と声をかけると、しぶしぶ口を開きました。
「きのう、みんなはドングリ池からそれぞれのお家にもどったの。心配事がなくなったので、ゆっくり眠りについたわ。たぶんみんなもそうだったと思うわ。そしてお昼ごろ、またみんなで根っこ広場に集まったのよ」
話を始めると、グレイの走る速さが、すこしゆっくりになりました。グレイもコマドリさんのお話を聞いているのでしょう。
「根っこ広場に集まった後は、出会ったオオカミが、どれほどこわかったか、と言う話になったのよ。アタシが口がとがっていて、すごく大きなキバだったって言えば、こんどはヘビくんがキバをむき出して吠えていたって言うし、キツネさんも、追いかけられて転びそうになったっていうでしょう? そうしたら、クマさんがあいつはりすくんにひどいことをして、ケガをさせたんだよって言うし、アライグマくんも、襲いかかられそうになったけど、オレは逃げなかったんだ、なんて言うわけ」
「なんだって!? オレはそんなことしてないぞ!」
聞いていたグレイが吠えました。
「きゃあ!」
コマドリさんが少し高くとびあがりました。
「ゴメンねグレイ。みんな、ひどいや」
りすくんがグレイをなだめます。
「わかったわよ。なんかあの時はアタシたちも、興奮してたっていうか……どんどん話が大げさになってったっていうか……とにかく! そんな話をしていたら、根っこ広場の根っこが動き始めたのよ」
「あ! そうか!」
「なにがそうなんだ?」
グレイは根っこ広場の不思議な力を知らないようです。だからりすくんが教えてあげました。
「根っこ広場でウソをつくと、根っこに捕まって地下の迷路に閉じ込められちゃうんだよ」
「なるほど」
「そうよ、閉じ込められたまま出てこれなくなっちゃった動物もいるっていう話よ。みんなが無事だといいんだけど」
そんな話をしているうちに、三匹は根っこ広場に着きました。
着いたものの、これからどうしたらいいのか、りすくんにもわかりません。
不規則に盛り上がる根っこの上に立ち、グレイは「ウソをつけばいいんだな?」と、りすくんに聞きました。
「そうだよ」
「よしわかった。オレは、りすくんが大きらいだ」
グレイの乗っていた大きく太い根っこが、ボコボコとものすごい勢いで地面の中からはいでてきました。バランスを崩したグレイは、生き物みたいに地面から突き出してきた細い根っこにがんじがらめにされて、地面の中へと引きずり込まれてしまいました。
「ピーーーーー!」
おどろいたコマドリさんは、今までだれも聞いたことのないような声で鳴いています。
グレイが地面に引きずり込まれる様子を眺めていたりすくんは「なるほど」と、つぶやきました。
「コマドリさんはちょっと待っててね!」
りすくんはグレイが消えていった地面の上に立つと「ボクはグレイなんか大きらいだよ!」と、大きな声で言いました。
コマドリさんのわけのわからない叫び声が、またもやあたりにこだましました。
けれども、りすくんにはその声は聞こえなかったかもしれません。
それほどすばやく根っこが盛り上がると、りすくんを地下の世界へと連れ去ってしまったからです。
後には、気の毒なコマドリさんだけが残されてしまいました。
「どうしようどうしよう。ピュルリリ、ピピ……。根っこの世界からもどってこれなかったら、アタシ一人でどうしたらいいのよう!」
梢の上で、コマドリさんはたった一人、ただただみんなの帰りをまつことしかできないのでした。
「ねえ、いったいぜんたい何がおきたの?」
コマドリさんはすぐには答えませんでしたが、りすくんがもう一度「ねえ?」と声をかけると、しぶしぶ口を開きました。
「きのう、みんなはドングリ池からそれぞれのお家にもどったの。心配事がなくなったので、ゆっくり眠りについたわ。たぶんみんなもそうだったと思うわ。そしてお昼ごろ、またみんなで根っこ広場に集まったのよ」
話を始めると、グレイの走る速さが、すこしゆっくりになりました。グレイもコマドリさんのお話を聞いているのでしょう。
「根っこ広場に集まった後は、出会ったオオカミが、どれほどこわかったか、と言う話になったのよ。アタシが口がとがっていて、すごく大きなキバだったって言えば、こんどはヘビくんがキバをむき出して吠えていたって言うし、キツネさんも、追いかけられて転びそうになったっていうでしょう? そうしたら、クマさんがあいつはりすくんにひどいことをして、ケガをさせたんだよって言うし、アライグマくんも、襲いかかられそうになったけど、オレは逃げなかったんだ、なんて言うわけ」
「なんだって!? オレはそんなことしてないぞ!」
聞いていたグレイが吠えました。
「きゃあ!」
コマドリさんが少し高くとびあがりました。
「ゴメンねグレイ。みんな、ひどいや」
りすくんがグレイをなだめます。
「わかったわよ。なんかあの時はアタシたちも、興奮してたっていうか……どんどん話が大げさになってったっていうか……とにかく! そんな話をしていたら、根っこ広場の根っこが動き始めたのよ」
「あ! そうか!」
「なにがそうなんだ?」
グレイは根っこ広場の不思議な力を知らないようです。だからりすくんが教えてあげました。
「根っこ広場でウソをつくと、根っこに捕まって地下の迷路に閉じ込められちゃうんだよ」
「なるほど」
「そうよ、閉じ込められたまま出てこれなくなっちゃった動物もいるっていう話よ。みんなが無事だといいんだけど」
そんな話をしているうちに、三匹は根っこ広場に着きました。
着いたものの、これからどうしたらいいのか、りすくんにもわかりません。
不規則に盛り上がる根っこの上に立ち、グレイは「ウソをつけばいいんだな?」と、りすくんに聞きました。
「そうだよ」
「よしわかった。オレは、りすくんが大きらいだ」
グレイの乗っていた大きく太い根っこが、ボコボコとものすごい勢いで地面の中からはいでてきました。バランスを崩したグレイは、生き物みたいに地面から突き出してきた細い根っこにがんじがらめにされて、地面の中へと引きずり込まれてしまいました。
「ピーーーーー!」
おどろいたコマドリさんは、今までだれも聞いたことのないような声で鳴いています。
グレイが地面に引きずり込まれる様子を眺めていたりすくんは「なるほど」と、つぶやきました。
「コマドリさんはちょっと待っててね!」
りすくんはグレイが消えていった地面の上に立つと「ボクはグレイなんか大きらいだよ!」と、大きな声で言いました。
コマドリさんのわけのわからない叫び声が、またもやあたりにこだましました。
けれども、りすくんにはその声は聞こえなかったかもしれません。
それほどすばやく根っこが盛り上がると、りすくんを地下の世界へと連れ去ってしまったからです。
後には、気の毒なコマドリさんだけが残されてしまいました。
「どうしようどうしよう。ピュルリリ、ピピ……。根っこの世界からもどってこれなかったら、アタシ一人でどうしたらいいのよう!」
梢の上で、コマドリさんはたった一人、ただただみんなの帰りをまつことしかできないのでした。