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薬鳴

庭の木が赤く染まっていた。


木葉舞う中庭で


ひらひらと舞う木葉は春とも冬とも違う景色を見せる。
鳴狐は中庭に続く沿岸でそれを見ていた。
「鳴狐」
足音と呼び声がする。廊下を見ると、薬研が歩いて来た。
「こんな所で何してんだ?」
「少し庭を眺めておりました」
「はは、暇だな」
薬研は鳴狐の隣に座る。
「雅、ってやつなのか?俺っちにはわからんが」
「そんな大層なものではありませぬよ~」
ひゅう、と冷たい風が通った。木枯らし、とまではいかないが、優しい日差しで温まった顔が冷える。
「寒っ」
薬研はくしゃみをして、両手を合わせた。
「大丈夫ですか?薬研」
「大丈夫…あ」
薬研は鳴狐の肩に顔をうずめる。鳴狐は驚いたが、目当てがお供のキツネだとわかり安堵した。
「うわあ~あったけえ」
もふもふとキツネを堪能する。キツネは嫌がったが、薬研は気にしなかった。
薬研の呼吸を感じる。
いつもより近い距離は、鳴狐を戸惑わすには十分だった。
「薬研~!!いい加減になさい~!!」
お供のキツネは薬研を殴る。
薬研はやっと離れた。
「あー気持ち良かった。鳴狐はいいなぁ、いつも首にこんなもふもふ連れて」
あ、夏はしんどいか、と薬研は笑う。
その笑顔が眩しくて、つい顔を近づけた。
薬研も鳴狐の心境を悟り、唇を合わせる。
冷えていた体が火照っていくのがわかる。離れた時には薬研も顔を赤らめていた。
「いつも思うのですが…恥ずかしくないのですか?」
「キツネにもしてやろうか?」
薬研はキツネの口を掴む。キツネはぶんぶんと苦しそうに頭を振った。
そんな二人を見て、鳴狐は微笑む。
「じゃ、大将のとこに報告有るから」
薬研は立った。鳴狐は頷く。
足早にその場を去る薬研に手を振り、また庭を見た。
秋は深まる。
火照った体はすぐに冷めた。
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