薬鳴
昼間だというのに、薬研は机ばかりを見ている。
なんでもない日
薬臭い部屋は散らかっていた。
勝手に掃除を始めても、薬研は怒らない。
彼と同じ名前の器具を拭いたり、棚の蓋を閉めたり。ただ、薬だけは何が何やら分からなかったので、隅に避けるだけにする。
これが問題だ。
この部屋で一番有る物と言えば、薬だ。
これさえ片付けば大分床面積も広くなるのだが、手をつける訳にもいかない。
いつも悔しい思いをしつつ、箒で床を掃いていた。
「おう、いつも悪いな」
薬研は顔を上げる。
「悪いとお思いなら少しは掃除なさいよ」
「う~ん…そうだな…」
「うやむやにしないように!」
キツネが内心を代弁する。薬研はそうだな、と言って伸びをした。
「やっと書類終わったよ。大将んとこ出したら飯にするか?」
鳴狐は頷き、箒をしまう。
紙の束を持ち部屋を出ていく薬研の後を歩いていく。審神者の部屋に書類を置いて、大広間に向かった。
厨房を覗きプレートを貰う。今日は簡単なおにぎりとわかめの味噌汁と漬物だった。
歌仙は気を利かせ、 いつも頑張る二人にとおにぎりを一つおまけしてくれた。
大広間で二人並んで座る。他にもちらほらと昼食を摂る者も居たが、大体は食べ終わる頃だった。
薬研は漬物の小鉢を鳴狐のプレートに置く。薬研はいつもおかずをわけてくれた。
いただきます、と二人手を合わせる。ゆっくり食べようと努力するのだが、いつも薬研より先に食べ終えてしまう。大食いであるが、節度は大事にしようと心掛けていた。
「今日のおにぎりツナマヨだったな。歌仙の旦那にしては珍しくねえか?」
薬研の言葉に頷く。
「蜂須賀殿が何か仰ったのかもしれませんねぇ」
キツネがこそっと言ったので、薬研も小さく笑う。歌仙は蜂須賀に甘く、彼の好物を三日間出し続けたりした事も有った。
今日は出陣も無く、やる事も無かった。
審神者は昼から外出していたし、珍しく暇だ。
太陽が高いとはいえ、昼も寒い。
キツネをカイロ代わりに持っていると、鳴狐はその背中をカイロ代わりにしてきた。
「寒いなぁ~」
もうすぐ年が変わる。木枯しの音が聞こえた。
キツネに目配せをすると、キツネは鳴狐の内心を読み取る。
「薬研。一つ日頃から思ってた事を」
「何だ?」
「薬の事を鳴狐にご教授出来ませぬか?薬研の役に立ちたいのです」
「んー?俺っち説明が下手だからなぁ」
「片付けたい」
「ああ、別にいいのに」
「良くありません!!毎回気になっていたのですよ!」
「しょうがねえなぁ」
薬研はキツネを離し、隅に置いた薬を寄せる。
「これは胃薬。こっちが漢方で医薬品じゃない」
薬研がすらすらと説明するので覚えるのがなかなか大変だったが、鳴狐は細かい違いに気を付けながら聞いていった。
「…とまあざっと30種類か。結構出しっぱだったな」
頭がパンクした鳴狐の代わりにキツネが喚く。
「日頃から仕舞いなさい!!」
「悪い悪い」
「間違えてもしらないよ」
「それは困るなぁ」
鳴狐は薬研に確認しながら薬をしまっていく。そんな事をしていたら、太陽が傾いていた。
なんでもない日
薬臭い部屋は散らかっていた。
勝手に掃除を始めても、薬研は怒らない。
彼と同じ名前の器具を拭いたり、棚の蓋を閉めたり。ただ、薬だけは何が何やら分からなかったので、隅に避けるだけにする。
これが問題だ。
この部屋で一番有る物と言えば、薬だ。
これさえ片付けば大分床面積も広くなるのだが、手をつける訳にもいかない。
いつも悔しい思いをしつつ、箒で床を掃いていた。
「おう、いつも悪いな」
薬研は顔を上げる。
「悪いとお思いなら少しは掃除なさいよ」
「う~ん…そうだな…」
「うやむやにしないように!」
キツネが内心を代弁する。薬研はそうだな、と言って伸びをした。
「やっと書類終わったよ。大将んとこ出したら飯にするか?」
鳴狐は頷き、箒をしまう。
紙の束を持ち部屋を出ていく薬研の後を歩いていく。審神者の部屋に書類を置いて、大広間に向かった。
厨房を覗きプレートを貰う。今日は簡単なおにぎりとわかめの味噌汁と漬物だった。
歌仙は気を利かせ、 いつも頑張る二人にとおにぎりを一つおまけしてくれた。
大広間で二人並んで座る。他にもちらほらと昼食を摂る者も居たが、大体は食べ終わる頃だった。
薬研は漬物の小鉢を鳴狐のプレートに置く。薬研はいつもおかずをわけてくれた。
いただきます、と二人手を合わせる。ゆっくり食べようと努力するのだが、いつも薬研より先に食べ終えてしまう。大食いであるが、節度は大事にしようと心掛けていた。
「今日のおにぎりツナマヨだったな。歌仙の旦那にしては珍しくねえか?」
薬研の言葉に頷く。
「蜂須賀殿が何か仰ったのかもしれませんねぇ」
キツネがこそっと言ったので、薬研も小さく笑う。歌仙は蜂須賀に甘く、彼の好物を三日間出し続けたりした事も有った。
今日は出陣も無く、やる事も無かった。
審神者は昼から外出していたし、珍しく暇だ。
太陽が高いとはいえ、昼も寒い。
キツネをカイロ代わりに持っていると、鳴狐はその背中をカイロ代わりにしてきた。
「寒いなぁ~」
もうすぐ年が変わる。木枯しの音が聞こえた。
キツネに目配せをすると、キツネは鳴狐の内心を読み取る。
「薬研。一つ日頃から思ってた事を」
「何だ?」
「薬の事を鳴狐にご教授出来ませぬか?薬研の役に立ちたいのです」
「んー?俺っち説明が下手だからなぁ」
「片付けたい」
「ああ、別にいいのに」
「良くありません!!毎回気になっていたのですよ!」
「しょうがねえなぁ」
薬研はキツネを離し、隅に置いた薬を寄せる。
「これは胃薬。こっちが漢方で医薬品じゃない」
薬研がすらすらと説明するので覚えるのがなかなか大変だったが、鳴狐は細かい違いに気を付けながら聞いていった。
「…とまあざっと30種類か。結構出しっぱだったな」
頭がパンクした鳴狐の代わりにキツネが喚く。
「日頃から仕舞いなさい!!」
「悪い悪い」
「間違えてもしらないよ」
「それは困るなぁ」
鳴狐は薬研に確認しながら薬をしまっていく。そんな事をしていたら、太陽が傾いていた。