薬鳴
「おはよう、薬研」
言葉
鳴狐が声を掛けてきた。
珍しい事も有るんだなぁと思っていたら、鳴狐はそのまま話し始めた。
良く動く口許は面頬をしていない。
お供が喋っているかと思うくらい良く喋る鳴狐は、紅の無い眼を弓なりに歪めていた。
聞き慣れない声のトーンに、こっちが黙ってしまう。
なんでこんなに喋るんだろう。違和感だけが痼の様に残る。
「ねえやげ
右手で鳴狐の口を覆い、黙らせた。
「喋るな」
自分がどんな顔をしているか分からない。鳴狐は目を見開いていた。
手を離すと、鳴狐は暗い声で
「どうして」
と呟く。
「薬研に色々伝えたいのに」
静かで、強い声。
「こんなに好きだから、色々喋りたいのに」
「鳴狐
「せめて夢の中くらい、伝えたいのに」
夢?
聞き返そうとしたら、声が出なかった。
目を開くと遠い世界から帰ってきた。
辺りを見渡し、鏡の前に座る鳴狐を捉える。
「…鳴狐」
眼元に紅をひき、面頬を着けた鳴狐は不思議そうな顔をしていた。
さっきまでの夢を思い出す。
薬研は堪らなくなって鳴狐を抱き締めた。
「…喋らなくていいからな」
腕に力を入れると、鳴狐は黙って背中を叩いてくれる。
「無理しなくていいからな。無口なアンタが好きなんだ」
我ながら語彙が足りなくて情けなくなる。いきなりで訳がわからないだろうが、鳴狐は頷くだけだった。
朝の光は優しく二人を包む。
鳴狐のキスは甘い味がした。
言葉
鳴狐が声を掛けてきた。
珍しい事も有るんだなぁと思っていたら、鳴狐はそのまま話し始めた。
良く動く口許は面頬をしていない。
お供が喋っているかと思うくらい良く喋る鳴狐は、紅の無い眼を弓なりに歪めていた。
聞き慣れない声のトーンに、こっちが黙ってしまう。
なんでこんなに喋るんだろう。違和感だけが痼の様に残る。
「ねえやげ
右手で鳴狐の口を覆い、黙らせた。
「喋るな」
自分がどんな顔をしているか分からない。鳴狐は目を見開いていた。
手を離すと、鳴狐は暗い声で
「どうして」
と呟く。
「薬研に色々伝えたいのに」
静かで、強い声。
「こんなに好きだから、色々喋りたいのに」
「鳴狐
「せめて夢の中くらい、伝えたいのに」
夢?
聞き返そうとしたら、声が出なかった。
目を開くと遠い世界から帰ってきた。
辺りを見渡し、鏡の前に座る鳴狐を捉える。
「…鳴狐」
眼元に紅をひき、面頬を着けた鳴狐は不思議そうな顔をしていた。
さっきまでの夢を思い出す。
薬研は堪らなくなって鳴狐を抱き締めた。
「…喋らなくていいからな」
腕に力を入れると、鳴狐は黙って背中を叩いてくれる。
「無理しなくていいからな。無口なアンタが好きなんだ」
我ながら語彙が足りなくて情けなくなる。いきなりで訳がわからないだろうが、鳴狐は頷くだけだった。
朝の光は優しく二人を包む。
鳴狐のキスは甘い味がした。