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薬鳴

独り善がり


「何処にも行くなよ」
顔を包み込めばアンタは瞬きをする
「俺以外見るな」
其れは無理な事だとは分かってる
ただ仮初めの動作でもアンタが頷いてくれるから
あいつを見るな
アンタが見つめる視線を俺に
その瞳は俺のもの
額を合わせれば不思議そうな顔をする
俺っちの焦燥は伝わらない
ただ俺のものに
今だけは俺のものに
明日あいつに触れたとしても
今だけは俺のもの
その爪痕が残る様に
唇を合わせる
「好きなんだ」
アンタは不思議そうに笑う
このどうしようも無い独り善がりを
アンタに押し付けた愛しさを
ただ一緒なんだという我が儘を
分かち合ってくれるなら




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