お父さんを喰った霊獣。

私はもうすぐそれを継がなければならない。


正直言って怖い…。

自分にあれを抑える力があるのか…。

抑えられなければ周りの人を傷つけてしまうかもしれない……。


そう考えたら怖くて体が震えた。



そんな私に気づいたのかサンジ君は私の肩をそっと抱き寄せてくれた。



やっぱりサンジ君の隣は落ち着く。

今まであった辛いことを全部忘れられそう。


でも、もうじき当主を継ぐ私はあなたと別れなくてはいけない………。


それは辛くて…。
辛くて…。
身を裂かれるような想い…。


私はどうしてあなたを好きになってしまったんだろう……。

退魔師として生きる以上海賊との恋なんて叶うはずないのに…。


いつかは別れが来るとわかっていたのに…。



こんな辛い想いをするなら好きになんてならなきゃよかったのかな………。





ｻ｢一人で悩むなよ？｣




『え………？』



ｻ｢ここ最近ずっと悩んでるだろ。｣



『どうして……。』



ｻ｢アヤカちゃんのことならなんでもわかるさ。｣



『サンジ君…私…っ…。』



アヤカちゃんは震える手で俺のシャツを掴み胸で泣いた。



ｻ｢言えなかったんだろ？辛かったな。でもいいんだ。俺は言わなくてもわかってるから…。船、降りるんだろ…？｣



『サンジ君っ…。』



サンジ君は私が船を降りることをわかってた…。



『黙っててごめんなさいっ…。』



ｻ｢大丈夫だからもう泣くなよ。な？｣



『うん…。』



ｻ｢アヤカちゃんにとって大事な何かがあるから船を降りるんだろ？ならみんなも納得してくれるさ。｣



『サンジ君……。』



そんなこと言わないで。


私は降りたくないのに…。

もっともっと一緒にいたいのに………。



『そうだね…。ありがと…。もう大丈夫だから……そろそろ寝るね…。』



ｻ｢あぁ、おやすみ。｣



『おやすみ。』




私はその場にいるのが耐えられなくて部屋に逃げた。







口ではあんなこと言ったけど本当はアヤカちゃんと離れたくない。

君を離したくない…。



でもこの船を降りて俺とは違う別の世界で生きることが君にとって幸せなら……。

君の幸せを一番に願おう…。