《すぐ戻るからな》




誰かの声が聞こえた気がして目を覚ました。




『ん……ナミ…？サンジ君？……誰もいない…の…？』



《バーン！》




『何！？銃声！？』



アヤカはフラフラとベッドから起き上がると銃声のする甲板の近くへ壁つたいに向かった。






《ガルルルルル…。》



ﾅ｢なんなのあれ！？」



ｳ｢あんなデケェのとどうやって戦うんだよ～。」



《ガルルルルル…。》





『みんなの声……。それに混じって何か聞こえる…。この声は……！』




アヤカは壁つたいに女部屋に向かい床を手探りで剣を探した。



『確かこの辺に……。あった…。急がなきゃ…みんながっ…。』




アヤカは甲板へ向かった。





ﾌ｢どうなってやがるっ！」



ﾙ｢体がっ！」



ｻ｢動かねぇっ！」




｢ふははは。どうだね？キツネ使いの女を渡す気になったかい？」



クルー達の前には謎の男と隣にはトラのような化け物が立っている。



ﾅ｢誰があんたなんかにアヤカをっ！」



とその時ナミの肩に手が置かれた。




ﾅ｢何！？…アヤカ！？あんた…。｣




『お願い…。耳だけじゃ正確な位置がわからないの…。獣の位置を教えて…。』



ﾅ｢ここから1時の方向だけど…。あんた何をっ…。｣



『アイツを倒す…っ…。』



ｳ｢お前そんな体でっ…。｣



『はぁっ…はぁっ………。』


アヤカはフラフラとした足取りで男のほうへ歩いていく。



血の臭いがする…。


誰かがケガをしてる……。



｢ようやくお出ましか。大人しくこっちへ来れば仲間の命は助けてやる。｣



『許さない…。みんなを…私の大切な仲間を傷つけるなんて。絶対に許さないっ…。』



ｻ｢アヤカちゃんっ！」




｢ふっ。聞き分けの悪い小娘だ。お前もくらえっ！」



男の隣にいた獣の目が赤く光った。



が
アヤカは真っ直ぐ男のほうへ歩いていく。



｢なぜだ！なぜ効かん！」


『あなたの隣にいるのは霊獣。あなたはトラ使いね。そしてみんなが動けないのは金縛りのせい。』



ﾅ｢金縛り？」




『一度トラの目を見てしまったら最後。トラの目を潰すまで動けない…。』



｢くっ｡なぜだっ！なぜお前には効かない！」



アヤカは霊獣の前に来ると瞬時に剣を抜いて霊獣の目を切り裂いた。




『見えないんだから当たり前よ…。』



《ギャァァァァｯ！！！》



ﾙ｢動けるっ！」



ｻ｢アヤカちゃんっ！」



『ぅ…っ…。』



アヤカの体が傾いた時
目を切り裂かれ暴れた霊獣の前足がアヤカの腕を引き裂くように弾き飛ばした。



『うっ！』



《バシャーン》



ｿﾞ｢海に落ちたぞ！」



ｻ｢アヤカちゃん！」



サンジはジャケットを脱ぎ捨てて海へ飛び込んだ。




ﾙ｢お前ぇ！よくもアヤカを！ゴムゴムのぉぉぉぉっバズーカァァァァｯ！」




｢うぁぁぁぁぁぁぁっ！」








体が動かない…。

苦しい…。

息が…。







急いで海に飛び込み、沈んでいくアヤカちゃんの手を掴んだ。



《バシャッ。》



ｻ｢はぁっ…アヤカちゃん！アヤカちゃん！しっかりしろ！」



ﾙ｢サンジ！」



ルフィが腕を伸ばしアヤカとサンジを船へと引き上げた。



ｻ｢アヤカちゃんが！」



ﾁｮ｢息をしてない！とにかく飲んだ水を吐き出させないと！」



ｻ｢アヤカちゃんっ！クソッ。頼む目を開けてくれ！」


そう言ってサンジは必死に人工呼吸と心臓マッサージを繰り返す｡



『…っ…ゲホッゲホッ……！』



ｻ｢アヤカちゃん！」



ﾅ｢アヤカ！」



『みんな…サンジ君…。』



ﾁｮ｢良かった｡もう大丈夫だ。」



《パーンッ。》



ｳ｢サンジ！？」



突然サンジがアヤカの頬を叩いた。



『サ…ンジ…君……？』



ﾅ｢ちょっと…。｣



ｻ｢何やってんだよ！いきなり飛び出してきて！海に落ちて！死んでたかもしれねぇんだぞ！」



『わ…私……ごめんなさいっ…ごめんなさいっ…。みんなを助けなきゃって……仲間だからっ…大切だから…失いたくないからっ……夢中でっ……。』



そう言って泣きじゃくるアヤカをサンジがギュッと抱きしめた。



ｻ｢ったく、無茶しやがって…。ありがとな。おかげで助かったぜ｡でももう無茶はしないでくれ。俺だってアヤカちゃんと同じ気持ちなんだ。君を失うのが怖いんだ…。｣



『サンジ君っ……ぅ…。』



ｻ｢アヤカちゃん？」



腕の中で急に力が抜けて俺にもたれ掛かってきた。



ﾁｮ｢熱が上がったんだ。とにかく医務室に運ぼう。トラに引っ掛かれた傷も手当てしないと。｣



ｻ｢わかった。｣