『ん…。』

寒い…。
冷たい…。
何だろ…？



そっと目を開けるとそこは崖の下。

そして激しい雨が降っていた。



ミキの腕にはしっかりと抱かれた仔犬が。



『大丈夫！？』



「クーン…。」



『こんなに冷えて…。あっ！ケガしてる…。ごめんね…。私が一緒に落ちちゃったから…。』



「クーン…。」



仔犬は弱々しく泣いてミキの腕の中で小刻みに震えている。



『とにかく雨宿りできるところを探さないと…。』


辺りをキョロキョロと見渡すと近くに小さな洞穴を見つけた。



『あそこならなんとかなりそう。痛っ…。』



仔犬を抱えて立ち上がろうとすると足と肩に痛みが走った。



『落ちた時に打ったのかな…。』



よく見れば肩や腕からも血が流れていた。



『寒さで感覚が鈍ってる…。とにかくあの洞穴まで行かないと…。』



ミキは痛む体を引きずりながら洞穴へ入った。



『よし。もう大丈夫だからね。』


ミキは震える仔犬に自分の着ていた上着をかけて傷をおった足にハンカチを巻いた。



『もう少し頑張ってね…。大丈夫。必ずサンジ君が来てくれるから…。』



ミキは仔犬をギュッと抱き寄せた。



『大丈夫。大丈夫。私がいるから。ずっとそばにいるからね。』





それからどれくらい時間がたっただろう

雨は先ほどよりも強くなっていた。

それと比例するようにだんだん頭がぼーっとしてくる…。




寒い…。


ヤバい…。

今ここで倒れたらこの子が……。


私が守らなきゃ……。



だか、体はいうことを聞かずミキは洞穴の壁に寄り掛かるようにして意識を失った。



『サンジ…く…ん…。』