クルー達がしばらく黙り込んだ時だった。



《ドンッ！ドンッ！ドンッ！》



『あーーーーーーっ！』



ﾌ「何だ！？」



ﾅ「フォルテ！？」



ｻ「フォルテちゃん！」



クルー達が慌てて女部屋へ行くと



目一杯の声で叫びながら壁を叩き続けるフォルテの姿があった。



『あーーーーーーっ！』



何でよっ…！
何でなにも聞こえないのっ！
こんなに叫んでるのに…！
こんなに壁を叩いてるのに…！
何で私の耳には何も届かないのよ…！
私の耳でしょ！
音くらい拾いなさいよっ…！



『あーーーーーーっ！…ゲホッ…ゲホッ…はぁ…あーーーーーーっ！』



ひたすらに叫び、壁を強く叩くフォルテ。
足元には小さな血だまりが出来ていた。



ﾁｮ「フォルテ！もうやめるんだ！」



チョッパーが慌てて駆け寄りフォルテを押さえる。



『っ！い、やー！…っ！』




ﾁｮ「うわぁっ！」



フォルテはチョッパーを振りほどく。



再び壁を叩こうとした時、その手はサンジによって遮られた。



ｻ「血だらけじゃねぇか。もうやめろ。」



手首を強く掴み、まっすぐに自分を見てくるサンジの目にフォルテは力なくその場に崩れた。



ｻ「おっと。」



『っ……。うぅっ…ん…っ…。』



フォルテはサンジに抱きつくと声を押し殺すように泣いた。



ﾅ「フォルテ…っ…。」



サンジはそんなフォルテをいつまでも優しく抱きしめた。



その後、フォルテは泣き疲れ
倒れこむように眠ってしまった。




ﾁｮ「心にもかなり負担がかかってるんだと思う…。」



チョッパーはそう言いながら
眠るフォルテの手に包帯を巻いた。



ｻ「そう…だよな…。」



ﾁｮ「俺、もっと調べてくるよ。何か解決の糸口があるかもしれないし。」



ｻ「あぁ。」



その日の夜。



サンジは夕食を持って女部屋へと向かった。



中に入るとベットに座るフォルテがいた。



ｻ「起きてたのか。飯食えるか？体に負担かけたし卵粥にした♪」



サンジはフォルテにわかるように身振り手振りで話す。



『………い…い…。』



フォルテはそう言って首を横に振った。



ｻ「けど食わねぇと…。昼だって食わなかったろ？」



『……っ…。』



フォルテはふて寝するように布団を深くかぶってしまった。



ｻ「……。よし！」



サンジはそう言うと布団を勢いよくはがした。



『っ！？』



そのままフォルテを起こす。



ｻ「はい。あーん♪」



『…っ！ 』



フォルテはそっぽを向く。



ｻ「あ～ん♪」



サンジは諦めずにフォルテにスプーンを近づける。



『い…や…っ！』



フォルテは再び反対を向く。



ｻ「食べてくれるまで諦めねぇ。」



まっすぐにフォルテを見つめ
そう言うサンジ。



『はぁ…。』



とうとうフォルテが折れて小さく口を開けた。



ｻ「よっしゃ！美味しい？」



そう聞くがフォルテの耳には届かない。



フォルテは黙々と食事を続けた。



ｻ「よし！全部食べたな。偉い偉い♪」



サンジはそう言ってフォルテの頭を撫でるがフォルテは目を合わせる事なく俯いた。



ｻ「……1人じゃないからな。」



サンジはフォルテを抱きしめてそう言うと部屋を出て行った。



『………？』



今、何か感じたような…。
何だろう…。
不思議な感覚。