沢山の歓声に包まれて
嬉しそうにヒカリちゃんが言った。




『後ろの人もちゃんと見えてるからねーっ！』





そう言ってキラキラと輝くヒカリちゃんは俺を見た。


目が合い、俺が笑顔を向けるとあの日とは違う笑顔を向けた。



嬉しさがあふれるような、
待ち望んでいたような
そんな顔をした。



ヒカリちゃんは、


サンジ君は、


”あの日の約束を覚えてる！“




ライブはかなりの盛り上がりだった。



『アンコール最後の曲は私の大切な曲を歌います。この曲は私がまだ歌手になる前にこの島でよく歌っていた歌です。』



ヒカリちゃんの言葉に会場の後ろの方にいたスタッフ達が焦り始めた。


スタッフ達が小声で会話をする。




「おい、アンコールの曲ってそんな曲だったか！？」




「いや、最後は新曲を発表する予定だったんだ。」



「ヤバイっすよ！他の曲の音源なんて用意してないっす！」



「そもそもそんな曲聞いたことないよ！」




そんなスタッフ達をよそにヒカリちゃんは話を続けた。



『昔、１人で誰にも聞かれないように歌っていた私を見つけてくれた人がいました。その人は私の歌をとても褒めてくれたんです。自信のない私にたくさんの力をくれました。私はその人のおかげで歌手になることを決めたんです。今日はその人へのお礼とみんなへ、明日からも元気いっぱいですごせるように歌います。聞いてください。”笑顔”』




そう言って大きく息を吸い
アカペラで、あの日のように歌い始めた。




観客もスタッフ達も初めて聞くその歌に酔いしれている。




歌い終わると会場は驚くほどの歓声に包まれた。




『みんなありがとう！…私、今日のこと一生忘れない！…私は今日、この瞬間をもって歌手をやめます！』




「！？」



会場が驚きに包まれる。



スタッフ達はあんぐりと口を開け
、何が起きたかわからない様子だった。




『歌手をやめると言っても歌うことはやめません。こうやって大きなステージでキラキラしながら歌うのもすごく楽しいです。でも、ここじゃ私の夢を叶えられないんです。…私は海へ出てもっと、もっと、も～っとたくさんの人に歌を聞いてもらって世界中を元気にしたい！それが私の夢です！』




すると観客達が歓声をあげた。




「ヒカリちゃーん！」




「頑張れー！」




「応援してるよー！」




『みんな!ありがとーーーーっ！』




そして大歓声に包まれヒカリちゃんのライブは終わった。