『た…ただいま…。』




そう小さく言って居間に行くとおばあちゃんが驚きの眼差しでこちらを見ていた。




「彩夏！？ほんとに彩夏なのね！今までどこに行ってたの…？心配したわ。」



おばあちゃんの声を聞いておじいちゃんもやって来た。



２人は久しぶりに帰ってきた私を温かく迎えてくれた。




『みんなは？』




「お父さんとお母さんは買い物で妹たちは友達と出かけてるわよ。」




『そう。』




ふと見ると居間には旅行カバンが２つ。



『どっか行くの？』




「えぇ。これからおじいちゃんと温泉旅行に行くの♪」




『そうなんだ...。』




「彩夏は何か予定があるの？」




『私は今、仲間と船で旅をしてるの。仲間が待ってるからすぐに船に戻らなきゃいけないんだ。』




「あら残念。せめてお父さん、お母さんに顔くらい見せていきなさいよ。」




『急いでるから…。じゃ、みんな待たせてるからもう行くね。』



そう言って玄関に行くとドアが開いて
タイミング悪く両親が帰ってきてしまった。



「あら。おかえり彩夏
。」




『ただいま…。』




これが悪夢の始まりだった。




彩夏は家から出ることもできず
数時間後におばあちゃん達は旅行に出発してしまった…。



家に残ったのは両親と彩夏のみ…。




「お前今までどこに行ってたんだ。」



父親が低い声で言う。




『…。』




「答えろ！」




《バシンッ。》




『…っ…。』




「俺をナメるのもいいかかげんにしろ！」




そう言い父親は彩夏に数十発ものこぶしを浴びせる。




『っ……っ…っ…。』




彩夏は必至に耐えた。