翌日。



彩夏はクルー達に見送られ実家に帰ることとなった。




船を降りる直前、彩夏はサンジに視線を向けた。



それは何かを訴えるような目。



なんだよ
その目は。

まるで俺に助けを求めてるみたいじゃねぇか。





『じゃ、いってきます。夕方には戻るね…♪』




ﾛ「いってらっしゃい♪」





船を降りた彩夏は商店街を通り実家へ向かった。




すると
商店街の人に声をかけられた。



「あなたもしかして彩夏ちゃんじゃない？」



『はい。お久しぶりですおばさん♪』




「まぁ～大きくなって～。ツルコさんもセイジさんも喜ぶわね～♪」




『おじいちゃんとおばあちゃんは元気にしてますか？』




「えぇ♪早く会いに行ってあげなさい。」




『はい♪では失礼します。』




彩夏は商店街のおばさんに手を振り再び歩き出した。








家が見えてきた……。




この家に住んでるのは6人。


おじいちゃん、おばあちゃん、
両親、そして私の4つ下の双子の妹。



私は数か月前にこの家を逃げ出した…。





理由は…
両親の虐待…。



でもおじいちゃんとおばあちゃんと妹はこの事実を知らない。





夜中にこっそりと行われるその行為を私は声も上げず耐えていたから…。



おじいちゃんやおばあちゃん、妹にとってはどこにでもある幸せな家庭だったから。


たとえそれが偽物の幸せでも
幸せだと思っている人達を傷付たくなかった。

だから毎日、必死に耐えた。



目立つケガをしてしまった時はおっちょこちょいなキャラをアピールして誤魔化した。



でもそれにも限界がきてしまい
ついに家を飛び出してしまった。




小さい頃から歌が好きだった。
辛い時いつも１人で歌っていた。


歌なら道具はいらない。
自分の声さえあれば
いつだって、どこだって歌える。


だから私は家を飛び出したあと
歌で稼ぐことにした。



とある島の広場で歌っていると近くのバーの店主がぜひウチのステージを使ってくれと
私を雇ってくれた。



そこで歌い始めて数日後、私とサンジ君は出会った。




そして私は今、またこの場所にいる。





『結局、私はこの家を離れられない運命なんだね…。』




彩夏は覚悟を決めて玄関をあけた。