彩夏ちゃんが歌えねぇなんて…。



いつもはキラキラとした笑顔で楽しそうに歌う彩夏ちゃん。

でも今日、俺がキッチンの窓からのぞいたときの彩夏ちゃんの表情は強張ってた。



いつもなら歌いだす前から楽しい気持ちが伝わってくるのに。

あんな顔の彩夏ちゃん初めて見た。




何であんな顔するんだよ。
俺のこと嫌いなんじゃないのかよ。
今朝だってあんな作り笑顔して…。





サンジが考え込んでいると船は小さな島へと到着した。




ﾅ｢じゃぁ、船番はゾロとフランキーとチョッパーね。今日はここに停泊してログがたまったら明日、出航するわ。じゃ、解散！｣




ナミの指示の後、船番の３人と彩夏以外は用事を済ませるために船を降りた。




しばらくして彩夏が医務室にやってきた。




ﾁｮ｢おう！彩夏。もういいのか？｣




『うん。少し寝たから大丈夫。』





ﾁｮ｢よかった。これでまた彩夏の歌が聞けるな♪｣




『そのことなんだけど…。歌おうとするとどうしても声が出ないの…。』




ﾁｮ｢え！？ちょっと見せてくれ。」




『うん…。』




チョッパーは彩夏を診察する。




ﾁｮ｢特に異常はないな。｣




『そう…。』




ﾁｮ｢しばらく様子を見てみよう。｣




『うん…。』




ﾁｮ｢そうだ！気分転換に外に出てみたらどうだ？さっき島に着いたんだ。この島けっこう自然が多いし散歩したらきっと気持ちいいゾ！｣




『そうする。ありがとう。』




チョッパーに言われ甲板に出るとそこには見慣れた景色が広がっていた。




この島…。

私が生まれた島だ…。




ﾁｮ｢彩夏？」




『やっぱりお散歩はいいや…。』




彩夏はそう言って再び部屋に戻ってしまった。






それからしばらくして
空が夕焼けに染まったころ
クルー達が帰ってきた。



彩夏は何事もなかったように甲板で戻ってきたクルー達に笑顔をむける。




『みんなおかえり♪』




ｳ｢もう体はいいのか？｣




『うん！ちゃんと寝たからもう大丈夫♪』




ﾛ｢よかったわ♪｣




『あ！サンジ君もおかえり♪』




ｻ｢た、ただいま。｣




それからすぐにサンジが手際よく夕食の準備をして
騒がしい食事が始まった。




食事の最中にナミが話題を切り出した。




ﾅ｢そういえば今日、街で彩夏にそっくりな２人組を見たのよ。｣




ｳ｢へ～。２人とも似てるってのはすげーな。｣




『それ多分、妹かも…。』




ﾅ｢妹！？」




『うん。ここ私の生まれた島だから…。』




「「「えーー！？」」」




ﾅ｢なんでもっと早く言わないのよ～。｣




『別にいいかな～って。』




ｳ｢よくねぇだろ。たまには顔くらいだしてやれよ。｣




ﾅ｢そうよ～。せっかく帰ってきたんだし。｣





ﾌ｢父ちゃん、母ちゃんも心配してるだろうし。｣




『でも、歌手になる！って突然飛び出して来ちゃったし今更行ってもなぁ～って。』



ﾛ｢じゃぁ、なおのこと心配してるんじゃないかしら？｣




『そうかな～。』




ﾅ｢今日は遅いから明日いってらしゃい。夕方には船を出すからそれまでゆっくりしてくるといいわ。｣




『う、うん。そうする…。みんなありがとう…♪』




クルー達は気づいていないがサンジは彩夏の作り笑顔に気づいていた。