夕方、船は次の島に向けて出航した。





夕食を食べたあと彩夏ちゃんは見張り台へ登って行った。




ｻ｢今日は彩夏ちゃんが見張りか。何か差し入れでも持ってくか♪｣



サンジはそう呟きながらあと片付けを始めた。





その頃、彩夏は…。




『キレイ…。』




彩夏はサンジがくれた指輪を嬉しそうに眺めていた。




サンジ君が好き。
大好き。



でも…。
サンジ君に触れられるたびに体が反応しちゃう…。



サンジくんは気づいているのかな…。



気づかれる前にこの癖を直さなきゃ…。




今、サンジ君といられてすごく幸せ。

だからその幸せを壊したくない。
なくしたくない。




忘れなきゃ。
今まで私がされてきた事を。
サンジ君に出会うまでの記憶を…。



彩夏は膝を抱えてうずくまった。




大丈夫。
あの家に戻らなければあんなことされないはずだから。
もう、きっと大丈夫だから…。




彩夏は自分に言い聞かせるように何度も心の中で呟いた。



だが彩夏の頭の中はだんだんと辛い記憶で埋め尽くされいく。




ダメだ…。意識すると余計に思い出しちゃう…。




『怖い…。』



その時
突然、彩夏の肩に手が置かれた。




『…っ！？』




驚いた彩夏は勢いよく立ち上がり慌てて後ずさりした。




ｻ｢ごめん、驚かせちまったな。うずくまってたから体調でも悪いんじゃないかって心配してたけど大丈夫そうだな。｣




『…っ…。』



どうして…？
サンジ君なのに…。
サンジ君ってわかってるはずなのに…。
震えが止まらない。






ｻ「彩夏ちゃん？」



サンジは彩夏の異変に気づき、ゆっくりと歩み寄る。





『…っ…。』




やめて。
来ないで。
今の私に触れないで。




ｻ｢どうした？｣



そう言ってサンジが彩夏に触れた時だった。



『いやぁぁっ！』



彩夏はとっさにサンジの手を振り払い
しゃがみこんでしまった。





ｻ｢彩夏ちゃん…？｣




『…！？ごめ…い、今のは…っ！』




ｻ｢ははは…。やっぱそうだったのか…。」




『違うのサンジ君…。』



ｻ｢たまたま行ったバーで歌ってた彩夏ちゃんに
俺が一方的に惚れただけだったんだよな…。本当は俺なんか好きじゃないんだろ？だから俺が触れるたびに拒絶するような反応してたんだろ？｣



『違うのっ！そうじゃなくて…。』




ｻ｢違う！？じゃぁ、今までのその反応は何だったんだよっ！」


サンジは彩夏に怒鳴りつけた。



すると彩夏の目が一瞬にして怯えた目に変わった。



『そ、それは…。』



ｻ｢言い訳なんて聞きたくもねぇ！｣



そう言ってサンジは足早に見張り台を降りて行った。




『サンジ君！待って…！』







彩夏の頬を涙が伝った。



サンジ君に気づかれてた…。

私のせいでサンジ君を傷つけた…。



ふと見るとハシゴの近くにはトレーに乗った暖かいココアが置いてあった。




『サンジ君…っ…。』





サンジ君はいつも私にこんなにも優しくしてくれていたのに…。
私はサンジ君を傷つけた…。