俺が退院してから数日がたった。


あれから穂乃花ちゃんに会いに行ってねぇ。

入院してる間に溜まっちまってた仕事を片付けるのに思いのほか時間がかかっちまった。

いつでも話相手になるなんて言っておきながら情けねぇな。
なんて思いながら久しぶりに穂乃花ちゃんの病室へ向かう。




ｻ｢あれ…？｣



穂乃花ちゃんの病室の前に行くといつもは開いてるはずの扉が閉まっていた。



ｻ｢ま、しばらく来てなかったしな…。｣


そう呟きながらそっと扉を開けた。




ｻ｢……え……？｣



扉の向こうには変わり果てた穂乃花ちゃんの姿があった。


酸素マスクをつけられ包帯だらけの体。
周りにはいくつもの機械と点滴が並んでいた…。



ｻ｢穂乃花…ちゃん……？｣


ふと見れば穂乃花ちゃんの手には手錠がはめられしっかりとベッドの手すりに繋がれていた。



ｻ｢これって…。｣



とそこへナースがやってきた。



｢あらあなた…。｣



ｻ｢あの…いったい何が…。｣


｢この子、そこのバルコニーから飛び降りたの…。｣



ｻ｢え…！？」



｢もう4日も意識が戻らないのよ…。｣



ｻ｢そんな…どうして…。｣


俺は穂乃花ちゃんを見つめた。



｢かなり思い詰めてたみたいよ…。｣


ｻ｢穂乃花ちゃん……。｣


ナースは点滴を交換して心電図が表す数値をチェックして出ていった。





ｻ｢穂乃花ちゃん…。どうしてこんなこと…。｣


俺は傷ついた穂乃花ちゃんの手をそっと握った。



静かな病室には心電図が規則的に発する音だけが響いた。



ｻ｢穂乃花ちゃん…頼む…目を覚ましてくれ…。君の声が聞きたいんだ…。また一緒に話そう…な…？｣


そう話しかけるが穂乃花は目を閉じたまま。



ｻ｢穂乃花ちゃん……。｣



俺は穂乃花ちゃんの手を握りながらずっと今までの穂乃花ちゃんとのことを思い出した。



楽しそうに笑う穂乃花ちゃん。
辛そうな顔。
寂しげな顔。
一緒にした話。


いろんな事を思い返した。
でも最後に浮かんで来るのはやっぱり穂乃花ちゃんに避けられた時の事。



どうしてあの時俺は避けられたんだ……？

俺が何か気にさわる事でも言ったのか…？


俺はしばらく考えていた。


と、そこへナースが入ってきた。



｢あの、そろそろ面会時間が終わるので…。｣



ｻ｢もうそんな時間か……。｣


俺は穂乃花ちゃんの頬をそっと撫でた。



ｻ｢また来るからな。｣



そう言って病室をあとにした。