鋼の錬金術師(短編)
「お仕事をしてください!」
そらきた、猛禽鷹の目中尉の目。
私は射殺すかのごとく睨まれて、ペンを止めて彼女を見た。
「何だな?中尉。
私はちゃんとこうして自分の執務室でペンを走らせておるではないか。
今日はちゃんとやっておるぞ?」
「そうでしょうとも、我が司令官殿は、東方司令部司令官執務室で昼前の市内視察の時、角の花屋、ウ゛ィラ★ローズの娘さんに戴いたお手紙のお返事をお書きになっておりますね。」
「む…」
ばれてたか…
私は、彼女がそこまで知り通していることをちゃんと把握している。
当然である、彼女も私と市内視察に行ったのだから。
「えぇ、確かにご自分の部屋でペンを走らせておりましょうとも。
花柄の上品な便箋に!」
因みに百合柄だ。
「はっはっは。
せっかく手紙を戴いたのだから、返事を書くのは礼儀だろう。」
「大佐がお書きになるべき手紙は我が国の軍書類です!」
「またそんな…色気のない…」
「これが終わらなければ、まずい薄いコーヒーで書類作成の音をBGMに私とここでデートです!!」
「…………。」
「…?大佐?」
急に黙った私を彼女はいぶかしげに覗きこんだ。
私はふと、そしてニヤリと笑って腹黒く言った。
「そうか、君は私とデートがしたいと。
女性にデートを誘われて悪い気はせんな。」
「!」
私は彼女が何を言い返すかと楽しみに思えば、
「私も、嬉しい限りですっ!」
と高らかに宣言して私の机の上に造山帯を造る決意を固めたらしい。
数えたくない書類の山を彼女は私の目の前にどんと置いた。
「今夜は楽しみにしておりますわ大佐」
彼女はそりゃもう素敵な笑顔を向けてきて、次の山をとりに私の執務室を出てった。
…私は唖然として…やっぱり彼女の方が一枚上手かなと心底苦笑したのであった。
完
☆☆☆
なんだこのかわいい二人。
昔の自分の頭がどんな考えだったのか今となってはちょっと闇の中です。