鋼の錬金術師(短編)

難攻不落の北の壁、ブリッグズ要塞

その要塞を束ねるのは、北壁と恐れられる氷の女王、オリヴィア・エル・アームストロング少将である。

その眼光鋭く睨まれたものは、熊でさえ逃げ出すという。


今、氷の女王は自分の執務室で、研ぎ澄まされた天下の名刀をじっくりと吟味していた。

いつものレイピアではなく、小ぶりのナイフだ。

部屋の明かり取りの窓から注ぐ光をぎらぎらと反射している。

そこにひかえめなノックが室内に響く。

「マイルズです。
ご所望の品をお持ちいたしました。」

オリヴィアが、ナイフを弄びながらニヤリと笑う。

「待っていたぞ。
入れ。」

「失礼します。」

マイルズが扉を開き、ゆっくりと中にはいる。
そしてオリヴィアの方を向くと…

目の前にオリヴィアが投げたナイフがまっすぐにマイルズ目指して飛んできていた!

「ーっ!」

とんっ

ナイフは、身をすくませたマイルズが持っていたお盆に刺さる。

正解にはお盆に乗っていたオレンジに見事に突き刺さっていた。

部屋の中に柑橘系の爽やかな匂いが広がる。

「ふむ、なかなかよい香だ。
新鮮そうだな。
いただこう。
マイルズご苦労だった。」

つかつかと歩み寄ったオリヴィアは、マイルズのお盆からオレンジを取り上げ、刺さったナイフで皮をむきはじめた。

「それでは…失礼します。」

マイルズは青くなりながら部屋をでていく。

部屋をでたマイルズは、緊張のあまり詰めていた息を安堵とともに吐き出した。

外で待機していたバッカニアも安堵の表情で敬礼を贈っていた。


オリヴィアが実は柑橘系が好きなこと、新鮮なものかどうかの判定をするためのナイフ投げが怖くてみんな届けたがっていない事は、
ブルッグズの公然の秘密である。


End


北では柑橘系は収穫出来ないので、かなり貴重と思われる。
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