鋼の錬金術師(短編)
国を巻き込んだホムンクルスの事件から一ヶ月。
マスタング准将の執務室でその事件はおきた。
「えぇっ!」
朝出勤したロイは、自分の執務室に入るなり驚きの悲鳴を上げた。
「おはようございます。
准将。何かございましたか?」
目の前には副官のリザ。
それはそれでいい。
問題はそこじゃない。
「り、リザ!
君の、君の髪ガッ!
君の髪がショートに!
切ってしまったのか!?
もったいない!」
そうなのだ。
あの美しいゴールデンロングヘヤーは跡形もなくなり、さっぱり短髪になっていた。
「それがなにか?」
「そんなさらりとっ!
髪は女性の命だろうに!」
リザはため息をついた。
「たいしたことないですから、さあ、お仕事なさってください。」
しかし、ロイは目に見えてがっかりしている。
いますぐ仕事モードにはなりそうにない。
「准将はロングがお好みでしたか?」
「君の長く美しい金髪は、仕事中のとてもよい目の保養だったのに。
うう、もったいない。」
「そうおっしゃいましても、切らなくてはならなかったのです。」
「?
それはいったい?」
リザはちょっといたずらっぽく微笑んで、ロイの唇に人差し指を添えた。
「ちょっとした願掛けでしたから。」
「が、願掛け?
なんのだね?」
ロイはとぎまぎしながら尋ねた。
リザは笑いながら…
「それは秘密です。」
ロイの頬に口付けを一つ。
「!」
ロイは完全に不意を打たれたようだった。
「さ、仕事しましょうね、将軍!」
ロイはリザに押されて机に座らせられ、山積みの仕事をしなくてはならなくなった。
しかし、先程のサプラズのおかげで機嫌は上々のようだ。
リザはその様子を確認しながら、安堵のため息をついた。
忠実なはずの部下が、自分の為ではない願掛けしているとわかったら、あの方は拗ねてしまうもの。
窓から差し込む日の光、青空を見上げてつぶやく。
「エド君とアル君、もとにもどれてよかったわね。」
ずっと応援していたのよ。
End
★★★★
櫻樹龍児はロングヘアーを応援します