鋼の錬金術師(短編)
「あまいもん食いてぇなー」
ブレダが、ハボックの横で呟いた。
「あん?
なんだよいきなり。」
ハボックが、ブレダの方を見ることなく返事をした。
ブレダは、双眼鏡でとある建物を見張りながら、言う。
「頭脳労働すると、あまいもんが欲しくなるだろ。
あれだよ、あれ。」
「俺はもっと腹にたまるもんがいいなぁ。
カツ丼とか。
つーか、タバコ吸いたい。
せっかく日曜日にかぶった休日だったのにー。
休み返上で、こいつは辛いぜ。」
二人は、突撃の合図を待っていた。
ブレダが見張っている建物に、犯人グループが立て込もっている。
合図はまだなく、二人の気の抜けた会話が続く。
「まぁなー。
しかし、カツ丼かー。
カツ丼もうまいけど、今は生クリームの気分だなー。」
「生クリームねぇ。
シュークリームか?それとも、気がすむまで食えるよーな、巨体パフェとか。」
「いやー、さすがにそこまでじゃなくていいや、うーん、サンデーぐらいがいいかなー。」
「サンデーかー。
あのちっこいパフェみたいのな。
お客様、なんになさいますか?
ストロベリーサンデー、チョコレートサンデー、フルーツサンデー各種取り揃えております。
なんてな。」
「かわいいウェイトレスに言われたら嬉しいけど、いかついてめえに言われてもなぁー。」
そんな会話をしながらも、二人は油断なく構えている。
そうしていると、遠くで鐘が一つ鳴った。
合図だ!
「GO-GO-GO-!
てめえら、行くぞ!」
ハボックとブレダは、部下たちにGO-サインを出し、自らも、勢いよく建物に乗り込んだ。
ドアを突き破り、銃を突き付ける!
「うわぁぁっ!?
くそぅ!軍人どもめ!」
犯人たちは、あわてふためき、持っていた銃をあさっての方向へ撃つ。
「ふん、このサンピンどもが!」
ハボックが、銃で応戦した。
「銃の扱いはプロにまかせとけってんだ」
ハボックの銃の腕と、犯人たちでは比べ物にならず、すぐに悲鳴があがる。
肩や、腕、足を撃ち抜かれ、倒れる犯人たち。
「くそぅ!なめるなぁぁぁあ!」
犯人の一人が、逆上して、ハボックの横から襲ってきた。
「!」
ハボックは前の奴の相手をしているので、振り向くことができない!
「甘いぜ」
冷静な声と一発の銃声。
撃ったのはブレダだった。
悲鳴を上げて倒れる犯人。
「わりぃな。ブレダ!」
「かまわねぇよ。」
決着がついたのは、そのあとすぐだった。
呻く犯人と、彼らの血で辺りは散々なことになっている。
部下たちが犯人たちを縛り上げているのを見ながら、ブレダは誰に聞かせるともなく呟いた。
「あー、やっぱりサンデーは止めとくかなぁ。」
「何でだ?
あんなに食いたがってたのに。
張り込み終わったし、報告書終わったら食いにいきゃいーじゃん」
ハボックが犯人の一人を、乱暴に止血しながら聞いた。
ブレダは首をふる。
「いいやー。
いっぱい食わされたから、今日はいいかなーと。」
「なんか食ってたか?」
「おうとも。
腹一杯になっちまったよ。
ブラッディサンデー
(血みどろな日曜日)でな」
END
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