鋼の錬金術師(短編)
雪の降る町
イーストシティから少し北の町に、ロイとエドは軍関係の所用できていた。
ついさきほど、その用事も無事に済んだところだ。
外は寒いので、エドはいつものコートをきっちりと前を閉め、ロイはいつものコートにくわえ、マフラーと黒い革の手袋をした。
二人はそろって、建物の外に出る。
「おわ、大佐、寒いと思ったら、雪降ってらー。」
「む、本当だな。
寒いわけだ。」
二人が見上げた灰色の空からは、ちらちらと白いものが舞い降りてきていた。
小指の先にもみたないような、細かな雪だった。
「あうううう、いてててて。」
とたんに、エドが顔をゆがめた。
「!
どうした?鋼の!?」
自分の隣でいきなり痛がったエドを見て、ロイは何事かと慌てた。
「あ、いや、その、オートメイルの接合部が、今、きゅーっと痛くなった。
たぶん気圧とか、温度の差でだと思う。
いつものことだから、大丈夫大丈夫、大佐。」
「まったく、君という子供は。」
ロイは、我慢するエドを見て、小さくため息をはいた。
「誰が子供だ!誰が!」
「私の隣にいる、小粒なお豆君のことだが?」
「誰が小粒でみみっちくてどこにいるのかわからないお豆君だーっ!
というか、豆っていっておいて、さらに小粒とか!!
どういうことだ!
断じて聞き捨てられないな!!??」
ロイは、とたんに騒ぎ出したエドに向けて苦笑した。
「笑ってんじゃ・・・!
あでいいったたたったた~・・・!」
笑っているロイに向けて拳を振り上げようとしたエドだったが、ズキッとした痛みに襲われて、その勢いはすぐにしぼんでしまった。
「まったく、こう寒いとわかっているのに、いつもの格好でくるのだから。」
ロイはやれやれと首を振ると、自分がまいていたマフラーをするっととって、エドに巻いてやった。
「おわ!」
「ほら、首元を隠すとずっと違うだろう?
宿に到着するまで貸してあげよう。」
ロイはマフラーを形よく整え、軽く笑って見せた。
「あ、う・・・、あ、あんがと。」
エドはなにか一つ文句でも言ってやろうかと思ったが、巻いてもらったマフラーが暖かくて、その気がそれてしまった。
「君がちゃんと礼を言うのだから、よっぽど寒かったのだね。」
ロイはいうと、エドの先に立って、道を進み始めた。
何歩かいって、エドがくっついてこないことを不思議に思って、ロイは振り返った。
「どうした?
鋼の。
なにか気になるものでもあったのかね?」
少しぼうっとしていたエドは、はっとした。
「あ!いや、なんでもないんだ。
い、いこう!」
エドは小走りに駆けていって、ロイの隣に並んだ。
「?」
ロイは首をかしげたが、深くは追求してこなかった。
エドは、実際それがありがたかった。
じゃなければ、口がうまくて機転が利くこの司令官のことだ、すぐにわかってしまうにちがいないのだから。
(久しぶりに感じた他人の体温に感動しちゃったとか、いったいどの口で言えるってんだ!)
雪の降る町での、ほんの小さな、秘密の話。
完
イーストシティから少し北の町に、ロイとエドは軍関係の所用できていた。
ついさきほど、その用事も無事に済んだところだ。
外は寒いので、エドはいつものコートをきっちりと前を閉め、ロイはいつものコートにくわえ、マフラーと黒い革の手袋をした。
二人はそろって、建物の外に出る。
「おわ、大佐、寒いと思ったら、雪降ってらー。」
「む、本当だな。
寒いわけだ。」
二人が見上げた灰色の空からは、ちらちらと白いものが舞い降りてきていた。
小指の先にもみたないような、細かな雪だった。
「あうううう、いてててて。」
とたんに、エドが顔をゆがめた。
「!
どうした?鋼の!?」
自分の隣でいきなり痛がったエドを見て、ロイは何事かと慌てた。
「あ、いや、その、オートメイルの接合部が、今、きゅーっと痛くなった。
たぶん気圧とか、温度の差でだと思う。
いつものことだから、大丈夫大丈夫、大佐。」
「まったく、君という子供は。」
ロイは、我慢するエドを見て、小さくため息をはいた。
「誰が子供だ!誰が!」
「私の隣にいる、小粒なお豆君のことだが?」
「誰が小粒でみみっちくてどこにいるのかわからないお豆君だーっ!
というか、豆っていっておいて、さらに小粒とか!!
どういうことだ!
断じて聞き捨てられないな!!??」
ロイは、とたんに騒ぎ出したエドに向けて苦笑した。
「笑ってんじゃ・・・!
あでいいったたたったた~・・・!」
笑っているロイに向けて拳を振り上げようとしたエドだったが、ズキッとした痛みに襲われて、その勢いはすぐにしぼんでしまった。
「まったく、こう寒いとわかっているのに、いつもの格好でくるのだから。」
ロイはやれやれと首を振ると、自分がまいていたマフラーをするっととって、エドに巻いてやった。
「おわ!」
「ほら、首元を隠すとずっと違うだろう?
宿に到着するまで貸してあげよう。」
ロイはマフラーを形よく整え、軽く笑って見せた。
「あ、う・・・、あ、あんがと。」
エドはなにか一つ文句でも言ってやろうかと思ったが、巻いてもらったマフラーが暖かくて、その気がそれてしまった。
「君がちゃんと礼を言うのだから、よっぽど寒かったのだね。」
ロイはいうと、エドの先に立って、道を進み始めた。
何歩かいって、エドがくっついてこないことを不思議に思って、ロイは振り返った。
「どうした?
鋼の。
なにか気になるものでもあったのかね?」
少しぼうっとしていたエドは、はっとした。
「あ!いや、なんでもないんだ。
い、いこう!」
エドは小走りに駆けていって、ロイの隣に並んだ。
「?」
ロイは首をかしげたが、深くは追求してこなかった。
エドは、実際それがありがたかった。
じゃなければ、口がうまくて機転が利くこの司令官のことだ、すぐにわかってしまうにちがいないのだから。
(久しぶりに感じた他人の体温に感動しちゃったとか、いったいどの口で言えるってんだ!)
雪の降る町での、ほんの小さな、秘密の話。
完