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鋼の錬金術師(短編)

きつね色のバンズのてっぺんには、シロゴマが振りかけてある。

分厚いハンバーグが、とろけた黄色いチーズの間から顔を覗かせている。

いためた玉ねぎが、バンズとチーズの間に挟んである。
キャラメル色になっていて、今にも包み紙の中に落っこちちゃいそうだな。

焦げ茶色のスパイシーなソースが、中身全体の味の決め手。

僕の手の平ぐあいありそうな、おっきなハンバーガーに、
がぶりっと兄さんが噛み付いた。

口の周りについたソースを気にもしない。
兄さんらしい食べ方だ。

ああ、おいしそうだなぁ。

兄さんが噛み付いたところのハンバーグから、じわっと肉汁が染み出している。

もぐもぐと、僕が見守る中、向かいの席で手帳を覗き込みながら食事をする兄さん。

もぅ、行儀悪いなぁ。

兄さんは、続いてもう一口がぶり!
あ、今、とろけたチーズが、にょーんってのびた。

案の定、いっぱい挟まっていた玉ねぎは、後ろから包み紙の中に押し出されちゃったみたいだ。

兄さんはもぐもぐ口を動かしてたけど、観察していた僕に気がついたみたい。

手帳とハンバーガーから顔を上げた。

「どうした?アル?」

「ううん、なんでもないよ?
兄さんの食事、観察してただけ。」

僕がそう言うと、兄さんははっとしてうなだれた。

「ごめんな、アル。
お前はメシ食えないのに、俺だけ目の前でバクバク食って…。
俺、別ん所で食ってくるよ。」

兄さんはハンバーガーの包みや飲み物を持って、席を立とうとしたけど、僕はそれを止めた。

「兄さん、僕の前で食べてよ。」

「でも…」

兄さんは僕に悪いという顔をする。

「僕ね、今、食事できないでしょう?
もう、味の感覚、だいぶ忘れてるんだよね。
でも、食事が楽しい事だって忘れたくないんだ。

だから、兄さんがおいしそうに食事するのをみて、おいしそうだな、僕もはやく兄さんと一緒に食事をするためにがんばろう!って気持ちになりたいんだよ。

だから、さ。
兄さん、僕と一緒に食事してよ!ね?」

兄さんはちょっと困ったような顔をしたけど、頷いてまたハンバーガーを食べはじめた。

兄さんは本当においしそうに食べる。

兄さん、絶対一緒に食事しようね!


END

このあと、エドはアルに口を拭かれます(笑)
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