クリムゾン†レーキ
…29、さらなる謎へ
うなだれたエドは、一人で東方司令部に向かった。
アルもホーエンハイムも一般人だから軍の中に入れないので、先にホテルに行ってもらい、ついてきていない。
エドは東方司令部の門の前で立ち止まり、気合いを入れるようにぴしゃりと両手で両頬を打った。
「よっし!」
クヨクヨしていても仕方がない。
とりあえず、あのいけ好かないグリードロイに調べ上げた結果を突き付けてやらなければ。
エドは肩をいからせて、ずんずんと司令部に入っていく。
司令部に入ってみると、エドは中が慌ただしい雰囲気に包まれている事に気がついた。
ーなんかあったのかな?
エドはざわつく思いを胸に、ロイの執務室に急いだ。
事務室にたどり着くと、顔見知りのメンバーが、いつもより慌ただしくしていた。
ーうわっ!
タイミング間違ったかな?
ドアのところで困っていると、後ろからぽんっと肩を叩かれた。
「入らないの?
エドワード君。」
後ろを振り向くと、リザが立っていた。
「あ、ホークアイ中尉。
久しぶり。
えと、大佐いる?」
リザは頷いた。
「ええ、あなたが来たら無条件に中に入れるよう言われてるわ。
さ、どうぞ。」
エドはまっすぐにロイの執務室に通されたので、他のメンバーと話すチャンスはなかった。
エドがロイの執務室に入ると、向かいに設置されたマホガニィの執務机ごしに、ロイと対面することになった。
ロイはうっすらと笑いを浮かべ、両ひじをついて、エドを見ている。
「久しぶりだね。
鋼の。
何か進展はあったのかね。
それとも、ギブアップをしにきたか?」
ロイの挑発するような言い方に、エドは冷静な声で答えた。
「いいや。
ギブアップなんかしねーよ。
答え合わせにきただけだ。」
エドの言葉に、ロイはぴくりと眉を動かした。
「ほぉ。
答え合わせにね。
おもしろい。
じゃあ、さっそくだが、聞かせて貰おうではないか。」
エドはロイと向き合って立ったまま、ロイに調べた事を順をおって話した。
カルマンドロが国外に逃れた事は伏せておいたが、そのほかはすべて話した。
ウィルファットと狂言テロのつながり、なぜウィルファットの名家が狙われたのか、浮き上がるアザにかくされた内容、それにいたる経緯。
ロイは黙ってエドの話しを聞いていたが、エドが話し終えると、いきなりのけ反って大笑いしだした。
「な、なんだよ!
間違ってるって言うのか!?」
エドは面食いながら叫ぶ。
ロイは笑いを止めようと努力しているようだった。
「いや、いやすまぬ。
くっくっく、大正解。
いや、それ以上だよ。
はっはっはっは!」
ロイは腹を抱えて涙を浮かべて、大笑いしている。
もう止めようとした努力は止めたらしい。
エドは不愉快そうに顔を歪める。
しばらくして、ロイは笑い疲れたようにぐったりしながらエドを見た。
「はー、スマンスマン。
合格だよ鋼の。」
「何ぃ?」
エドは怪訝そうに眉をひそめた。
「合格だと行ったのだ。
愉快愉快、実に愉快だよ。
君、やっぱり私と一緒にこないか?
敵対するのではなく、正式に私の部下として。」
「そんなの願い下げだ!」
エドはぴしゃりと吐き捨てた。
「つれないねぇ。
私としては、これからが本番なんだがな。」
ロイの表情は今までの笑い顔ではなく、たくらむような笑いに変わった。
「本番?」
「君も気がついたようだが、今、司令部は慌ただしいだろう。
実は私が中央に栄転になったのだ。
あの五人を連れていこうと思っとるのだが、引き続きがあれやこれやと慌ただしくてな。」
ーだからみんな慌ただしかったのか…。
ロイは肩をすくめてみせた。
「いかんせん、セントラルは国の中央だけあって危険も多い。
私の連れていく部下も、危険に巻き込まれて使いものにならなくなると困るなぁ?
そういえば、君はオリジナルと彼らを守る約束があるんだったかな?」
エドはロイが言わんとしている事に気付き、ロイをにらんだ。
「それなら、なおさら、俺はあんたの部下になるのなんか願い下げだ。
あんたの言いなりにはならない。
中央にいくとしても、俺個人の考えで、だ。
たしかに大佐と約束したぜ、中尉達は俺が絶対守るってな。
俺は、あんたが仕掛けてくるなら全力で抵抗する!」
エドがロイに指先をつきつけながら言い切ると、ロイはまたもや大爆笑した。
「はーっはっはっは!
そうとも、そうこなくてはな!
力いっぱいあがらってくれ!」
ロイはひとまず笑い終わると、笑い涙を浮かべてエドをみた。
エドはますます不機嫌になる。
「たしかに君が調べてきたことは、私が仕掛けたゲームの120%の解答だ。
君達のその実力を称して、私は次の<本番>のゲームに君を誘うことにしよう。」
エドは身構えてロイをにらむ。
「今までのは小手調べだったてことか。」
ロイはニッコリ微笑む。
「その通り。
だが、これまで調べてきた事の延長線上とも言える。
実は、ウィルファットの名家達はもっと根が深く裏がある。
考えてみたまえよ。
だいたい、ホムンクルスの製造方法はどこからきた?
なんでテロリーダーのやつらはあの建物を選んだのかね?
ウィルファットの殺人鬼は、何故彼だったのか。
そして、我々ホムンクルスのこと。
答えはみなセントラルにある。
君はあの五人を使い、調べてみるがいい。
難易度がレベルアップして今回は、私という妨害がはいることになる。
私は、権力で捩伏せはしない。あくまでも君達が抵抗できるように阻止しよう。
鋼の錬金術師が協力者全員、調べがつくまで守りきれたら君の勝ち。
途中、一人でも守れなければそこでゲームオーバー。
君が勝てば、君達が調べきれなかった情報を渡す。
こういう条件なんだが。
どうかね?」
ロイの言葉は質問の形であるが、エドに選択の余地はない。
「受けてたつさ。
あんたの考え通りにな!」
ロイがニヤリと笑みを深くする。
「異動は明日、あさってにかけて行われる。
三日後、
セントラルで会おう。
とても楽しみにしておくよ鋼の。
さて、今日のところはこれぐらいにしておこう。
さぁ、鋼の錬金術師がお帰りだ。」
エドは追い出されるように東方司令部を出た。
ハボック達とは話せていないがしかたない。
エドは東方司令部に背を向けて、ホテルの方へ走り出した。
クリムゾン†レーキ30へ
続く