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クリムゾン†レーキ


…9、染まる紅


エドは一人、ベッドに横たわり悶々と朝を迎えていた。
あのあとカーバンクルが用意してくれた軍ホテルに泊まったのだが。

昨日はいろいろな事がありすぎて、一睡も出来なかった。

東方司令部に向かおうという途中でロイと出会い、一緒に来たウィルファットでいきなり探してい父と遭遇し、連続殺人鬼に襲われて捕まえたと思えばロイが瀕死の重傷かもしれない状態で行方不明。

「あー…もう。訳わかんねぇよ。
いろいろありすぎて頭ぐちゃぐちゃだ…。」

わしゃわしゃと寝癖のついた頭をエドは乱暴にかきあげた。


身仕度を整えてロビーに行くと、リザとアルが待っていた。

「おはよう、エドワード君」
「おはよう、兄さん」

「おう、おはよう。
中尉、アル。」

軽い朝の挨拶を交わしながら、エドは二人が座っている、低いテーブルを囲むソファーに腰をおとした。

見ればテーブルにはパンの入ったカゴとオレンジジュースが用意されていて、エドは勝手に一つ手にとってたべはじめた。

「あーあ、兄さん。
なんにも断らないで食べ始めちゃって…。」

「え?
これ食べちゃまずかったのか?」

「いいえ、エドワード君の分だから、どうぞ」

リザが微笑みながらコップにそそいだオレンジジュースを差し出してくれた。
しかしその微笑みには少し違和感がある。
ロイの行方が気になるのだろう。

「サンキュー、中尉。

やっぱりまだ大佐の行方はわかんないのか…?」

「ええ、今カーバンクル准尉が全力で捜査をしてくださっているけど、今だにわからないわ。
それに、もう一つ事件があって…」

「事件?」

エドはオレンジジュースのカップを片手にパンを食べつつ、眉を潜めた。

「ええ、昨日の夜、医療ミスがあってエルビウムさんがお亡くなりになったわ。」

「えっ!?
昨日病院に会いに行った事件の生存者!?」

エドの言葉にリザは頷く。

「そうよ。
そして、今その医療ミスを起こしたと思われる医師が行方不明で、こちらも目下捜索中よ。」

「医者…」
「行方不明…」

エドとアルの脳裏に、ホーエンハイムの顔が閃いた。

「あーいーつーかーっっ!」
「思った以上に極悪非道!」

エドとアルがイメージの顔に噛み付く。

「それで、そのことがあってウィルファット基地が調査に専念できるように、ハイエストを今日のうちに東方司令部に護送することになったの。
二人も一緒にきてほしいわ」

「え、でもまだ大佐が…」

「しかたないわ。
ここにいても私たちは何もできないもの。
出来ることをしないと。
ね?」

リザがエドの顔を覗き込む。

エドは頷くしかなかった。

    ★★★☆

自分がどのようになっているか全くわからない状態にロイはおかれていた。

体内から血が流れすぎた。
体が冷たい。動かない。


ロイの白濁した意識の中に外から聞こえる音が響く。

「あと四人いるはずだ…」

ー四人?
四人とはなんのことだ?
なんの人数を示しているのだろうか?

「どこかに隠れているんでしょ?見つけるのはやっかいだよ。お父様。
ただでさえ人手がないのに…」

ーお父様?
何者だ?
私はいったいどこにいるのだ?

「ふむ、確かに人手は足らぬな。
ならばこやつを使わせてもらうとしようか。」

足音が近く。

ー使う?私をか?
私に何をさせる気だ。それよりも私がそう簡単に命令を聞くと思っているのだろうか?

また、声がする。

「我が魂を受け入れ、
我が手足となれ。」

何かが刺された場所に触れた、そして

激痛


「ーっ!!ーっ!!!
あ゛あぁぁっ!!
あぁぁぁぁあっっ!!!!!」

体が跳ねる、血が沸き立ち、断末魔が響く。

「あーあ、さすがの焔の大佐でも声抑えられなかったかぁ。」

のんきな声がクスクスと笑う。

眼球が溶けそうだ、体が痙攣し、錬成光が弾け、上下の感覚が無くなる。
骨が割れ、筋肉が暴走し、体が熱い、熱い、熱い
火炎の中にいるようだ!

「これで成功すれば、仕事がずっと楽になるわね」



「ぐぁあぁぁぁあっ!!
ぐぅっあぁあぁっ!!
あぁーーーっっっ!!!」



一際高く絶叫するとロイの意識は闇に消えた。



    ☆★★☆


「こちらの捜索はお任せ下さい。」

カーバンクルが護送車に乗り込んだエドに声をかけた。

「ああ、面倒押し付けちまってわるいけど、大佐の捜索、よろしくカーバンクル准尉」

「了解!」

カーバンクルは敬礼で答える。

ハイエストを厳重に警護し、エド、アル、リザを乗せた車は東方司令部に向けて出発した。

エドはもう一度ウィルファットを窓から眺めた。
丘にそびえ立つ城がだんだんと離れていく。

ー大佐、あんたどこいっちまったんだよ…!

謎を残したまま、車は南下をしていく。
憎たらしいぐらいの青空だった。



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続く
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