黒の聖域
「オバハンとブレーカー中佐があっちなら、僕選べなぁいじゃぁん[D:63894][D:63911]」
シディウスは愚痴りながら操縦しても、スキは一瞬たりとも見せなかった。
まるで旧知の中のように、軽やかに操縦桿を操り、アメリカ軍艦の砲撃を回避する。
シディウスは、自分の機体ではアメリカ軍艦の装甲を貫く事はできないと悟っていた。
しかし、諦めて尻尾巻いて帰るほど、シディウスのプライドは低くない。
せめて何か一発食らわせてからでなければ気がすまないではないか。
-ど~するかなぁ[D:63896]
っと…[D:63904]
シディウスの目に水平動を割ってくる、一そうの船が見えた。
「えーこちら二号機[D:63899]
なんかうちの実験用戦艦が援護に来ましたー[DX:E728]」
★★★
「ハボック将軍!アメリカ軍艦から入電!
アエルゴ戦艦接近中との事です!」
ブリッジに響く第一報に、ハボックは、内心舌打ちした。
「解った!
しょうがねぇな、そっちはラッセルに回せ!
作戦Dが先になっちまうが、かまうな!」
「了解!」
通信兵がラッセルの隊に連絡を入れている。
-ちょいと、まずいかもしんねぇなこりゃ。
ハボックは汗ばむ掌をきつく握りしめた。
★★★
「ぬぁぁぁあ!!」
っごがきゃ!
アームストロングは、瓦礫を使った錬成をバンバン繰り返し、エルシェの機体を追い詰めていた。
が…
「議員!
そんなにばんばか打ったらすぐに無くなっちまいますよ!?」
フォーライフが危惧しといたのはそれだった。
何せ瓦礫は限りがある。
しかも錬成する物が大きいので、実はもう底が見えているのだ。
「ぬ?足らぬとな?
ならば、ないならば造ればよい!!」
バックには点描薔薇!!
「いや、ポーズはいいですから!相手からは見えないからっ!」
なかなかのノリツッコミ上手なフォーライフ君でした。
◇◇◇
「攻撃が、止んだ?
タマギレかい?」
ピタリと弾丸攻撃が止んだのでエルシェは、搾りこんだ目標を確認した。
その目に飛び込んで来たのはー…!
「…っ!!?
あ、あれはっ!!
なんて鍛えられた肉体なんだろうねぇ!惚れ惚れしちまうよぉ~。」
アームストロングが見えたらしい。
「あぁ~!
朝日を浴びて照り輝くあの肉体美っ!
よくみりゃ、随分男前な奴と戦ってたんだねぇ。
ふふふ、いい漢を仕留めなくちゃあならないのも、ちょいと残念だけど、それもまた一興ってもんさね!!」
機体を旋回させ、標準を搾り、引き金を引く!
「戦場じゃないところで会いたかった漢が、また増えちまったよ!!」
★★★
エルシェの機体は態勢を低くしたまま、真っ正面からフォーライフとアームストロングが乗り込んでいる戦艦に突っ込んできてきる。
それを避けようともせずにアームストロングは仁王立ちで甲板に立ち、戦闘機を鋭く見定めていた。
「我がアームストロング家に脈々と受け継がれ、磨かれてきた、偉大なる芸術的錬成法!
今までの攻撃を受けてなお、我輩に真っ向から挑むとは、敵ながらなんと潔い事か!
汝が挑戦受けて立つ!!」
アームストロングが、その厳めしい鉄甲を装備した腕を振るう!
「でぇえいっやぁあっっ!!」
っごっ
アームストロングの拳は全力で真下の甲板を突いたが、甲板が砕け散るような事はなかった。
だがアームストロングの回りでは、激しい錬成光が巻き起こり、その光は真っ直ぐに下へ伸びていった。
そして、
ーどばしゃぁぁぁあっ
戦艦と戦闘機の間に激しい水柱が吹き上がる!
エルシェの弾丸はその水柱に吸い込まれ、戦艦まで届くことはなかった。
「ぬりゃぁあ!」
アームストロングの豪腕が、唸りをあげる!
★★★
ブレーカー操る戦闘機は、中枢艦バジリコックをジリジリと追い詰めていた。
「右舷3時の方向から敵機飛来!」
「右舷射撃準備!
打ち落とすより威嚇だ!
損傷をなるべく押さえろ!
くそぅ!正面に来てくれれば、一発食らわせられるのにな!」
流石に銃弾を雨霰と受ける気は無いらしく、方向転換した機体は後方へ回り込む。
そこに、ハボックの一声。
「撃て!」
っどぉん!
後ろに取り付けた主砲が、火を噴いた!
★★★
シディウスはアメリカ軍艦の回りを旋回し、少しでも弾を使わせようとしていた。
-うーん我ながらセコいなあ…[DX:E725][D:63916]
グルリと当たりを見渡す。
「…おやぁ[D:63911]
…あれは…[D:63903]」
シディウスが見つけたものは…
「あの時の金髪[D:63911][D:63898]」
★★★
エドワードは、迫って来ているアエルゴ軍艦に向かって、アメストリスの偵察艦を走らせていた。
アエルゴの戦艦は、アメリカでいう、空母に似ていた。
タワーの前方に格納庫から延びる滑走路がある。
まだ戦艦の概念を捨てきれていないが、それでも驚異にはかわりない。
エドワードの横手からは、アメストリスの小型軍艦ミラージュが、割って入ろうとしている。
「こちら、鋼の錬金術師!
そっちの軍艦!援護頼む!」
ミエドワードラはージュに無線で呼びかけた。
『馬鹿野郎!援護はそっちだろが!こちら軍艦ミラージュのラッセル・トリンガム!
貴殿の武功を祈る!』
無線から帰って来たのはラッセルの声。
「なぁんだ。ラッセルかぁ。
じゃあ気ぃ使う事はないな!」
エドワードは笑い、無線を切ろうとした時、鋭く慌てた悲鳴のような声が入った。
『エド!後ろだっ!』
「っ!この!」
はっとした瞬間、エドワードは手元のレバーを引いた。
そのタイミングが少しでもズレていたならば確実に命はなかっただろう。
エドワードが改造した船は、また例のエンジンを組込まれ、一回り小さくなった機体が加速し、通り過ぎた所を銃弾が波間に跳ねた。
シディウスの戦闘機がエドワードの偵察艦に狙いを定めたのだ!
「おいおい!
ウォーターガーデン艦長はどうしたんだよ!!」
愚痴った瞬間、アエルゴ空母からも砲撃され、船の近くに着水し、盛大に水柱を上げる。
「やばいっ挟み撃ちだっ!」
エドワードは必死に体制を整えようとするが、船は波に煽られ、舵がまったく効かなかった。
迫る戦闘機の機銃が、エドワードを真っ直ぐ捕らえているような気に襲われる。
「っくそぉっ!」
-っがごぉぁあん!
白い光が波間を嘗めた。
★★★
アームストロングの拳から伸びた錬成光は、盛大に吹き上がった水柱に絡み付き、一瞬にして氷山を作り上げていた。
「錬金術ってやつかい!
やるねぇ。でも、まだまだだよ!!」
エルシェは操縦桿を倒し、軽々といきなり現れた氷山を避けた。
一方、
「わぁぁあっ!
議員ー!進行方向に氷山なんかつくらんでくださぁぁいっ!!」
フォーライフの悲鳴も虚しく、船体はものの見事に氷山の土手っ腹に突っ込んだ。
船は派手に大破し、氷山にひっかかったまま激しい火の手を上げ始める。
「おぉや、まあ!
なんだいなんだい!?自滅かい!?
これからって時に情けないねぇっ!」
エルシェは呆れた声を上げ、もう用はないとばかりに氷山の回りを旋回し、ブレーカーやシディウスを確認する。
エルシェの視界の隅で影が躍る。
氷山から気配がした!
「何だって!?」
エルシェは悲鳴を上げながら、己に襲い掛かるものを見た!
「ぬぁぁぁっりゃぁぁっ!!」
氷山の影から躍り出たアームストロングの拳が、氷山の淡く輝く氷塊を貫いた!弾け輝く錬成光!
照り輝く肉体美!
打たれた氷は、無数の弾丸となり、エルシェの操る戦闘機に着弾する。
「こんなものでやられてたまるかい!
っ!」
機体を翻そうとしたエルシェの表情が凍りつく。
「やるねぇ、あんた…」
★★★
「あぶねぇ、あぶねぇ!
やられるところだったぜい」
ブレーカーは思わず吹き出た汗を、手の甲で荒々しく拭った。
バジリコックに装備されていた対空砲は前後にあったのだった。
砲撃をからくも回避したブレーカーは、お返しとばかりに機銃で装甲を叩く。
するとそのうちの何発かが装甲に穴を穿った!
ブリッジに緊急報告がとぶ!
「左舷側面損傷!」
「実害は!?」
「浸水の報告なし!
負傷者一名!」
「左舷一斉掃射!
奴と距離を稼げ!
負傷者は直ちに救護室へ搬送!」
「了解!
左舷掃射、敵艦距離開きました!」
「方向転換面舵いっぱい!
正面、主砲発射準備!
当てろよ!」
バジリコックがブレーカーの戦闘機と真向かう。
「サシで勝負だ!喰らえ!」
ハボックの号令と共に、轟音轟かせ主砲が火を噴いた!
★★★
「うっ…
…痛ぇ…」
烈火がおさまり、エドワードは床に投げ出されていた体をゆっくりと起こした。
あわててあちこちを確認する。
「怪我はしてないか…
よく生きてたな。」
異常なしとみると、エドワードは立ち上がり、船の操舵に走り寄った。
『エドワード研究長!
無事かね!?応答願う!』
無線から聞こえる声にはっとしたエドワードは、慌てて受話器を掴み取ると、呼びかけに答えた。
「こちらエドワード・エルリック!
援護してくれたのはそっちか!?今どーなってる!?」
『我々が相手していた戦闘機が、研究長に目標を変えた!
我々よりもやりやすいと踏んだようだ!前方敵艦と挟み撃ちにされかかっておったぞ。
戦闘機は対空砲をに掠められて君の船から四時の方向を飛行しとる。』
「わかった!戦闘機はこっちとあっちのミラージュでどうにかする!
ウォーターガーデン艦長はあのデカブツを!」
エドワードは船を立て直すと、天を仰いで回りを確認した。
確かになんとも不安げに、一機の戦闘機がミラージュと自分の間を飛んでいた。
「ラッセル!俺達であの機翼艦、落とすぞ!あっちのデカブツはアメリカ軍艦が受け持つ!
一気に決めるぜ?!」
『わかった!いくぞ!』
エドワードとミラージュが、シディウスの戦闘機へ。
波を割ってアメリカ軍艦は、聳えるアエルゴ空母とそれぞれ対峙しのだった!
激動の20へ跳べ!
シディウスは愚痴りながら操縦しても、スキは一瞬たりとも見せなかった。
まるで旧知の中のように、軽やかに操縦桿を操り、アメリカ軍艦の砲撃を回避する。
シディウスは、自分の機体ではアメリカ軍艦の装甲を貫く事はできないと悟っていた。
しかし、諦めて尻尾巻いて帰るほど、シディウスのプライドは低くない。
せめて何か一発食らわせてからでなければ気がすまないではないか。
-ど~するかなぁ[D:63896]
っと…[D:63904]
シディウスの目に水平動を割ってくる、一そうの船が見えた。
「えーこちら二号機[D:63899]
なんかうちの実験用戦艦が援護に来ましたー[DX:E728]」
★★★
「ハボック将軍!アメリカ軍艦から入電!
アエルゴ戦艦接近中との事です!」
ブリッジに響く第一報に、ハボックは、内心舌打ちした。
「解った!
しょうがねぇな、そっちはラッセルに回せ!
作戦Dが先になっちまうが、かまうな!」
「了解!」
通信兵がラッセルの隊に連絡を入れている。
-ちょいと、まずいかもしんねぇなこりゃ。
ハボックは汗ばむ掌をきつく握りしめた。
★★★
「ぬぁぁぁあ!!」
っごがきゃ!
アームストロングは、瓦礫を使った錬成をバンバン繰り返し、エルシェの機体を追い詰めていた。
が…
「議員!
そんなにばんばか打ったらすぐに無くなっちまいますよ!?」
フォーライフが危惧しといたのはそれだった。
何せ瓦礫は限りがある。
しかも錬成する物が大きいので、実はもう底が見えているのだ。
「ぬ?足らぬとな?
ならば、ないならば造ればよい!!」
バックには点描薔薇!!
「いや、ポーズはいいですから!相手からは見えないからっ!」
なかなかのノリツッコミ上手なフォーライフ君でした。
◇◇◇
「攻撃が、止んだ?
タマギレかい?」
ピタリと弾丸攻撃が止んだのでエルシェは、搾りこんだ目標を確認した。
その目に飛び込んで来たのはー…!
「…っ!!?
あ、あれはっ!!
なんて鍛えられた肉体なんだろうねぇ!惚れ惚れしちまうよぉ~。」
アームストロングが見えたらしい。
「あぁ~!
朝日を浴びて照り輝くあの肉体美っ!
よくみりゃ、随分男前な奴と戦ってたんだねぇ。
ふふふ、いい漢を仕留めなくちゃあならないのも、ちょいと残念だけど、それもまた一興ってもんさね!!」
機体を旋回させ、標準を搾り、引き金を引く!
「戦場じゃないところで会いたかった漢が、また増えちまったよ!!」
★★★
エルシェの機体は態勢を低くしたまま、真っ正面からフォーライフとアームストロングが乗り込んでいる戦艦に突っ込んできてきる。
それを避けようともせずにアームストロングは仁王立ちで甲板に立ち、戦闘機を鋭く見定めていた。
「我がアームストロング家に脈々と受け継がれ、磨かれてきた、偉大なる芸術的錬成法!
今までの攻撃を受けてなお、我輩に真っ向から挑むとは、敵ながらなんと潔い事か!
汝が挑戦受けて立つ!!」
アームストロングが、その厳めしい鉄甲を装備した腕を振るう!
「でぇえいっやぁあっっ!!」
っごっ
アームストロングの拳は全力で真下の甲板を突いたが、甲板が砕け散るような事はなかった。
だがアームストロングの回りでは、激しい錬成光が巻き起こり、その光は真っ直ぐに下へ伸びていった。
そして、
ーどばしゃぁぁぁあっ
戦艦と戦闘機の間に激しい水柱が吹き上がる!
エルシェの弾丸はその水柱に吸い込まれ、戦艦まで届くことはなかった。
「ぬりゃぁあ!」
アームストロングの豪腕が、唸りをあげる!
★★★
ブレーカー操る戦闘機は、中枢艦バジリコックをジリジリと追い詰めていた。
「右舷3時の方向から敵機飛来!」
「右舷射撃準備!
打ち落とすより威嚇だ!
損傷をなるべく押さえろ!
くそぅ!正面に来てくれれば、一発食らわせられるのにな!」
流石に銃弾を雨霰と受ける気は無いらしく、方向転換した機体は後方へ回り込む。
そこに、ハボックの一声。
「撃て!」
っどぉん!
後ろに取り付けた主砲が、火を噴いた!
★★★
シディウスはアメリカ軍艦の回りを旋回し、少しでも弾を使わせようとしていた。
-うーん我ながらセコいなあ…[DX:E725][D:63916]
グルリと当たりを見渡す。
「…おやぁ[D:63911]
…あれは…[D:63903]」
シディウスが見つけたものは…
「あの時の金髪[D:63911][D:63898]」
★★★
エドワードは、迫って来ているアエルゴ軍艦に向かって、アメストリスの偵察艦を走らせていた。
アエルゴの戦艦は、アメリカでいう、空母に似ていた。
タワーの前方に格納庫から延びる滑走路がある。
まだ戦艦の概念を捨てきれていないが、それでも驚異にはかわりない。
エドワードの横手からは、アメストリスの小型軍艦ミラージュが、割って入ろうとしている。
「こちら、鋼の錬金術師!
そっちの軍艦!援護頼む!」
ミエドワードラはージュに無線で呼びかけた。
『馬鹿野郎!援護はそっちだろが!こちら軍艦ミラージュのラッセル・トリンガム!
貴殿の武功を祈る!』
無線から帰って来たのはラッセルの声。
「なぁんだ。ラッセルかぁ。
じゃあ気ぃ使う事はないな!」
エドワードは笑い、無線を切ろうとした時、鋭く慌てた悲鳴のような声が入った。
『エド!後ろだっ!』
「っ!この!」
はっとした瞬間、エドワードは手元のレバーを引いた。
そのタイミングが少しでもズレていたならば確実に命はなかっただろう。
エドワードが改造した船は、また例のエンジンを組込まれ、一回り小さくなった機体が加速し、通り過ぎた所を銃弾が波間に跳ねた。
シディウスの戦闘機がエドワードの偵察艦に狙いを定めたのだ!
「おいおい!
ウォーターガーデン艦長はどうしたんだよ!!」
愚痴った瞬間、アエルゴ空母からも砲撃され、船の近くに着水し、盛大に水柱を上げる。
「やばいっ挟み撃ちだっ!」
エドワードは必死に体制を整えようとするが、船は波に煽られ、舵がまったく効かなかった。
迫る戦闘機の機銃が、エドワードを真っ直ぐ捕らえているような気に襲われる。
「っくそぉっ!」
-っがごぉぁあん!
白い光が波間を嘗めた。
★★★
アームストロングの拳から伸びた錬成光は、盛大に吹き上がった水柱に絡み付き、一瞬にして氷山を作り上げていた。
「錬金術ってやつかい!
やるねぇ。でも、まだまだだよ!!」
エルシェは操縦桿を倒し、軽々といきなり現れた氷山を避けた。
一方、
「わぁぁあっ!
議員ー!進行方向に氷山なんかつくらんでくださぁぁいっ!!」
フォーライフの悲鳴も虚しく、船体はものの見事に氷山の土手っ腹に突っ込んだ。
船は派手に大破し、氷山にひっかかったまま激しい火の手を上げ始める。
「おぉや、まあ!
なんだいなんだい!?自滅かい!?
これからって時に情けないねぇっ!」
エルシェは呆れた声を上げ、もう用はないとばかりに氷山の回りを旋回し、ブレーカーやシディウスを確認する。
エルシェの視界の隅で影が躍る。
氷山から気配がした!
「何だって!?」
エルシェは悲鳴を上げながら、己に襲い掛かるものを見た!
「ぬぁぁぁっりゃぁぁっ!!」
氷山の影から躍り出たアームストロングの拳が、氷山の淡く輝く氷塊を貫いた!弾け輝く錬成光!
照り輝く肉体美!
打たれた氷は、無数の弾丸となり、エルシェの操る戦闘機に着弾する。
「こんなものでやられてたまるかい!
っ!」
機体を翻そうとしたエルシェの表情が凍りつく。
「やるねぇ、あんた…」
★★★
「あぶねぇ、あぶねぇ!
やられるところだったぜい」
ブレーカーは思わず吹き出た汗を、手の甲で荒々しく拭った。
バジリコックに装備されていた対空砲は前後にあったのだった。
砲撃をからくも回避したブレーカーは、お返しとばかりに機銃で装甲を叩く。
するとそのうちの何発かが装甲に穴を穿った!
ブリッジに緊急報告がとぶ!
「左舷側面損傷!」
「実害は!?」
「浸水の報告なし!
負傷者一名!」
「左舷一斉掃射!
奴と距離を稼げ!
負傷者は直ちに救護室へ搬送!」
「了解!
左舷掃射、敵艦距離開きました!」
「方向転換面舵いっぱい!
正面、主砲発射準備!
当てろよ!」
バジリコックがブレーカーの戦闘機と真向かう。
「サシで勝負だ!喰らえ!」
ハボックの号令と共に、轟音轟かせ主砲が火を噴いた!
★★★
「うっ…
…痛ぇ…」
烈火がおさまり、エドワードは床に投げ出されていた体をゆっくりと起こした。
あわててあちこちを確認する。
「怪我はしてないか…
よく生きてたな。」
異常なしとみると、エドワードは立ち上がり、船の操舵に走り寄った。
『エドワード研究長!
無事かね!?応答願う!』
無線から聞こえる声にはっとしたエドワードは、慌てて受話器を掴み取ると、呼びかけに答えた。
「こちらエドワード・エルリック!
援護してくれたのはそっちか!?今どーなってる!?」
『我々が相手していた戦闘機が、研究長に目標を変えた!
我々よりもやりやすいと踏んだようだ!前方敵艦と挟み撃ちにされかかっておったぞ。
戦闘機は対空砲をに掠められて君の船から四時の方向を飛行しとる。』
「わかった!戦闘機はこっちとあっちのミラージュでどうにかする!
ウォーターガーデン艦長はあのデカブツを!」
エドワードは船を立て直すと、天を仰いで回りを確認した。
確かになんとも不安げに、一機の戦闘機がミラージュと自分の間を飛んでいた。
「ラッセル!俺達であの機翼艦、落とすぞ!あっちのデカブツはアメリカ軍艦が受け持つ!
一気に決めるぜ?!」
『わかった!いくぞ!』
エドワードとミラージュが、シディウスの戦闘機へ。
波を割ってアメリカ軍艦は、聳えるアエルゴ空母とそれぞれ対峙しのだった!
激動の20へ跳べ!